第08話
飛び掛かかられた挙句、取りつかれて噛みつかれると俺達でも少しだけダメージが通る。
HPが削りきられる前に全滅させる必要があるのだが。
動きの速い敵に対する補足の練習としては良いのだろう。
敵の出てくる順番や種類なんかも設定者の意図が透けて見え。
これも訓練のうちなんだろう、最大限利用してやろう。
俺は走りまわるケイブラットを殴ったり捕まえて頭をねじるようにして倒していった。
シロは精霊が魔法を打ち込むラグを利用して小石で牽制するようになった。
訓練が実践に生きてよい感じだ。
アオとアカは…、齧りつかせて握りつぶす戦法とりやがった。
まぁ確かに動きは止まるからそこを捕まえるのは楽かもな。
捕まえて齧ったりしてそのままHPを回復してるからそれはそれでありなのか。
ケイブラットとの戦闘が終了し、ドロップを確認する。
<ネズミの肉
大型のネズミが落とす食材>
「アタタカイミエル、オイシソウ。
ウレシイ」
取れたてほかほかのネズミの肉…
あれ?ほかほかお肉が見ただけで分かるのって皆?
肉を見ながら嬉しそうなシロの言葉に
「皆温かいかどうか見えるのか?」
と聞いてみたら、
「ワレミエル」
「ウマソウ」
「アタタカイ、ワカル」
全員判るらしい。
あれか、犬が鼻がいいみたいにリザードマンは温かいのが見える?感じる?みたいな特徴があるのか。
『種族の特徴はスキルなどではないので説明がない』
スキルだけで説明される世界って訳でもないのか、気を付けよう。
『敵を倒して死体が残らないでドロップアイテムが残る』
これは邪妖を倒した時と同じか。
こういうところはゲームの世界だな、解体とか知識も道具もないから楽でいいけど。
敵を倒したら死体ではなくドロップアイテムが残るこのあたりはゲームっぽい。
3体の目がキラキラしてネズミ肉から視線を離さない。
これは食材扱いだし食べてしまおう。
アオとアカはネズミの肉を分けてやると喜んで食い始めた。
「オデ、イチタオシタ、ニクウマイ」
「ワレノクウ、ニバンメニウマイ、アタリマエ」
おまえらドロップだけじゃなくて戦闘中もつまんでたじゃねぇか。
まぁ食える時に食える分を食いだめしておくのも本能のうちだろう。
ただしつまんだ分も含めてちゃんと分けさせてもらうぞ。
そりゃ邪妖さんの血肉ゼリーよりは旨いからな。
邪妖の肉は全員がまずそうに食っていた。
HPを回復するのにやむを得ず食べてはいたが、今後ネズミの肉が主食にできるのなら好き好んでは食べないだろう。
そのくらいの勢いでぱくついている。
シロは頑張っているのだが、動きが速い敵にうまく魔法が当たらず、石では攻撃力が足りない為、なかなかネズミにとどめがさせない。
だが、俺たちは全員がちゃんと食事をすることで成長しなければならない。
シロに取り分としてのネズミの肉を渡す。
「ア…アリガトウ…」
シロは驚いたように受け取り、肉を一口ついばむように食べると予想外に旨かったのだろう、目を見開き手に持った分をぱくりと全部口に入れる。
シロは戦闘で活躍できないと遠慮している様子だが、明らかにさぼってるわけでなし、取り分を渡すのは当然だろう。
食いつきがいいと与える方も気持ちがいいしな。
いっぱい食べて成長してあとで役に立ってもらえばそれでいいのだ。
見た目はばっちり生肉だけどな、邪妖の肉よりはましだと信じて口に入れる。
変な蒸気も出てる感じもしないし。
モグモグ咀嚼しながら味を確認する。
うん、生肉だわ、血のしたたる生肉。
栄養的な話をしたら塩分とか補充するために生き血ごと頂くのが野生生活的には正しいとは思う。
お腹壊さないでちゃんと消化できるならありだろう。
臭みは多少あるが生肉の感触と滴る体液が取れたてお肉って感じ。
丸呑みしないでちゃんと味わうことができる余裕があるくらいにはちゃんとした食べ物って感じはする。
ドロップした肉ってのはどういう処理をした肉の扱いなのかねぇ。
生肉をそのまま食べる嫌悪感はあんまり感じなかったから、今の体にあわせた味覚の調整はされているのかもしれない。
ただ塩気がもっとあったほうが旨いんだろうなと思うあたり多少は名残があると思う。
モンスターの体になったからって食べ物の旨いまずいは感じるらしい。
もちろん調理したものが食いたいとは、今の俺は口が裂けても言えることではないかもしれないがな。
(ちなみにリザードマンの口は耳までばっくり裂けている)
タレつけて焼いて食いたいとは言わないが、せめて塩が欲しい。
塩すらないと無いとわかる。
調味料は偉大な文明だな。
生肉も適正な処理することでうまみが増すところもあるらしいけどな。
薬味と醤油を効かせた馬刺しとか牛刺しってのは滅茶苦茶旨いものだし。
そう思えばきちんと処理して料理を食いたいと思うが現状は調味料どころか調理という文明のかけらさえもない。
ウチの店でも外国人用のジビエ肉としてウサギとかカエルも少しだけ冷凍パックして扱ってたし。
ちゃんと調理したものならあれはあれでなかなかに旨いものだとは思うぞ。
ネズミの肉って言ったってちゃんと処理したり調理すれば多分商品にだってなるだろう。
名前をよくわからない動物の名前にしてちゃんとパックに詰めれば割と行けると思うぞ。
まぁお肉をおいしく頂く為の処理とか管理の技術はかなり専門知識いるからな。
熟成処理に冷凍技術が使えないと管理したりするのは不可能だろうし。
日本でそれ系の資格取ろうと思うと割とシャレにならない金額取られるし。
俺は持ってないけど店の精肉担当の主任が持ってたはず。
まぁ日本は衛生管理が厳しすぎる気がしないでもないけどな。
神(笑)め、元の世界の知識や記憶を持たせたままモンスターにして魔物の肉を生食する世界に放り投げるのはかなり性根が悪いと思う。
長い通路を歩いていたがやっとそれも終わり、大きめの部屋にでた。
グレード UC
所属 None
名前 ??????
種族/Lv ジャイアントケイブラットLv10(BossTarget!)
職業/Lv 獣魔Lv06
HP/MaxHP 120/120
SP/MaxSP 15/15
スキル01 毒牙Lv02
スキル02 呼応Lv02
スキル03 貪食Lv03
スキル04 体術Lv03
スキル05 闘争心Lv02
ボスターゲット。
アンコモンの大きなネズミだ。
1匹とはいえさすがに今まで出てきた敵とは一桁違う強さをしているようだ。
呼応も持ってるということは途中で増援を呼ぶタイプのボスか。
~Boss Battle~
~勝利条件:敵の殲滅
敗北条件:パーティー全員の戦闘不能
DMステータス:AUTO
BGM:Boss Battle02 ピンチになったら本気出せ!~
「ヂュヂャー!!」
体術による攻撃なんだろうが身体の大きさに比べて手足が短いこいつの攻撃は噛みつきメインになる。
動きもさっきまで戦っていたケイブラットに比べれば早くはなったが、それ以上に大きくなった身体が攻撃をとらえるのには楽になった。
フェイントを使ったりとかの変則的な動きをしない大きなネズミ。
そう苦戦しないものかと思ったが、さすがにボスの攻撃は痛い。
俺一人で攻撃を受け続けたらHPがなくなってしまう。
俺とアオとアカの3体で分散して攻撃を受けてシロの援護のHP回復を受けながら攻撃だ。
誰かがダメージを続けて受けないようにアオとアカへの攻撃をカットしたり逆に2体を盾にしたりして戦う。
「ヂュー!」
<呼応発動!
ケイブラット2体参戦!>
「「ヂュヂュー!」」
さらに増援で普通のケイブラットが2体出てくる。
最悪ボスが増援で増えるかもと思っていたが普通のでよかった、いや苦しいけどな、最悪じゃないだけだ。
増援のケイブラットにアオとアカを向かわせ対応させる。
「右の小さいのを倒したら左の小さいのを倒せ!」
「ミギ?コッチカ!」
「オロカモノ、ニクヲモツノガ、ミギデアル」
「オデ、リョウホウデモツゾ!」
指示が細かくなって不安だったが何とか通じたようだ、アオとアカ2体で同じケイブラットに向かっていった。
ボスの攻撃ダメージをしばらく俺一人で受け持たなきゃならない。
相手の攻撃を回避しきれないところはなるべく体の堅いところで受ける。
大きなダメージを受けないように時間稼ぎを主眼に戦う。
増援を倒したアオとアカが戻ってきた。
またローテーションでダメージを受け持つ。
<ジャイアントケイブラット
HP 38/120>
<スキル 闘争心発動!
身体能力向上!
特殊効果発動確率上昇!>
ピンチになった大ネズミのスキルが発動し、体が赤いモヤに包まれているように見える。
動きが速くなって力が強くなった。
アオとアカでは大きなダメージを食うようになって俺の対応時間が増える。
2体はまだ自分の体の柔らかいところに来る攻撃を避けるのに慣れてない感じだ、仕方がない。
だからといっても俺たちの取れる対応の仕方は増えてはいない、つまりやることは変えられない。
単に俺の負担が増えただけだ。
攻撃に対応し相手のHPを削っていく。
ボスネズミに咬みつかれた俺の肩の肉が削げる。
<Bad Statas!
負傷 身体能力低下。
毒 HPに継続ダメージ>
ここにきてバッドステータスを食らうとは。
肩から血が流れている。
俺の血が赤いことに何か変な安心感を覚える。
ただし!ものすっごい痛いぞ!
毒も追加されてるからかビリビリする。
石を怪我していない方の手に持ち替えてボスの頭をカチ割るつもりで振り下ろす。
ゴリッとボスの頭蓋にまでダメージが入った感触がしたが、手に握りこんでいた石の方がバックリ割れてしまった。
<装備品① 石
変更 石の握斧>
「ウギシャァァァ!」
俺は咆哮を上げオオネズミの首に咬みついて、割れた石の尖ったところを大ネズミの頭に打ち込む!
そして打ち込む!
説明が難しいが、通った!といういい感触だ!
俺が毒で死んじゃうじゃないか。
その前にお前が死ね、オオネズミ!
<ジャイアントケイブラット
HP 0/120>
~Boss Battle~
~Clear!~
<リザードマン・オブシディアン
種族レベルが上がった。
職業レベルが上がった。
スキル 片手武器のレベルが上がった。
スキル 体術のレベルが上がった>
<リザードマン・アゼツライト
種族レベルが上がった。
職業レベルが上がった。
スキル 精霊魔術のレベルが上がった。
スキル 投石を覚醒した>
<リザードマン・アパタイト
種族レベルが上がった。
職業レベルが上がった。
スキル 体術のレベルが上がった>
<リザードマン・カーネリアン
種族レベルが上がった。
職業レベルが上がった。
スキル 体術のレベルが上がった>
<ドロップ
ネズミの肉×4
ネズミの胆×2>
さすがにボスを倒した経験は大きいようで
軒並みレベルが上がっている。
そして
<シロ
スキル01 投石Lv01>
を覚醒した。
~Regular Mission~
~ダンジョン点検口を巡回しよう
ダンジョン点検口から点検通路を巡回して
ダンジョンに異常がないか確認しよう
Clear!
経験値を獲得!~
ミッションもこれでクリアーのようで
また皆いくつかレベルが上がった。
<ネズミの胆
毒消しの一種。
抗毒力を高め身体中の毒素を無力化する>
今の俺に一番必要なドロップはこれだ。
急いでドロップを分けて食べることにしよう。
普通の肉より黒くて筋の少なそうな塊を口に放り込む。
「がぁ!苦い、苦いぞこれは!」
悶える俺を見ないようにしながら食べるボスのネズミ肉は旨いかお前ら。
「ニクウマイ」
「オデウマイニククウ」
「オイシイ、ウレシイ」
胆嚢だから仕方ないとはいえ、こんなもの元の世界でも食ったことないもんな。
結局毒持ちボスと戦って毒食らったのは俺だけだった。
口直しに普通の肉を喰ってHPを回復したら限界がきて俺は気を失ってしまった。
俺たちの最初の神(笑)のミッションはこうして終了したのである。




