17●『未来少年コナン』(16)“波陰戦争”の教訓と、アムロが還る家。
17●『未来少年コナン』(16)“波陰戦争”の教訓と、アムロが還る家。
僕たちは、“壊すか奪う”のでなく、“作るか育てる”で生きていくんだ……
コナンたちは、そのように人生を選び取りました。
その“選び取り”の舞台となるエピソードが、第16話から19話にかけて語られた、ハイハーバーへのインダストリア軍の侵攻作戦……とあるアニメムックの表現によると“波陰戦争”と称される両国の軍事行動です。
人が“戦争(壊すか奪う)”生き方をやめて、“平和(作るか育てる)”を選択するには、どうすればいいのか。
コナンたちの眼前に、まさにリアルな戦争そのものが提示された、物語の中盤で最大の山場といえる出来事ですね。
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〈波陰戦争の教訓〉
一方的に蹂躙されたかのように見えるハイハーバー側ですが、決して平和ボケの無抵抗主義に堕していたわけではありません。村民防衛軍は不十分ながら組織され、峠に陣取って迎撃戦を行いました。武力を全否定していたのではなく、憲法九条的な必要最小限の(実際はそれよりも少なかったのですが)自衛力を行使したわけです。
そしてガルおじさんとコナンによる特殊部隊がガンボート撃沈の快挙を成し遂げてくれました。これは、ガルおじさんの趣味の火薬製造ノウハウが武器として役立つように平時から整備され、事前に運用実験(バラクーダ号の船腹破壊と座礁)を行っていたことの成果でしょう。
すぐさま軍事に転用可能な民生技術を、日頃から純国産で養っていたのです。
その結果、ハイハーバー軍はインダストリア軍を“効率的に無力化”することに成功しました。
完全勝利は無理でも、敵戦力を弱体化して味方の陣中に孤立させ、“事実上、無力化”することで国民を守った。
この事実を前提として、後述の“三つの環境”をインダストリアの残存兵にもたらしたことで、平和が確立されました。
これが、“波陰戦争”の軍事的な教訓でしょう。
国家防衛の見地から、二十一世紀のこの国にも通じる要諦ではないでしょうか。
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ハイハーバー軍の作戦成功、それに続いて、真に戦争を終わらせてハイハーバーに平和をもたらしたのは、武力による強制でも上から目線の説教でもなく、静かな“環境の変化”にありました。
下記の“三つの環境”ですね。
●あなたはもう、何者にも支配されていない、自由である。
●武器を持たずとも、あなたは完全に安全である。
●何者にも蔑まれず、あなたは社会に喜ばれて働くことができる。
この三つの“環境”が与えられた時、人はだれでも平和に生きられる……ということです。
武器は取り上げるが拘束しない。
そして、ともに働く麦刈りへの誘い、村民の好意と美味い飯。
平和とはどういうものか、ほんの数カットでシンプルに心を打ちます。
これが、もしも武力と説教でインダストリア兵を屈従させる“押し付け”の平和だったら、遠からずして村内叛乱の危機が訪れたことでしょう。
かくも見事に“戦争と平和”の要点を語った作品は、そうそうお目にかかれるものではありません。
二十世紀のアニメ文化の偉業だと思います。
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同時期のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』(1979-80)では、生き延びるための正当防衛の要素が強いとはいえ、少年少女が武器を持ち、明らかに人を殺します。
そのことの悲劇性や良心の呵責を動機として平和を希求する人々も見落とすことなく描かれて、こちらも物凄い名作なのですが、“一年戦争”の結末は、やはり武力による勝利……とするしかなかったようです。
ただし、“正義が勝ってめでたしめでたし”ではありませんでした。
全ては主人公のアムロ個人の心のドラマに焦点を結び、シャアと一騎打ちする“荒ぶる神”であったアムロが、ララァの魂に諭され導かれて(このあたりはやや説教っぽいですが)、救命艇の仲間たちのもとへ戻ることで、結論が示されます。
“家へ還る”
苦難の末に、還るべき場所を見いだせたことで、彼の心は束の間の平和に回帰し、安らぐことができたのでしょう。
この家とは……
先の“三つの環境”を満たす場所であること、おわかりいただけると思います。
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敵を滅ぼし、その武力を粉砕することで、ようやく平和が得られる。
それが、幾多のアニメ作品の“戦争論”の帰結でした。
間違いではありません。
初代『宇宙戦艦ヤマト』も基本的にはそうでしたね。
『機動戦士ガンダム』も『超時空要塞マクロス』(1982-83)もそうです。
もちろんヤマトもガンダムもマクロスも、戦争賛美を目的とする作品でないことは明らかです。
戦わざるを得ない、敵に勝たねばならない、生きるためには殺さねばならない……という現実の悲劇性をストーリーの下敷きにして、その現実に抗い、闘って、結論を導き出そうとされていることは、十分に感じ取れます。
それが、1970年代後半から80年代初めの、多くのアニメ作品に流れていた空気感でした。
しかしそこへ……
“武力行使を無意味化する環境の変化”こそが紛争の最終解決手段である……
ということを、いちはやく、具体的にストーリーに示した点で、『未来少年コナン』は名作中の名作になったと思うのです。




