【サイドストーリー】生死を分けた行動(後編)/ 鑑定結果をバグらせる方法
【カラ・カラ・カラ・カラ】
ネスメが、そういいながら、俺の首輪に巻き付いていた鎖を引っ張る。
すると、鎖の端が木から外れているのが直ぐに分かった。
「君のを外すのは、お名残惜しい気もしますが……
デコナメの姉御。
そこら辺に落ちてる釘とかを材料に、錬金術で皆の首輪を外す為の鍵を、サクッと作って貰えたりしない?」
「はぁ…… 犯罪奴隷は、脱走が出来ない契約を魔術で結ばれてる。無理よ。」
女帝が呆れた顔でメスネに話す。
「デコナメの姉御ともあろう御方が、気がつけておられないとは情けないですのぉ~。
ここに置いてかれる時に奴隷契約は、こっそり解消されちゃってるわよ。
理由はね。
カラヨ様みたいに取り殺されちゃった人と奴隷契約を結んでるとねぇ~。
ごく稀にだけど、リッチさんや、悪霊その縁を辿って、奴隷の主の元へやって来る事があるからなのよねぇ……
まっ。嘘だと思うなら、左手の甲を見て見なされ。
あら不思議。奴隷紋が消えてるでございます。ですわよ。」
ネスメは、そう言いながら、カラカラと笑う。
「本当だ。怖い娘だねぇ……
もしかしてだけどさぁ……
こうなる事を見越して、性欲モンスターのゼンムゲの前で、キョアザム君を手篭めにして、
発情したゼンムゲに、アタシを襲わせるように仕向けたのかい?」
「ククク。
流石は、デコナメの姉御。鋭いですなぁ……
ギルドの追跡部隊と警備隊の追跡を数年に渡ってかわしながら、大金を稼ぎ続けた稀代の若き天才詐欺師君に、
表の世界と裏の世界を知り尽くした2人の用心棒。
逃亡犯を目指す者としては……是非ともご一緒したい。って思うのが人の常でしょ~。
因みにだけど……
稀代の天才詐欺師君が、顔と身体だけじゃなくて、性癖までもが、アタシのドストライクだったってのは、嬉しい誤算だったわぁ~。
まぁ……流石のアタシでも、全てを見通す事は出来ない。って事なのよねぇ……
って……全てを見通せるのなら、そもそも犯罪奴隷んかに落とされてませぬな。
こりゃあ……失敬。失敬。」
ネスメは、そう言いながら、カラカラと笑う。
「皆の首輪を外すのは良いけどさぁ……
その後、どうするつもりだい?」
「それは……
アタシの守備範囲外ですな。」
そう言いながら、ネスメが俺をジッと見つめてくる。
◇◇◇
「取り合えず、この林道を東に移動して、立ち入り制限のエリア外に出ましょう。
その後、モンスターを捕まえて使役して、全員の鑑定される結果を良い感じにバグらせます。
でっ。それが済み次第、テチス山脈に入り、取り敢えず、アマズトモエ連邦へ向かいましょう。
そんでもって、その先の事は……追々、考える事にしましょう。」
「待て待て待て。
鑑定結果のバグ。ってなんだ?
意味が分からん。」
「アタシも初耳。
ってかぁ……そもそもバグ。ってのは何さね。」
ゼンムゲと女帝が不思議そうな顔をする。
そう言えば……
バグ。って概念は、前世の異世界の知識だったな。
「理由は分かりませんが、
契約の魔術を使って、自分が使役しているモンスターの下僕になると、鑑定結果がおかしな事になるんです。
もう少し、具体的に言うと……
自分が使役しているモンスターの下僕である事が鑑定された結果からは読み取れなくなるだけでなく、
名前。年齢。性別。種族。受けているジョブ補正。犯罪歴の有無などの一部が、本来の自分の経歴と全く違うようになるんです。
でっ。その特性を生かして、別人になりすます事が出来るのです。
ただ……1つ問題があってですね。
どの経歴が変わるかについてはランダムで変わるんです。
なので、鑑定された時に偽装したい自分と出会うまで、下僕契約と下僕契約の破棄を何度も行わないといけないのです。」
「お前さんを捕まえるのに難儀した理由は分かった。
だが……そもそも、何故、そんな事をしようと思ったんだ?」
ゼンムゲが眉間に皺をよせながら聞いてくる。
◇◇◇
「ニンムシュ様達が、既に3度ほど、異世界人を召喚しておられる。っていう噂を聞いた事はありますよね?
でっ、その異世界人の住む世界では、
自分が、飼っている(ティム)している猫の主であると同時に、
自分が、飼っている(ティム)している猫の下僕でもある。
っていう噂を聞いたのです。
それを聞いた俺は、その世界の住人は、どんな気持ちで猫を使役しているのか。って、気になりましてですね……
そこで、俺は、当時、使役していた魔猫と、
下僕契約を解除するか否かについては下僕に決定権がある。という特約を付けた下僕契約を契約の魔術を使って、当時、使役していた魔猫と結んでみたんです。
でっ。その時に……この奇妙な現象を発見したのです。」
俺はゼンムゲの質問に異世界人の情報の出所だけ嘘をついて答えた。
「ブヒヒヒヒ。君さぁ……
アタシが言うのもなんだけど……頭のネジを何本か、お母様のお腹の中に忘れてきたんじゃなぁい?」
ネスメが手を叩きながら大笑いしている。
■■■
「立ち入り制限のエリアの外に出た事だし、雪洞でも作って交代で仮眠を取るか。」
「そうだね。
雪洞作り、手伝わせて貰うよ。」
ゼンムゲの言葉に女帝が頷く。
正確な時間は分からんが、太陽の傾きから察するに昼頃だと思われる。
もう少し、立ち入り制限のエリアから離れた場所まで移動をしたいのだが……体力的に厳しいのも事実だ。
「蒔きも、食糧も、今晩で尽きちゃうんだよねぇ……
明日からは、薪を拾ったり、食糧を探しながら移動するんでしょぉ?
体力……持ってくれるかのう……」
ネスメが弱気な発言をする。
「何を弱気になってんだい。
やるしかないんだよ。」
女帝が、そう言いながら、ネスメの頭を軽く叩く。
「だよねぇ……」
ネスメが、頭を擦りながら、俺の隣に腰を下ろす。
「あ~。汗でベトベト。着替えたい。
って……何よ? アタシ……そんなに汗臭い?」
ジト目で、ネスメが俺を見てくる。
汗だくのネスメは、甘い匂いを放っている。
「いや。
寧ろ……甘くて良い匂いがしてるよ。」
「ド変態さんでしたか。
嗅げ。嗅げ。い~っぱい嗅げ。
そして、ア・タ・シ・で、ハァハァ。言ってれば良いわ。」
ネスメが、そう言いながら、俺の肩にもたれ掛かってきた。
■■■
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
【パチ・パチ・パチ】・【パチ・パチ・パチ】
薪の爆る音が聞こえる。
ゼンムゲと女帝の作り上げた雪洞は、俺の感覚だと雪洞というよりも『かまくら』だな。
外は漆黒の闇に包まれ始めている。
皆で濡れた服を乾かす為に裸になり、凍死しない為にくっつきあう事にしたのだが、
ゼンムゲが女帝に襲いかかり、女帝がそれを受け入れた。
俺もネスメも、最初は、その光景を、だだ眺めていたのだが……
そして、現在、ゼンムゲと女帝は体力の限界を越えたのか爆睡中だ。
ただ、そんな2人に文句は言えない。
何故なら、俺とネスメは雪洞作りに参加せず、休ませて貰っていたからだ。
「う~ん。ヤバ。」
「見張りは俺がするから、お前も寝て良いぞ。」
「有り難う。」
ネスメは俺の頬に軽く口づけをすると囁くような声でお礼を言ってきた。
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