未来への約束
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「お嬢様、サンダース子爵令息様、バルコニーへ来るようにと旦那様がお呼びです」とメイドが呼びに来た。
「分かったわ、直ぐ行くわね」
私たちはバルコニーへ足を運んだ。そこには家族がいて、多くの民衆が集まっていた。
お父様が話し始めるとざわめいていた人々が静まった。
「日頃から良く働いてくれる皆に楽しんでもらいたいと思い豊穣祭の企画をした。そしてもうひとつ、我が家の長女フローラがサンダース子爵家のアレン殿と2年後に結婚をすることになった。皆これからもよろしく頼む」
うおーっと地鳴りのような声が響いた。
「「「お嬢様おめでとうございます!お幸せになってください!!」」」
沢山の領民が祝いを叫んでくれた。胸が熱くなり涙が零れ落ちそうだ。
アレンと2人で手を振った。
「おじょうさま〜」という声と雨の音のような拍手が聞こえて来た。
その時ふわりと身体が浮いた。お姫様抱っこだ。
領民から「キャア〜」「うお〜」という黄色い声と低い声が聞こえて来た。
私は恥ずかしくなり首に両手を回しアレンの胸に顔を埋めた。
ヒューヒューと指笛の音まで聞こえて来た。
領民の興奮は最高潮だ。
夕闇が消えて夜が忍び寄って来た頃領主邸の上空に爆音が響いた。何事かと驚く人々が見たのは夜空を彩る火の花の競演だった。
「綺麗!!」誰かが叫んだ。うっとりと見上げた先にあったのはフローラの魔力による花火だった。魔法なので火事が起きることはない。
その後に降り注いだのは粒子のような細かい氷の花だった。細かな雨がキラキラと夜空を彩った。アレンの氷魔法だ。
「わあ~!綺麗!」
「祝福が降ってきた。お嬢様、婚約者様、おめでとうございます。お幸せに!!」
領民達のあまりの喜びように「お前たち来年も領民が期待をするかもしれないぞ」というお父様の声はため息が混じっていた。
★☆★
祭りの後の興奮からかアレンの瞳に熱が見える。賑やかな喧騒が嘘のように静かになった。伯爵邸の庭園を渡る夜風には甘い花の香りとどこか懐かしい果実の熟したような香りが混ざり合っていた。テラスに身を寄せ合い夜空を見あげた。
そっと暖かいストールが掛けられ肩を抱き寄せられる。
頬に手を添えられ唇が触れるだけのキスをした。
そっと離された唇から息がかかるくらいの距離にアレンがいる。
「身体が冷える。部屋の中に入ろう。好きだよフローラ。初めて出会った時から君だけを愛してる」
腰を抱かれ私室に戻った。ソファーに並んで腰を降ろし向かい合った。
「ありがとう、私も好き、大好き。ねえもっとキスして」
羽のように軽いキスを唇に何度も。それから深い大人のキスをした。やっと顔を離すと大きくアレンが息を吐き出した。色気がだだ漏れだ。
「はあ~後2年か、長いな。婚約してから12年、それに比べればきっとあっという間かもしれない。昔僕が浅はかだったせいで横恋慕をされて君を泣かせたことは忘れられない黒歴史だ……。君を不安にさせて本当にすまなかった」
「もうそれは言わないで。アレンが私だけを見ていてくれると信じられるようになったわ。私だって酷いことを言ったもの…」
「君にああ言わせたのは僕が悪い」
「もうやめましょう。終わったことだわ。お互いに想いあっている。それが嬉しいの。私幸せよ。
せっかく受かった王宮魔術師団だから働いてみたいと我儘を言った私を待ってくれる優しいアレンが好き。身体が弱かった私の為に本を読んでくれたアレンが好き。熱を出して寝ていた私に氷を出して見せてくれたアレンが好き。私の最愛はアレンよ。
健康になり世の中に出てみて、私の世界がいかに狭いのかよく分かったの。
こんな私だけど今度は人の役に立ちたい。魔術師団で働いておけば良かったと後悔をしたくないの」
アレンの大きな手に触れながらフローラが真っ赤な顔で言った。
「嬉しいよ、僕の最愛。君の全てが好きだ。フローラは思うように生きればいい。応援をする。でも狼の群れに子羊が放り込まれるんだ。心配でしょうがない」
「あのね、魔術師って基本人に興味がないのよ。好きなのは魔法だけだしね。だから学院でも上手くやれたの」
「ミラが守ってくれたからだって聞いたけど。自覚がないのか?どうするかな」
学院でフローラの才能と容姿と家柄に心惹かれた男どもがいたことは知っていた。
それを物理的に避けていたのがミラだ。その情報を聞き裏で手を回し潰していたのがアレンとマクミラン伯爵だった。
アレンはフローラの師匠で魔術師団長であるロランに頭を下げ頼むことにした。
高級ワインを手にアレンが魔術師団を訪ねるとロランはいつもの冷ややかな顔で出迎えた。
「婚約者の為にそこまでするとは過保護過ぎないか?まあ彼女は私の可愛い弟子でもあるし優秀だから目を配るが、行き届くとは限らない。結婚の祝いにいいものをあげよう」
見た目は冷たいが情に熱いのがロランだ。
差し出されたのはお揃いの花型のダイヤの魔石のピアスだ。昔アレンの贈った紫水晶が中心になっている。かなり高度な魔法が使われているのが分かった。
通信が出来、危険があるとアレンに知らせがくるという画期的な物だった。
アレンは文官だが剣の鍛錬にも励んでいて腕前は相当なものだ。
フローラの為に歯を食いしばり頑張った。
祝いの品をありがたくいただきその場を辞した。
フローラに「おめでとう」と書かれた祝いのカードと一緒に渡した。
「お師匠様からいただいたの?嬉しい。アレンの紫水晶が中央なのね。気を使っていただいたのね。これで会話ができるなんて素敵だわ」と感激していた。
自分以外の男性からの贈り物なんて不本意だがいつでも連絡が取れるのは嬉しい。危険が察知出来るのもありがたい。
フローラの喜ぶ顔はアレンにとってのご褒美だ。
これで彼女の身が守れるなら言うことはない。
心配症なアレンは美しい婚約者を蕩けるような瞳で見つめたのだった。
ここまで読んでくださってがとうございました。これで最終回になります。
どうにもならないと思っていた死を乗り越えながら、喧嘩をしても話し合いをして仲直りをする2人を見守っていただきましてありがとうございました。フローラとアレンの周りには愛情溢れる人たちが沢山います。きっと幸せを逃さないように努力を重ねることでしょう。
では皆様また次回作でお会い出来ますことを願っております。




