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443●戦争映画としての『風の谷のナウシカ』⑩雑感1:楽して目立ったテト。なぞのどうぶつ王国。石油王&海賊王ナウシカ!

443●戦争映画としての『風の谷のナウシカ』⑩雑感1:楽して目立ったテト。なぞのどうぶつ王国。石油王&海賊王ナウシカ!



ここからは、諸々の雑感です。



●テト


 キツネリスのテト。

 ユパ様から譲られてナウシカのペットになります。

 しかしナウシカがクシャナに同行してバカガラスに乗ってからは、どこに行ったのやら。いるようでいない、いないようでいる。

 じつはアスベルのガンシップにバカガラスが攻撃されて、さあ大変というときにサッと隠してもらえたのが、ナウシカの懐の中。

 以後、腐海の底の清浄な森、ペジテのブリッグからの脱出時、そして王蟲の暴走を止める時に、ヨシ目立ってやるとばかりにチラチラと顔を出してはいるのですが、それ以外はずーーーーっと、本編の大半を……

 ナウシカの素肌の胸の谷間で、ヌクヌクと過ごしていた!

 胸の谷のテト。

 楽して目立ちやがって!

 当時のナウシカファンの少年たちは、嘆息したものです。

 「テトになりてーーっと!」



●動物王国、どっかにあるんでしょ?


 テトは、ユパによると「翅蟲はむしにさらわれた」とのことですが、それまでは、そもそもどこにいたのでしょう。

 つまり、キツネリスの家族や一族の群れが棲息している場所があるのです。

 キツネリスがいたら、キツネリスを食うライオンやトラやクマやオオカミやキツネみたいな食い意地の張った猛獣が棲んでいる平原もしくはジャングルが、近くにあるってことになります。

 そういえば、ユパの愛馬であるトリウマも、群れで棲んでいる場所があるはず。

 それに、ナウシカが幼いころの記憶を白昼夢で観たとき、父親たちが乗っていた、水牛みたいなツノのあるヤックルめいた四足動物も、繁殖している場所が無くてはなりませんね。

 てーことは……

 砂漠と腐海だらけのこの世界には、まだ、アフリカの平原やジャングルみたいな動物王国が残っているということです。

 しかも物語の冒頭で、ユパはキツネリスのテトが「翅蟲はむしにさらわれた」のを助けたので王蟲に追われる羽目になったわけですから、テトの実家である動物王国は距離的にもすぐ近くにあるはずですね。

 しかしナウシカが「キツネリス、わたし初めて!」と感激してますから、彼女は動物王国に行ったことは無いのです。


 なぞのどうぶつ王国……


 というのは、これだけ腐海に囲まれて生活に窮している人類です。

 動物の肉なんて、滅多にありつけない超高級タンパク源のはず。

 風の谷の村落の映像でも、家畜は全く見かけません。

 生活場面に、動物がいない。

 犬猫に牛馬、豚やヤギやニワトリに相当する家畜を飼っていないと、動物性タンパクの摂取は難しいはず。

 でも村人が全員ベジタリアンのはずがなさそうで。


 理由は容易に想像がつきます。

 家畜を養うには、その動物たちに穀物や草を食べさせなくてはなりません。

 その余裕がないのです。

 人間自身が食う穀物や野菜を確保するだけで精一杯。

 なので肥料の多くは人糞じんぷんでしょう。

 あるいは古代の地層から掘り出せる“化学肥料”があるか、ですね。

 住民たちは、常に動物タンパクに不足を感じています。


 となると、野生の動物王国が徒歩数日圏内にあったら、もう真っ先に探検隊を組織して、ドッとハンティングに出かけるでしょう。今夜はイノシシの丸焼きだ!!

 正直、キツネリスですら、人間にとっては、肉はミートパイに、毛皮はマフラーにと、垂涎の的ではないかと思われるのです。


 あの生活環境なら、動物って、真っ先に、食い物ですよ!


 近くに動物王国があるとしたら、村民の行動パターンは大きく変わっていたはず。

 動物を捕らえて、食うか、家畜化するかですね。


 なぞの動物王国、その正体を知っているのは、ユパだけなのでしょう。


 なお、ペジテのブリッグがトルメキアのコルベットに襲われて大ピンチのさなか、救援のため後方から接近する風の谷のガンシップの影が雲に映るのを見て、ナウシカの身代わりになってくれた美少女さんが「鳥……」とつぶやきますので、“空を飛ぶ鳥”は存在しているようです。

 ただし、実際に鳥が飛翔している姿は、作品中には描写されていないようなので、最近、絶滅しちゃったのかもしれません。

 彼女は、古代図鑑で鳥について読んだことがあって、その記憶から、古代の鳥が実際に現れたと思って驚いたのかもしれませんが……


 ともあれ、人類の生存環境と生態系をテーマにした作品だというのに、「動物の扱い」がストンと欠落しているようにも見えます。

 そこが押さえられていないと、地球の生態系の骨格でもある食物連鎖が説明できなくなるのですが、まあ1984年公開の作品、当時はいちいち細かいことは指摘しなかったですよね。

 「たかがアニメ、キモイオタクのキモイ趣味」だったんですから。


 おそらく、この欠点を補うべく、同じく環境保護エコロジーテーマの『もののけ姫』(1997)では、舞台となる山全体が「どうぶつ王国」になってしまったのではないかと思うのですが……


 『風の谷のナウシカ』の世界、そのどこかに確実に存在するはずの、生き物のサンクチュアリ、「なぞのどうぶつ王国」。

 一度探検してみたいものですね!



●何を食べているんだろう? 食生活の謎。


 宮崎監督の作品にしては珍しく、実は食事のシーンがありそうで無いのも、『風の谷のナウシカ』の、ちょっと残念な特色です。

 食物として確実に登場したのは「チコの実」だけでして、強化栄養食品というか、濃縮栄養剤に近い食材ですね。お味はアスベルのしかめっ面の通り。

 それ以外では、物語前半でユパがジル王の部屋を訪問した折、大ババ様が妖しい鍋をかき混ぜておられました。

 あれは食事じゃなくて、傍らに薬草ハーブっぽい材料が置いてありましたので、ジル王と自分自身のための煎じ薬でしょう。

 木の匙で味見して、そのまま鍋に匙を戻しますので、これは本当に味見なのか、ババ様の唾液がしっかり添加されたのか、これまた妖しい限りですが……

 まあ、食い物ではなさそうです。


 エンドロールのカットで、城オジたちの酒盛り風景が一瞬、映ります。

 胡坐あぐら座の彼等の前には、たぶんタレを入れて小さじを付した小椀の隣に、茶色の“はんぺん”を重ねたみたいな謎食品が置かれています。

 城オジたちは美味そうに食べていますが、この食品、風の谷の地産品ではなく、トルメキアの大編隊が置いていった土産の一部ではないでしょうか。

 あれほどの大編隊でさんざん威圧して、脅せるだけ脅して去ったら、ダボス会議2026の言いたい放題某大統領様を例示するまでも無く、地元の住民心理としては「二度と来るな!」と石でも投げたくなるのは必定。

 なのでクシャナとクロトワは、風の谷の田舎者どもが食って喜ぶ珍味の数々を土産物として残して行ったことでしょう。住民懐柔策ですね。

 権力者は片手でムチをふるいながら片手でアメを投げるものです。

 人間なんてゲンキンなもので、気に食わない人物でも、持ってきたお中元の中身が気に入ったら、また来てくれてもいいかな、と気分が和らぐものです。

 宮廷外交に手慣れたクシャナですから、最適の選択で、ナウシカたちを喜ばせる物品を気前よく「くれてやった」ことでしょう。

 見た目、どうでしょうね。ロース轢き肉入りのナンで、味噌だれ付き。そんなところでしょうか。

 トルメキア軍の士官用レーションかもしれませんね。

 貴族用のフレンチみたいな超高級食品をあてがっても、映す価値のない芸能人格付けチェックになるだけで、庶民の舌ではしょせん値打ちが見分けられないと踏んだはずですし、それが最適解だったのかも。

 動物のロース肉の味なんて、この歳になって生まれて初めてみたいな城オジ達でしょうから、「クシャナの奴ら、こんなに美味い物を食っていたのか!」と素朴に感激したかもしれません。


 風の谷の庶民の主食は、たぶん穀物や芋を加工したパンとかナンの類だろうと思います。

 お酒の種類はどうでしょうか。

 風の谷ではブドウを栽培しています。また、ペジテのブリッグでナウシカを監禁した小部屋には、大量のジャガイモが入った箱がありましたね。

 ですから、ワインと芋焼酎はアリです。

 ただし作り方が雑で、不純物やおりが残ってしまい、クシャナのような帝国貴族がたしなむ美酒に比べると、いかにもドブロクな“安物酒”の味わいではないかと思われます。



●石油王ナウシカ。


 にしても気になるのは、胞子焼却用の火炎放射器。

 風の谷の日用道具で、銃を除けば最も複雑な文明の利器でしょう。

 あれって、パイプの先端で油に点火してますね。

 その油、どこから来るのでしょう。

 貧しい風の谷のこと、そうやすやすと他国から輸入できるとは思えません。

 工夫して、生産しているのです。

 千年前、地球は“セラミック文明”を謳歌していました。

 その直前はどうだったか。

 たぶん“プラスチック文明”だったでしょう。

 となると、風の谷を南北から挟む、急峻な斜面は断層であり、海岸近くの断層面の地盤には、古代の海底に沈殿してたまりにたまった“プラスチップ地層”が露出しているのです。

 そのままでは役立たずの超圧縮プラゴミの化石フォッシルですが、これを砕いて、特殊な配合で酸の湖の強酸水に溶かすと、アーラ不思議、火を付ければ燃える泥水となるのです。

 名付けて“プラスチップ化石油フォッシルオイル”、略してプラ石油。

 石油化工品であるプラスチックを元々の姿に戻したようなものですね。


 ですから風の谷には、地場産品として灯油に近いものが、存在するわけです。

 そこに、例えばペジテの化学工業技術を応用して、このプラ石油の燃焼力を強化し、粘度を高めたナパーム状とすれば……

 対人火炎放射器という、れっきとした戦闘兵器が誕生します、物騒だなあ。

 クシャナが去って軍備強化に走る風の谷は、この対人火炎放射器キラーサラマンダーF451型を実戦配備するでしょう。

 残酷な発想ですが、「戦争が平和を変えた」実例の一つでしょうね。

 確実にそうなると思います。


 兵器転用可能なプラ石油ですが、巨大な石油タンクに貯蔵して輸出できるような大量加工システムは構築できていません。

 将来、海岸にプラ石油コンビナートを建設し、各国へ輸出するためのタンカーを建造。風の谷を一大産油国に経済成長せしめ、ナウシカはウハウハのオイルクイーンとして羽根扇子を片手に君臨する……ことが可能とは思います。

 が、一方で、コンビナートが発生する環境汚染は千年前に滅んだセラミック文明よりもずっと汚い公害を巻き起こすでしょう。


 だとすれば、腐海による地球環境の浄化は、なんのために?

 懲りない人類ほど、手のつけられない愚か者はいないということでしょうね。

 やはり、絶滅するしかありません。



●海賊王ナウシカ


 作品中最大の突っ込みどころは、「西から吹く清浄な海風によって瘴気と胞子から守られている風の谷」という基本設定そのものにあります。


 海から吹く風は、綺麗です。

 てことは、海は瘴気に汚染されていないのです。


 そこで疑問。

 なんといっても、地球表面の七割は海。

 海洋の大半はやはり、サルガッソーな“水棲腐海”に覆われているのでしょうが、清浄な海も意外と広範囲に残っているのでは?

 

 でなければ、キレイな風をつくって風の谷へ吹き付けるなんて目出度い気象は、発生しませんよね。

 そして海風があれば、帆船オッケー!


 となりますれば、質素な帆掛け船とはいえ、風の谷の住民たちの海洋進出が以前から行われていたはずでは?

 沿岸の漁労です。風によって波ができ、海岸に吹き寄せられる貝類や海苔などの採取は有望な自給食糧源となっているはず。

 そりゃあ、無事に食えるかどうかは命がけのギャンブルですが、フグだって食えるようになるまではたぶん万単位の尊い犠牲者とその貴重な遺言やら目撃証言が積み重なってのこと。

 同じように、風の谷の魚好きの庶民は、身を挺した人々の死屍累々を踏み越えて、食べられる魚とその安全な部位を分別できるようになっているでしょう。


 そのあたり、興味深いですね。

 前々章でふれたように、陸上は腐海に押されて生存圏が狭まっていっても、無事な海洋が意外と広範囲に残されていたら、そこは食糧の宝庫となります。

 ナウシカの時代、たとえ金銀財宝が山とあっても、食い物がなければ死ぬしかないという“マイダス王的”な環境なのですから、海産食品は宝の山と同義語。

 ここに大海食時代が到来します。

 海賊漁労帆船を仕立て、食える大型魚類もしくはクジラを狩って、荒々しく大洋を駆け巡る集団が発生しても不思議はありません。


 ということで、海賊王ナウシカの登場です!

 幻の超巨大食材、地球の赤道を一巻きしているという“ひとつながりの赤昆布:ワンピース・レッド”を求めて、世界の海賊漁船団が覇を競います。

 その前に立ちはだかるのは、海を支配する巻貝の帝王“王蟲貝おーむがい ”。

 こっちは陸棲王蟲より何千倍も大きいメガオームがいると考えられ、最大級の奴は畏敬を込めて“レッドノア”と呼ばれていることでしょう。それとも、“ボア貝”かな? ほら、幽霊船が空飛ぶお話(1969)で、最後に出てきた超巨大貝……


 もしもいつか続編の『ナウシカ2』がつくられるとしたら、海洋を舞台にすることは間違いありませんね。


 進めナウシカ、海賊王女、七つの海を制覇せよ!


 


   【次章へ続きます】


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