14話
俺はその後、料理長から保存食を受け取り、今日再びダンジョンに来ていた。
保存食は乾燥しているので、少し水にいれてから食べるとよいらしい。
―さて行こう
カンテラを灯して、しばらく進むと二股の分岐路に到着する。あのときは右に行くと、あのカタツムリのような魔物がたくさんいる部屋まで進んだはずだ。
―今度は左に行ってみるか?
だが、左に行ったとき、どのような魔物が出てくるのか明らかではない。
ここは安全策をとって右の通路を進むべきだろう。
俺は前回と同じように右の通路を進むことにする。
―すると。
やはりあのとき見た光景、つまりある部屋に大きなカタツムリが密集しているのが見えた。
「―雷切」
程なくして手に1本の短剣が出来上がる。鍛錬の成果もあり、およそ三十秒程度で短剣一本が作ることができるようになっていた。
―投擲!
俺はデカいカタツムリに向かって雷の刃を投擲する!!
カタツムリはそれに気が付き、ひょいと殻の中に入るが―
――ずぶり―
短剣はいとも簡単に貝殻を貫き、中身をジリジリとしばらくの間感電させる!
しばらく感電した後、巨大なカタツムリは黒焦げになって動かなくなった。
「ちなみに、魔力変換の電撃を使えばどうなるんだ?」
俺は右手を別のカタツムリに向かってまっすぐ伸ばし、溶解液の射程範囲外から魔力変換を用いた電撃をカタツムリに向かって放つ!
―バリバリッ!!
だが、魔力変換による電撃はカタツムリの貝殻に当たるが、その貝殻をわずかに破壊するにとどまる。もちろんカタツムリは未だ健在である。
―なるほど。こいつの殻は魔法をはじくのか。
より高圧で電撃を放つこともできるが、そう魔力を無駄に使うこともないだろう。
魔力変換による電撃は即座に放つことができ、連射することもできる。しかし、自分の動きを制限されたりと面倒な制約が多い。
半面、雷切は作るのに時間がかかるが、一旦その形を作ってしまえば、持って自由に移動できる他、敵の防御を貫通することができる。しかも威力はかなり大きい。
この雷切、仮にもし俺が剣を扱うことができれば更に使い所が増えそうだが、今のところは投擲による攻撃がメインになりそうだ。
作成するのに必要な時間は短縮できそうであることから、雷切の最大の欠点は、防御に使用するには難しいことだろう。
魔力変換による電撃は周囲三百六十度の防御性能を有するが、この雷切は空ぶってしまえばそこまでだ。また、雷切を作成している間に、魔力変換による電撃を同時に放つことは、今の俺では難しい。
俺は部屋のカタツムリの集団を、雷切を投擲することで一匹ずつ確実に片付けていく。
―ふう。
俺は持ってきたマナポーションを飲む。
ちなみに、ダンジョンを一人で攻略しようとするような変人はほとんどいないらしい。
通常はどんな上級の冒険者であったとしても、装備を十分に整えた上で、冒険者複数名で挑むものだという。
しかし、俺は一つの重要なことに気が付いている。
それはゲームの世界と同じく、おそらくこの世界にもレベルのような概念があるということ。敵を倒すことで自分の使える魔力量、あるいはその威力が少しずつだが、上昇しているように感じている。
鍛錬室でこもって鍛錬するのもよいが、きっとこうして実戦を積むことでより自身の力をつけることができるのだ。
―千里の道も一歩から。今日は更に進んでみよう。
俺はその部屋を抜け、もう少し先に進んでみることにする。
―ちょっと待てよ?今ここで雷切を使っておくのはどうだ?
バチ・・・バチ!
ほどなく俺の手に1本の雷で出来た短剣が現れる。
この雷切は一度作ってしまえば、魔力を使うことがほとんどない。
「だが、割と邪魔だな・・・。」
通常の剣とは異なり、収納することができないのだ。俺は雷切を解除することにする。
そして、そのまま道なりにしばらく歩いていると
「ハッハッハッ」
どこかで聞き覚えのある音が聞こえて来た。
――ウルフだ。
どうやら囲まれたらしい。




