407●架空戦記に終わってほしい“T湾有事はN国有事!?”⑦リスキーな原潜よりも……進め! 通常動力の大潜水艦隊!
407●架空戦記に終わってほしい“T湾有事はN国有事!?”⑦リスキーな原潜よりも……進め! 通常動力の大潜水艦隊!
ネットのニュース
●中国、就役前の最新原子力潜水艦が沈没 米報道「軍は隠蔽」
2024年9月27日 6:59 日経新聞【ワシントン=時事】
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)は26日、中国で就役前の最新鋭原子力潜水艦が5月下旬から6月上旬の間に沈没したと報じた。
同紙によると、沈没したのは攻撃型原子力潜水艦「周」級の1番艦。同艦は5月下旬に湖北省にある長江に面した造船所で航海に出る前の最終整備が行われていた。その後沈没したとみられ、6月上旬の衛星写真で、大型のクレーンが現場に到着し、沈没した潜水艦を川底から引き揚げている様子が確認された。
米国防総省高官は同紙に対し、中国海軍の装備品の質や防衛企業に対する監督体制などに問題があると指摘した。米国防総省が昨年10月に公表した報告書によると、中国は弾道ミサイル原子力潜水艦6隻、攻撃型原子力潜水艦6隻、通常動力型潜水艦48隻を保有している。
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最新型原潜の、しかも一番艦。
C国は細心の注意を払って整備していたはず。
それがあっさりと、処女航海の前に沈没してしまいました。
まあ潜水艦は沈むのが仕事で、今回はたまたま浮かび上がるのを忘れただけかもしれませんが、これが偶発的なポカミスにせよ、構造的欠陥にせよ、由々しき事態であることは間違いありませんね。
これ、昨年の出来事、ごく最近の事案です。
対岸の火事でなく他山の石とすべきでしょう。
潜水艦は恐ろしくデリケートで、手のかかる難物なのです。
原子炉を積んでいたら、なおさら。
映画『K-19』(2002)みたいな放射能漏れの危険は、常に付きまとっています。
通常動力に加えて、さらに上乗せで原潜というハイリスクを背負うべきか否か、N国ソーリには慎重の上にも慎重な熟考が求められるでしょう。
なんかこう、原潜と言えばスーパーサブマリンで、“万能の不沈艦”と世間の皆様から過信されているのではないかと思います。
ネットの記事
●ベローナ報告 トマス・ニールセン、イゴール・クドリック、アレキサンドル・ニキーチン共著 第8章 ロシア北方艦隊核潜水艦事故
(日本原水協)Copyright (C) 1996-2011 Gensuikyo.
事故または広範囲の損傷のいずれかにより、現在6隻の原子力潜水艦が海底に横たわっている。2隻は、アメリカのもの(USSスレッシャーとUSSスコーピオン)で、4隻はソ連のもの(K-8、K−219、K−278コムソモーレッツとK-27)である。アメリカの潜水艦2隻とソ連の潜水艦3隻は事故によって沈没した。残るソ連の1隻は、修理は不可能で廃船には多大な費用がかかる、との責任当局の判断により、船底に穴をあけられ、カラ海に沈められた。ソ連の潜水艦4隻はいずれも北方艦隊に所属していた。
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なお前掲の資料は1996年現在らしく、2000年8月12日のロシア原潜クルスク号の沈没と乗組員全員死亡の事例は表記されていません。当日バレンツ海での演習に参加していたロシアの原子力潜水艦クルスクは通信を途絶え、翌日水深108mの海底で発見されました。
これらは沈没による船体全損という苛烈なケース。だいたい十年に一回の割合で、乗組員全員絶望かそれに近い事態が発生しているわけです。
事故による艦内火災や破損、経年劣化した機器の故障といったレベルなら、もっと数多く発生していて、それが軍事機密のベールに隠されて、全く報道されていない事案も多々あろうかと思います。
決して、21世紀の原潜でも安全とは言い切れない。
私たちに知らされていない危険性が、大量に隠されているかもしれません。
ネットのニュース
●「あわや大事故!」英国海軍の原子力潜水艦がトラブルで危険深度まで潜る 原因は「酷使」か
2023.11.20 乗りものニュース
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した状態のヴァンガード級原子力潜水艦の深度計が故障し、大西洋で重大な事故を起こす寸前だったことが2023年11月19日、イギリスメディアで報じられました。
イギリス各メディアの報道によると、同艦は誤って最大深度として設定されている約500mに近い深度まで潜ってしまったようです。
原因は深度計のトラブルとのことです。乗組員の殆どは水平航行をしていると勘違いしていたそうですが、船体後部で任務についていたエンジニアが別の計器を見て異常を発見。警報を鳴らしたことで、乗員140名の命を救い、核弾頭48個が海底に沈むのを回避したようです。
ヴァンガード級原子力潜水艦は、2023年現在、イギリスで唯一の核戦力を担う原子力潜水艦で、計4隻をイギリス海軍は運用しています。
しかし、トラブルが重なり、ネームシップの「ヴァンガード」は7年以上にわたる修理でようやく2024年に復帰するめどが立ち、「ビクトリアス」は2022年に火災事故を起こし修理中の状態にあり、しばらく2隻体制での運用が続いています。
そのため、本来は60~70日であるところを、150日を超える長期間に渡り、遠洋でのパトロール任務に就くケースが増えています。こうした同級原子力潜水艦の過酷な運用状況に関して「破滅的な危険性をはらんでいる」と批判報道が2023年9月末に出ていました。
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この記事が示しているのは、伝統的海軍国の英国ですら「戦略原潜四隻」という最小限の稼働ユニットがまともに維持できなくなっているという現状です。
原潜に四苦八苦する英国海軍。
原潜に食いつぶされるコストと人的物的資源の大きさを物語っているようですね。
その結果、一隻当たり一度に150日という“異常なまでの長期潜航”が強いられていること。別の記事では、「200日以上」もありました。
身体をろくに動かせない穴倉生活で、太陽の光を浴びることなく半年も暮らす。
しかも、常に深海の水圧の恐怖が付きまといます。
乗組員、肉体も精神も、ヘロヘロになっていく事でしょう。
潜水艦の耐圧殻は、水深300メートルなら1平方cmに30キロもの圧力がかかります。親指の先端に30㎏ですから、大きめの手のひらなら1トンですね。それがありとあらゆる方向からミシミシとかかってくるわけです。
そして潜水艦は深度を上げ下げします。水圧も変化します。
頑丈な耐圧殻と言えど、水圧をかけ続けられて、膨らんだり凹んだりしていると、何年後か何十年後か知りませんが、いつの日か、タイタニック観光の潜水船タイタン号みたいに、グシャッと潰されるかもしれません。
いや、知らず知らずのうちに耐圧殻が軋み、ミクロのサイズで小さな穴が開いたとしたら……
あの童話、オランダの運河の堤防に小さな穴が開いて水が洩れているのを発見した少年ハンスが、自分の指で穴をふさぎ、しかし穴がだんだんひろがってきて、ついに腕を肩まで差し込まねばならなくなり……といった不気味ストーリーに似てきますね。
この恐怖が現実に目の前にある。
長期潜航は、乗組員の心も確実にむしばむと思われます。
しかも半年間も、フネは塩水に浸かっているのです。
原子炉は無事でも、周辺機器の小さなトラブルが重なって、船体の様々な機能が劣化するでしょう。それは兵器としての劣化です。
記事にあるヴァンガード級原子力潜水艦では、いつのまにか深度計が故障してしまい、誤った表示に安心しているうちに危険深度500メートル近くにまで降下していたとのこと。
無事に生還できたのは、運が良かっただけなのです。
あるいは、それ以外にも、塩水にさらされ続ける船体表面の腐食、休まず回転を続けるスクリュープロペラとその回転軸に金属疲労や摩耗、細かな破損が広がって、思わぬ騒音を立てているかもしれません。
そうだとしたら、敵性潜水艦に発見され、こっそりと追尾されていた可能性もありますね。平時だから魚雷を撃ってこなかっただけで。
このヴァンガード級原子力潜水艦が浮上した写真を見ますと、船体の外皮を覆っていた無響(吸音)タイルにびっしりとフジツボが付着して、まるで鳥の糞を大量に被ったみたいに真っ白になっていました。タイルがボロボロになって剝げ落ちた箇所もあるような。
これまた由々しきことです。
敵艦のソナー探知音を反射せず吸収するように、びっしりと船体全面に貼り付けた無響(吸音)タイルです。その表面がフジツボでおおわれてしまうとは。もう、笑うしかありませんね。
敵の音響探信儀の探知音を反射するだけでなく、デコボコした船体が30ノットすなわち時速50キロほどで走ろうものなら、これまた異様な騒音をザバザバと発したのではないでしょうか。
たまたま平時なので何事もないかのように帰ってきましたが、実戦ならたちまち自分の居場所がバレて撃沈されたのではありませんか?
原潜四隻体制が維持しきれず、長期航海を余儀なくされる。
原潜なので性能スペック的には半年近く平気で潜航できるものの、乗組員は生身の人間です。
おそらく乗組員は心身ともにヘロヘロ状態。しかも船体各所に機器トラブルを生じている。そのトラブルの一つは、あわや沈没の危機を招いていた……。
長期潜航は原潜の最大のメリットです。
しかし、この体たらくでは、果たしてメリットと言えるのかどうか。
なるほど、誇り高き英国人の、世界にまれなる忍耐強さは、よくわかりました。
その昔、大戦中のバトル・オブ・ブリテンを戦い抜いた市民たちの不屈の精神は感涙ものです。
しかし、浮上した巨大原潜の姿は……
フジツボまみれの、まんま幽霊船でした。
あれで戦争できるのか?
素人の老婆心ながら、思うのであります。
原潜勤務は、ガマン大会のオリンピックではない……
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あの英国ですら、原潜の維持と安定運用には四苦八苦している。
N国も四苦八苦しないのか、いささか心配になってきます。
いや間違いなく、現場は四苦八苦することでしょう。
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現在、N国の通常動力潜水艦は能力向上が著しく、一カ月の連続潜航が可能になったと言われています。
ならば、それで、十分ではありませんか?
実際、潜航状態のまま、乗組員が心身ともに士気を旺盛に維持できるのは、いいところ一カ月が目安ではないでしょうか?
それに塩水漬けになる船体の性能を維持する上でも、潜りっ放しは一カ月程度にとどめて、帰港するたびに無響(吸音)タイルをはじめとした各種機構を点検整備するのが理想的ではないかと、勝手に考えてしまうのですが……
もちろんド素人の私めの老婆心的愚考ですので、医学的工学的な根拠は無いのですが、通常動力潜水艦の連続潜航期間が一カ月ならば、それに合わせた短サイクルのシフトを組んで、こまめに出港帰港させて、そのたびに乗組員が休養し、船体にメンテナンスを施すのが、合理的な流れであるような……
でも、そのためには、より多くの潜水艦を揃えて、現場を受け持つ潜水艦が続々と交代する仕組みを作るべきでしょうね。
そのためには……
前掲の記事では、原潜の連続潜航活動を「本来は60~70日」としていますので、原潜に要求される基本的性能を「二カ月の連続潜航」と推定します。すると……
① 二カ月潜航し続ける原潜を4隻、四兆円で建造する。
② 一カ月潜航し続ける通常動力型を40隻、四兆円で建造する。
どっちを選ぶか? となりますね。
性能的に、水中最高速力は原潜が優りますが、静粛性では通常動力艦の方が優れています。
①ですと作戦海域で活動できるのは、どう考えても一隻か二隻。
②ですと、短サイクルのシフトで次々と交代しながら、常時10隻以上が作戦海域に展開することになるでしょう。
それらは魚雷に加えて、対艦ミサイルのハープーンや、垂直発射筒に巡航ミサイル・トマホークを整備している。
やはり「数の力」は大きいのではないでしょうか。
この章の冒頭の引用記事では、「中国は弾道ミサイル原子力潜水艦6隻、攻撃型原子力潜水艦6隻、通常動力型潜水艦48隻を保有している。」とあります。
戦略原潜六隻と攻撃型原潜六隻。これは中国においても、原潜の維持運用は容易な事ではないことを物語っているのではないでしょうか。最初の攻撃原潜「漢」型を就役させたのは1974年。原潜の維持運用が順調なら、既に半世紀を経た今日、もっと隻数が増えていても良さそうなものです。
そして別途に「通常動力型潜水艦48隻を保有」しているのですから、日本としては、原潜で対抗する以前に、この48隻に対して潜水艦勢力の恒久的な優位性を確立することが前提になるのではと思います。
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原潜が欲しい? 「そんなことよりも」先にやるべきことが山ほどあるでしょう。
無人潜水ドローンと、その有線誘導母艦。
小型潜水ドローンを応用して身代わりとし、敵の魚雷から身を護るシステム。
AIで自動的に深海を偵察する無人艦。
ハープーンやトマホークに代わる、国産ミサイル。
衛星を使った広域作戦システム。
通常動力艦の行動範囲を広げるための(『沈黙の艦隊』のサザンクロス号みたいな)ドック内蔵の潜水艦支援艦。民間のコンテナ船とかに偽装して、中立国の領海内で味方潜水艦の補給と休養、そして小型原子炉によって急速充電を行う、“浮かぶモバイルバッテリー船”ですね。
あるいは旧式潜水艦から魚雷を降ろしてバッテリーを増設し、“水中充電船”として味方艦が潜ったままケーブルを接続して充電できるシステム。
スクリューに代わる無音推進システム。
それやこれや……
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日本の原潜の建造と維持は、圧倒的に米国頼みとなります。なんだかんだ言っても、米国の言いなりに動くしかないパシリ原潜となるでしょう。
しかし通常動力艦なら、日本固有の技術で全てを賄える。
なんだか、小澤さとる先生の漫画『サブマリン707』みたいですが、オール日本の技術で建造された純国産の通常動力艦が数十隻の大艦隊をなして、沈黙の深海を遊弋するイメージ、悪くはないと思うのですよ。




