第225話 過去と現在、そして未来へ1
「はぁ……」
ここはアルケニア王国、そのアルケニア城下町。そこで一人の少女はため息をついた。
そんな少女を見て周りに居た少女、と言うよりも幼女な見た目の女の子は心配して声をかけた。
「カナタさん……最近はため息をよく着いていますね」
「ユユちゃん……。そうだね……私は最近、ため息ばかりかも……。もうヒロを召喚してから一年が経つのかと思うと、今までのヒロとの思い出がよみがえってきてね」
カナタはヒロの事を思い出してはため息を着く。もう会えないのかと思うほどため息の長さは長くなる。それほどヒロとの時間は大切なものだったのだ。
裕斗と別れて三ヶ月くらいは凹んで部屋の外にも出ようとせずに周りのみんなは説得に苦労したものだ、主にユユがだが。
そして今ではやっと外に出るようになったが、今回のように度々ため息を着く。その事がユユは心配でならなかった。
裕斗と会えなくて辛いのは自分も同じだが、カナタは裕斗を召喚した魔法使い。それが辛くないはずがない。召喚したその日からずっと一緒だったのだから思い出としてはカナタの方が多いはずと我慢してカナタを元気づける道を選んだのだ。
しかし、一向に元気にならないカナタをどう元気づけようかと悩んでいるユユのもとにこんな情報が舞い込んできた。
『夏期剣魔法王者決定戦開催』
その情報を手に入れてもうこれしかないと思ったユユは早速カナタに伝えた。
「剣魔法王者決定戦ねぇ……」
「気晴らしにでも見に行きましょう?」
そんな提案をされたカナタだが、今は気乗りしないのも事実だ。しかし、ユユに心配をかけた挙句、折角の好意を無碍に出来るほどカナタは落ちこぼれちゃいなかった。
「そうね。気晴らしにはいいかも」
「じゃあ、行きましょう!」
「日付と場所は?」
そう聞かれてユユはメモ帳を取りだした。最近はカナタを元気づけるために必死になっていた。そんなユユに抜け目などなく、チラシこそないものの、メモを取っておいたのだ。
「日付は今から一週間後ですね。場所はパスタガ王国の近くにある小さな集落です」
「分かった。ありがとうね、気遣ってくれて」
「いえいえ」
こうしてカナタとユユは剣魔法王者決定戦を見に行くことになった。
☆☆☆☆☆
時は少し遡る。
早速俺はギルドを後にすると闘技場で特訓をし始めた。するとその日の夜にここを拠点としなさいと言われたので最初は渋ったものの、結局お世話になることにした。
それからずっと特訓漬けの日々を送り始めた。
何だかみんなには心配されたが、俺はずっと特訓することにしたのだ。そんな事をずっとやっていたらついにはハバロンさんにも止められてしまったが、それくらいで修行を辞める俺じゃなかった。
そんなこんなで修行をしていたらもう三ヶ月も過ぎていた。
最初の方はもう少し休むように言ってきていたハバロンさんも今では俺に剣を鬼教官並の指導をしてくれている。これはありがたい。
階段に関しても最初の一ヶ月は全然登れなかったが、次の二ヶ月目ではジャンプで半分まで登れるようになり、そして今では下から上まで全てジャンプで登れるようになった。
なので今では闘技場の行き来では全く苦労していない。
そして回転案山子斬りでは一分もあれば終えることが出来るようになっていた。この三ヶ月で俺は相当鍛えることが出来たようだ。
今俺は冒険者活動そっちのけで鍛錬をしていたのだが、みんなは冒険者活動に勤しんでいて、もうみんなはもうランクが上がってマイはBランクになり、他のみんなはCランクになったようだ。またみんなに置いていかれてしまったな。
冒険者活動はしていないが、クラン『HOPE』のクランマスターをやっている身、あんまりランクが低いのもダメだよな。マスターが低いとみんなが変な目で見られてしまうかもしれない。
でもそれもあと一ヶ月の辛抱だ。次のクラン戦で余裕の勝利をすれば俺は昇格、クランランクも上がる。
そのためのラストスパートとして今は仕上げの鍛錬をしている。
「うむ。これで最後の技となる」
「本当ですか?」
「ああ、これでお前に教える技は何もない。しかし、よくこの三ヶ月ぽっちで習得しやがったな。禄に休んでないだろう」
「は、はい」
実は毎日の睡眠時間は一時間、それ以外はずっと鍛錬の日々を過ごしていたのだ。なのでユキに一回見付かって「もっと休んで!」と布団に押し込まれたことがあるのだ。しかし、その言い付けは守らずに、こっそりと鍛錬していた時もあった。
でも結局ハバロンさんには勝てなかった。ハバロンさんは剣士の中では一番強いと俺は思っている。
そしてこの三ヶ月で強くなっているのは俺だけではないだろう。
後一ヶ月でクラン戦。部屋で筋トレの追い込みをかけている時、そんな時にスイがこんなバカげたことを提案してきた。
「さて、今年の剣魔法王者決定戦を見に行こう!」
こんな時にこいつは緊張感が無さすぎる。だいたいなんで俺まで誘うんだよ。
「嫌だ」
ここはキッパリと断った。曖昧な返事をするとこいつらはしつこくなるって分かっているからな。でも今日だけは何故か直ぐに引き下がらなかった。
「最近はいいと思ってましたがここで気まぐれ発動ですか?」
「気まぐれって言うかさ、俺はアルケニアに狙われている訳。そんな俺がさ、活発に行動しているのは良くないんだよ」
元々バスタガに来たのも修行のためではなく国外逃亡のためだ。そんな俺が活発にしているのも良くないだろう。それを言ったらクランもなんだけどな……。
「問答無用。どうせヒロトなら簡単に逃げられるでしょ?」
どうやら日時は一週間後、場所はバスタガ王国のすぐ近くにある集落らしい。
この一週間で俺はスイとサキから逃げ出さなくてはならない。何せ強制連行だからだ。
こうして俺はサキスイ逃亡計画を練り始めた。




