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第333話 小さな剣と思い22

 俺は目を覚ます。

 いつもの部屋、いつものベッドで目を覚ます。そうすれば、今までの出来事を夢にすることが出来たんだろうが――


「知らない部屋だな」


 ここは見た事のない部屋だった。

 かなりシンプルな作りで、日本の和風建築に似たような壁床となっている。

 こんな作りになっている建物はこの世界では道場でしか見た事がない。なので、俺は物珍しさにキョロキョロと見渡してしまう。


 体を見てみる。すると、以前と同じく体はぐるぐると包帯だらけで、左足は骨折によって固定され、右腕も骨折によって固定されている。

 まぁ、生き抜ける中ではかなり酷い方の怪我だったんだろう。なにせ、あれほどの攻撃を受けたのだ。それも仕方が無いだろう。

 それに、最後に無理したのも効いたんじゃないだろうか。


 とりあえず俺は体を起こしてみる。

 すると、ベッドの影に俺の剣である紫翠が立てかけられているのを見つける。

 そして、その近くには俺の来ていたローブだ


 幸いにも今回戦った敵が体に切り傷を入れてくる敵ではなかったので血で染ってはいないが、その代わり砂埃でかなり汚れてしまっている。


 とりあえず、ここがどこなのかを確認するのが先だ。

 そう思って俺はベッドの隣にあった窓を開けて外を確認してみることにする。

 すると、俺はその景色を見てびっくりした。なにせ、ここは見覚えがあるどころの話ではなかった。


 視点が違うので少しわかりにくいところはあるが、間違いない。ここは獣人の里、アスタンガだ。

 その中のどこかの家の中のようだ。


 しかし、どうして俺はこんな所にいるんだろうか。確か俺はレオンと戦っていて、でもって確か気を失ってしまったんだったよな。

 確かレオンはユキが倒してくれたはずだが――そのあとどうしたのだろうか。もしかして俺をゆきたちが運んでくれたのか?


 その時、急に部屋の扉が開いた。

 俺は驚いて弾かれるように扉の方向を見る。


「ヒロト……」

「ユキ?」


 俺の部屋に入ってきたのはユキだった。

 しかし、そのユキはいつもと違う雰囲気で、何やら可愛い服を着ている。日本ではゴスロリ服とか言うのだろう。

 その服はユキの幼い感じにとても似合っていて、可愛い。


「良かった……目を覚ました」


 ホッと安堵の声を漏らすとユキはゆっくりとこっちの方へ歩いてくる。そして、俺の寝ていたベッドの隣にイスを持ってくるとその椅子に座った。


「おはよう、ヒロト。よく眠れた?」

「あぁ、おはよう。ここはどこだ?」

「ここ? ここは私の実家」


 ユキの実家?

 そういえばユキはこの里の出身だからこの里に実家があるんだっけか。

 その実家というわけか。つまり、ユキは前まではこの家に住んでいたのか。


「そしてここが私の部屋」

「ユキの?」


 どうやらユキは追い出されたが、家具などは捨てられずに取っておいて貰えたらしい。

 内装は確かに和風と言えば和風だが、どことなく女の子らしい可愛いらしい。


「ところでみんなは?」

「ジュマイさんが死んでしまったこと以外はみんな無事。今は買い出しに行ってもらっている。これからお昼ご飯を作らなくてはいけないから」


 そうか、もう昼なのか。

 どうやら俺はかなりの長い間眠ってしまっていたらしい。戦いの疲れもあるだろうが、かなりのダメージをおってしまったせいで気を失ってしまったからな。

 しかし、犠牲者が出てしまったのは悔しいが、せめてカナタ達だけでも無事でよかった。命を張ってでも守ってくれたジュマイさんには感謝してもしきれない。


 そして、あの人はもう死んでしまっている。もう感謝の言葉を伝えることは出来ない。


「悔しいな。もっと完璧に勝利をつかみたかったんだが、無様だ――」

「そんな事ない!」


 ユキは食い気味に言ってきた。

 俺はその勢いに少し驚いてしまう。気がつけばユキは俺にぐいっと顔を近づけて来ていた。


「そんな事ないよ! 私にとってヒロトはかっこよかった。私のためにこんなに頑張ってくれるなんて……」


 そこでユキは感情が抑えられなくなってしまったのか、涙を流し始める。

 そんなユキを見て俺はうろたえてしまっった。

 女の子を泣かせてしまったという罪悪感に駆られてしまう。


 こういう場合、どうしたらいいのだろうか。そんなことを考えているとユキは更に続ける。


「私ね、本当にヒロトの事が好きなんだよ。初めてあった時は好奇心だった。もしかしたら私の事を使ってくれるんじゃないかって、だって、あなたからは剣の匂いがしたから。だけど、それ以上の事を求めてはいけない。助けてなんて、口が裂けても言えないと思っていたの。だけど、ヒロトは私が何も言わなくても助けてくれた」

「そりゃ……な」


 大切な仲間だし、パートナーなんだから、これくらいのことは当然だ。


「だけど、みんなができることでもないと思う。ヒロトだから、出来たんじゃ無いかな」

「ユキ……」

「だから、私は普段素っ気ない感じを取っているけど、本当は一番の仲間思いのあなたが大好きです」


 そこまで言うと、ユキは俺の首に抱きついてくる。

 俺はいきなりのことに思考が追いつかず、呆然としてしまった。


「もしかしたらヒロトは獣人の私を好きになって貰えないかもしれない。だから、これで最後でいい。私の思い、受け取って」


 そして俺の唇に柔らかい何かがくっついてきた。

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