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452●『プリンセスナイン』(1998)④幻の“後半26話分”を推理する1:宏樹の受難、高校野球会場の変更、立ちこめる“黒い霧”。

452●『プリンセスナイン』(1998)④幻の“後半26話分”を推理する1:宏樹の受難、高校野球会場の変更、立ちこめる“黒い霧”。



       *


 『プリンセスナイン 如月女子高野球部』の“前半26話分”は、三本の大きな未回収伏線を残しました。


  「甲子園出場」

  「恋のゆくえ」

  「野球界の黒い霧」


 この三つの命題に決着をつけるのが、制作されなかった“後半26話分”なのです。


 “後半26話分”とは、どんな物語になったのでしょうか?

 これはもう、私たち観客が推理し想像するしかありません。


 以下、“前半26話分”に残された手がかりを参考に推定してみました。

 あくまでも私個人の勝手な、妄想的空想の産物です。


 アニメ作品『プリンセスナイン 如月女子高野球部』とは無関係の、個人的な戯言ざれごととして、どうかお許し下さい。


       *

       *

       *


 “後半26話分”は、涼たちが高校二年生に進級した、西暦1999年の六月頃から始まります。



●キザ男、高杉宏樹君の受難と、いずみの献身。


 夏の地区大会が始まる数日前。

 作中最強の“絶対モテ男”高杉宏樹君が、チンピラたちのケンカに巻き込まれて負傷します。

 涼とのデートが終わり、別れてすぐといったタイミングでしょう。


 二人の恋仲は、事実上、学園公認の黙認関係というレベルに深まってはいますが、お互いに今年注目のライバルチームの主力選手です。大手を振って堂々と逢うには気が引けます。

 しかも昨年、二人が対戦した地区大会がTV放映されたため、二人は地域の有名人、素顔は割れています。

 変装して秘密の逢瀬を重ねる二人、キスはありですが、それ以上の関係に発展する余地はありません。

 宏樹「地区大会も近いし、ライバルなのに一緒にいるところを写真でも撮られたら、“愛の八百長談合も進展中”なんて週刊誌に書き立てられるかもね」

 と、心配しなくてはならない堅苦しさです。

 いちおう敵同士の立場、この逢瀬はバレたらヤバいはず。なので涼は、三田加奈子から借りたウィッグでボサボサ頭に変装中。

 涼「それでも地区大会、頑張ろうね! 今度二人で対決したら、私のスーパーイナズマボールで、宏樹をギャフンと言わせてあげる!」

 宏樹「俺が勝つよ、ガンモちゃん」

 涼「勝つのは、あ・た・し!」

 と、犬も食わないクダラナイ会話で別れる二人。

 その直後、チンピラ高校生の暴漢が宏樹に因縁をつけ、数人がかりで襲いかかります。

 宏樹は正当防衛で対戦します。

 敵は刃物を使わず、素手で殴る蹴るの暴行。

 宏樹、肩と足を負傷。脱臼と骨折。

 しかし相手方にも傷を負わせてしまいます。

 入院した宏樹でしたが、相手にも負傷者が出たため、「如月高校の暴力不祥事」として週刊誌を飾ってしまいます。

 病室で愕然とする宏樹。一夜にしてスキャンダルの“渦中の人”です。

 学園と男子野球部の社会的な評価失墜を恐れた校長たちは、宏樹に無期限の謹慎処分を課してしまいました。


 伏線は“前半26話分”の第16話『さよなら、野球部』です。

 父のスキャンダルで精神的に追い詰められ、帰宅することもできず、一人寂しく夜のベンチでうなだれる涼。

 そこに二人のチンピラ青年が現れて「僕たちと遊ばな~い?」とナンパ。

 そこへ宏樹が通りかかり、「俺がブチ切れる前に消えろ!」と追い払ってくれますね。

 このチンピラにからまれる場面、“取って付けた”感じがあります。

 無くてもいいと思います。

 ということは、伏線っぽい。

 宏樹は相手が無法者のチンピラであっても、堂々と立ち向かい、相手を成敗する“正義の騎士”であることが印象づけられていますね。

 彼は“逃げ上手”ではない。戦いを選ぶ。

 その正義感がのちに裏目に出たのです。


 1999年地区大会への出場が絶望となった宏樹。

 さすがに落ち込みます。

 涼がこっそりと見舞って元気づけようとしますが、明るい前向きの励ましの言葉は、かえって逆効果。

 宏樹「今年、僕のいない如月男子は如月女子に敗ける。せいぜい僕の代わりに甲子園の切符を手に入れて活躍するんだね。もう、敗者の僕は放っておけばいいよ」

 と、突き放した反応になります。


 男子野球の部内競争は激しく、二年生で成果ゼロとなる宏樹は三年生で部員復帰が認められても、レギュラーの座は取り戻せないと思われます。

 一人になり、絶望に涙する宏樹。

 そこへ、いずみが訪れます。

 「しょぼくれたあなたを笑いに来たわ」

 と言葉はキツいですが、黙って宏樹を抱きしめます。

 いずみに身体を委ねる宏樹。

 涼は、傷ついた宏樹を励ましてくれましたが、いずみは黙って、ボロボロに弱った宏樹のすべてを受け入れてくれました。

 いずみは献身的に、宏樹に尽くします。

 幼馴染の強み、それは宏樹が何を失い、何を必要としているのか、一切説明抜きで理解できること。

 それが、いずみの愛だったのです。


       *


 宏樹にとって涼との関係は、恋人同士というよりも「ライバルとして好き」だったのでした。

 涼は、いずみが宏樹を看病している事を知って、少しずつ身を引いていきます。


 懐かしき昭和30~40年代の青春映画では、恋人カップルの成立に、21世紀のそれとは異なる、ひとつのゴールデンセオリーがありました。

 「最も必要としている人のもとに、最も大切なものを与える人がもたらされる」のです。


 男と女は“船と港”の関係とか申します。

 宏樹にとって涼は、舳先を並べて進む“もう一隻の船”でした。

 いずみは“港”となったのです。


       *


 未回収伏線のひとつ「恋のゆくえ」は、これで半分ほど軌道修正されます。

 残りは、涼が幼馴染の夏目誠四郎君とどうなるのか、ですね。

 夏目君は今、吉本ヒカルのスポーツ肖像画を描いています。


       *


●大会名称と主会場の変更


 まことに突然ではありますが…… 

 諸般の社会情勢とオトナの事情により、劇中では1999年の“日本高等学校野球大会”の主会場が、兵庫県は虹宮にじのみや市の安神王子園球場あんしんおうじえんきゅうじょうに変更となりました。


 後半26話分を放映するには、必要やむを得ない変更処置でしょう。

 現実世界における“全国高等学校野球選手権大会”の開催スポンサーは民間法人であり、“阪神甲子園球場”は民間の所有・管理になる施設だからです。

 関係先への十分な説明と承諾が無ければ、勝手に作品に使うことはできません。

 後半26話分を制作できなかった事情には、たぶん、このことが関連しているかもしれないと思います。


       *


●“黒い霧”の予感。


 如月女子、プリンセスナインは地方大会で如月男子を打ち破り、ついに王子園球場への出場を果たします。

 もちろん、相手はみな強敵です。

 苦戦を覚悟で、第一試合に望みます。

 ただ、如月女子は前年のように九人ギリギリというのではありません。

 特待生も含めた、一年の新人がベンチの控えに何人か加わっています。

 前年の地区大会で奮闘した結果、入部希望者が続出。

 学校教育の一環としての部活ですから、そうそう門前払いもできません。

 部員30人以上に膨れ上がり、二軍も擁する規模に。

 しかし、まだ涼を凌駕する天才一年生は育っておらず、涼がワンマンピッチャーで活躍する現状は大きく変わっていません。

 その代わりナインの実力は向上し、涼のピンチをカバーしてくれます。


 とはいっても相手は強豪ぞろい。

 第一試合から苦戦の連続です。

 投打ともに、双方互角か、プリンセスナインがやや不利という展開。

 打撃戦となり、得点は追いつ追われつ。

 しかし後攻のプリンセスナインは同点の九回裏で、敵チームのエラーに救われてサヨナラ勝ちのランニングホームランを手にします。


 歓喜する少女たち。

 その中で、森村聖良もりむらせいらだけは首をかしげます。

 彼女はその夜、宿舎である五ツ星ホテル、神戸ヒムログランドのバーで、木戸監督にお酌しながら、小声で相談を持ち掛けます。

 聖良「なぁ監督さんよ、今日のあいつらのエラー、チョイとおかしくなかったか?」

 木戸「ほう、お前ならわかると思ってたよ。そういや、どこか変だという気がする。ケンカ好きのお前ならではの直感としたら……」

 聖良「わざと敗け、イカサマエラーじゃねぇか?」

 木戸「ふむ、やっぱりな」

 聖良「でさ、そもそもだよ、あたいたちが如月男子に勝って王子園に出場できたのは、エースバッターの高杉宏樹が不祥事で欠場していたからじゃないか、その不祥事って……」

 木戸「仕組まれた暴力事件か」

 二人は話し込む。そして対策を決める。

木戸「他のみんなには絶対に秘密だ。特に涼にはな。知ったらあいつはメンタルがガタガタになってしまう。再起不能にはしたくねェ。時を見て、俺が直接に話す」

 聖良「がってんだよ、監督。で、いいんだな、あたいがやらかしても」

 監督は深々と少女に頭を下げた。

 木戸「すまん。オッサンにはしょせん不可能な仕事だ」

 聖良「いいってことよ。あ、文面はあんたが書くんだよ、あたいはサインするだけだ。文書、朝までに作っときな、第二試合まで二日間しかないんだ。ンじゃ、あたいは寝るぜ」

 木戸「わかった。それから」

 聖良「それから?」

 木戸「死んでもお前を守る、死んでもな」


 翌日、朝食で全員がそろった前で、監督は発表した。

 木戸「森村聖良から硬式野球部の退部届と如月女子高校の退学届が提出された。俺は確かにここに受け取った!」

 騒然となる一同。

 「一体どうしたの!」と詰め寄る主将の涼に、聖良は啖呵を切る。

 聖良「野球が心底キライになったのさ」そして一年生の控えメンバーを指さす。「あたいのポジションはA子<仮称>に譲るよ! A子、二日で仕上げるんだ。あんたのアルマゲドン打法の威力、見せてやんな! ユーハブ!」

 将来の夢は宇宙飛行士だと語るインテリな一年生少女は緊張して答えた。

 「アイハブ!」



  ※映画『アルマゲドン』は1998年に公開されました。


  【次章へ続きます】


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