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第332話 小さな剣と思い21

「ゆ、ユキ」


 俺は弾かれるようにユキの方向を見る。すると、ユキは俺の剣を持って勇ましくそこに立っていた。

 おそらくこの事象を引き起こしたのはユキだ。そして、この魔法は多分だがロックだろう。先からレオンの鬣が風によって靡いているので空間固定じゃないはずだ。


「ヒロト、ごめんね。遅くなって……これは一気に二人までしかかけることが出来ないから、このタイミングを狙うしかなかったんだよね」


 確かに二人しかかけることが出来ないならば、俺が二人を減らしたこのタイミングがベストとなるだろう。しかし、俺がこのタイミングで二人を倒すとは限らないだろうに……なにせ俺はさっきまで満身創痍でやられっぱなしだったんだから。


「信用しているから」

「……そうかよ」


 仲間に信用していると言われると少し照れくさい。

 つまり、ユキは俺がこのタイミングで残り二人になるまで減らしてくれると信じたのか。

 あの状態を見てこの状況を信じるのは並大抵の信用じゃ足りない。恐らく、それほど絶大的に俺の事を信用してくれたのだろう。


「く、貴様……ユキっ!」


 レオンはユキの事を憎らしそうに睨みつける。しかし、一歩も動けないレオンなど全く怖くない。

 ユキは俺の剣を引き釣りながらゆっくりとレオンの本体へと近づいていく。それを見てレオンもやっと状況がわかったのだろう。


 先程まで有利にいたのだが、このユキの機転によって俺たちの状況は全くの真逆。今度はレオンが最大のピンチになったことに。


「里長。私は追い出されたことを全く恨んでいません」


 突然語り出すユキ。その声はかなり神妙な様子なので、自然に集中して聞いてしまう。


「確かに追い出されたことはトラウマで、死戦の家にいた時は塞ぎ込んでしまったけど、お陰でヒロトに出逢えた」


 その言葉を聞いて俺はユキと出逢った時の事を思い出す。

 約一年たった今でも、あの時の事は鮮明に思い出すことができる。確かサキとスイに休めと言われて、休むために自室に戻ると俺のベッドでこいつが寝ていたんだっけか。その時も寝相のせいで服を脱いでいたっけか。


「ヒロトと出逢って色々なことを経験したよ。この里に籠っていたら絶対に経験できなかったようなことを……だから私は里長に少しだけ感謝しているんだ。ヒロトに巡り合わせてくれてありがとう。お陰で最高のパートナーを見つけたよ」


 そこまで言うとユキは超手で剣を構え始めた。

 少し重いのか腕が震えている。だが、その立ち振る舞いは戦士そのものだった。

 そして、その状態で続ける。


「私ね、パートナーとか言って貰えて嬉しいけど、私は嫌なんだ。パートナーって」


 え、それってどういう――

 一瞬、俺のパートナーが嫌なのかと落ち込みかけたが、その次の言葉のインパクトのせいでそのショックが一瞬で掻き消えた。


「私、ヒロトの事が好き」


 俺はその告白に声も出なかった。おそらくユキはこんな時に軽い言葉を言うようなお調子者じゃないはずだ。となるとこれは――


「私はヒロトが好き。だから殺してもらったら困る。そして、里長はこの里に害を与えていると思う。この里にも人間と仲良くしたいと思っている獣人もいる。鎖国制度はその獣人たちの肩身を狭くする。だから――」

「ぐっ!」


 そこで、ユキはレオンの胸に剣を突き刺した。

 レオンは一瞬だけ苦痛に満ちた表情をしたが、それも一瞬だった。直ぐに生気が無くなったように力なく倒れ込んだ。

 それと同時に周囲に居た分身たちが消えていく。どうやら本当に絶命したようだ。


 ユキがレオンに勝ったのだ。


 そして、倒れたレオンを見てユキは呟く。


「私は人間が好きだよ。なんで、そんなに人間を嫌っているのかは分からないけど、でも人間はあなたが思っているよりは悪くないと思うよ」


 これでレオンの一件は終わった。まぁ、今回の依頼である貿易の件はどうなるのかは分からないけど、これにて一件落着だ。


 そこへ少し遅れてカナタとユユが入ってくる。


「二人とも!」

「大丈夫ですか!?」


 そして、二人はボロボロの俺を見て血相を変えて駆け寄ってきた。

 まぁ、多分このくらいの傷ならばヒールをかけなくとも死ぬことは無いだろうもう少しくらっていたらわからなかったが……。


「大丈夫だ。こっちは片付いたよ。そっちも大丈夫だったようだな」

「実は……」


 そんな二人はかなり暗い表情をしている。その表情を見て俺はだいたい何があったのかを察した。まぁ、多方何か良くない出来事があったのだろう。

 あの二人の表情を見ているとカラタさんが死んでしまった時の事を思い出す。あの時も二人はこんな表情をしていた。


「実はジュマイさんが私たちを敵の攻撃から庇って……死んでしまいました」

「そうか……」


 ジュマイさんが死んでしまった。あの人とはあまり関わりがなかったため、カナタさんほどの悲しさは無いが、それでも人が死ぬのは悲しい。

 今回も嫌な予感がしたが、どうやらその予感は最悪の形で当たってしまったらしい。


「そう言えばジュマイさんとハルトは共に行動していたはずだが……ハルトはどうした?」

「ハルトさんなら、敵の攻撃を受けてかなりのダメージを負ってしまったので安全なところで休ませています」


 そうか。ハルトもかなりのダメージを負ってしまったのか……。

 はは、男性陣のダメージ量がすごいな。でも、ハルトとジュマイさんはかっこいいダメージのくらい方だったんだろうな。俺はこんなダサいことになってしまったが……。


「さて、終わったことだしこの屋敷にいる必要は無いかな」


 そうして俺は立ち上がろうとする。すると、体に激痛が走る。

 そう言えば俺は立ち上がれないくらいのダメージを負っていたんだったな。

 そう思い出すのと同時に俺は気を失ってしまった。

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