第217話 WARNING『前編』
一先ず冒険者登録を済ませたのでなにかクエストを受けてみようと掲示板を見ている。
俺は異世界言語は読めないので翻訳魔法を使って読んでみる。
『ゴブリン討伐。北の森にある薬草を採りに行きたいのですが、その森にゴブリンが巣を作ってしまって取りに行けません。討伐してくださった方にはマナポーション、金貨1枚を報酬としてお渡しします。クエスト難易度D』
ギリギリ受けられないか……。
一応俺らのランクはEなので受けることが出来ない。何せクエストは自分のランクまでしか基本的に受けさせてくれないからだ。
俺らのランクEのものも確かにあるが、内容が採取クエストだったり、お使いクエストなので俺らお得意の討伐クエストはない。
クランクエストに関してもそうだ。Eランクなんて討伐クエストすら受けさせて貰えない。討伐クエストの方が簡単そうなんだけどな。
そんな感じで俺が悩んでいたその時だった。急に背後から話しかけられる。
「おう、お前は新人か?」
「そうですが……」
少し面倒だと感じだ。この街の冒険者の気性はだいぶ荒いらしい。この男は如何にも俺にちょっかいをかけに来たって感じの雰囲気を醸し出している。
そんな人物に対して真面目に答えようとは思えない。
「そうか、新人かよ。ならよ、先輩にはあの女は一人くらい渡すべきなんじゃないか?」
ほらきた面倒な輩。
どうやら後輩があんなに女の子を連れて歩いていることが気に食わなかったらしい。でもみんな俺の大切な仲間だ、誰一人として渡す気は無い。
「どうして渡さないといけないんだ? せ、ん、ぱ、い」
「このガキ!」
怒りのツボが浅すぎる。この程度の言葉に怒っていたんじゃ小物レベルでしか無いな。適当にあしらうか。
男は怒って俺に殴りかかってくる。その一撃はとても遅く、本気で殴る気あるのかと疑いたくなるようなものだった。これならまだイノシシの方が強かったぞ。あいつらは速かったからな。
でもこんなあくびの出そうな拳で攻撃されたらやる気も削がれるというものだな。とりあえず、
「重力の奇跡『アンチグラビティー』」
グラビティーアーマーを装着する。これでもうこいつからダメージを受けることはなくなっただろう。
こいつの拳の動きを見て俺よりも弱いと確信した。だからこれで負けるはずは無いと確信したのだ。
そしてその通り、俺に男の拳が触れた瞬間――男は自分の顔を殴って気絶してしまった。
どうやらドMの方だったようだ。あんまり関わらない方が良い人だな。って言ってもこの状況を作り出したのは俺なんだけどな。
すると周囲がわっと湧き上がった。
「あいつ、自分の顔を殴って気絶しやがった!」
「自分の顔をまじ殴りするとか頭おかしいんじゃないのか? あー腹痛てぇ」
男が自分で殴って気絶したことをネタに大爆笑。しかし、少し遠くで見ていたサキとスイはやれやれと呆れた様子でこちらを見てきていた。
でもしょうがないだろ? お前らは俺にとって大切な仲間なんだから。
でもこの場に長居するのは嫌だな。あんまり無駄に注目を浴びたくない。そう思った俺は適当なクエストを手に取ってクエストカウンターへと向かった。
「ジャックさん」
カウンターに着くと受付嬢に話しかけられた。でも大体の予想はついていた。どうせあれだろ? あそこで間抜け面をしながら眠っているやつのことに関してだろう?
「あの人はなかなか強いひとで、ギルドとしても手に負えていなかったんですがどうやったんですか?」
え、あの男は実は強いヤツだったのか? あの拳の遅さ的に弱いものだと思っていたけど……ってことはいきなり大変なことをしてしまったのでは? このまま俺がやったと知れ渡ったら俺の平穏が崩れ去る!
「なんか自分で顔を殴りましたよ。ドMだったんじゃないですかね」
「そうなんでしょうか?」
「きっとそうですよ!」
俺の詠唱はこの世界の人たちには俺にとってのこの世界の詠唱みたいに伝わっていないはずだ。だから俺が下手な事を言わない限りバレないはず。
「とりあえずそういうことにしておきます。ではクエストを発注しますのでもう暫くお待ちください」
俺が受けたクエストは『傷薬を作るための薬草が足りなくなってきました。しかし、私は体を壊してしまって採りに行けません。なので薬草を10本程採って来てください。報酬として傷薬、銀貨5枚をお渡しします』という内容だった。
俺は人助けはしたくないからこういうクエストは俺にあっていない。だけどやらないと討伐クエストを受けられるランクにならないので仕方がなくこのクエストにした。
「ではクエストを受注しました。期限は明日までですのでお気をつけて」
「はい」
俺はクエスト用紙を受け取るとみんなものとへ駆け寄る。
そして現在の状況の説明をした後、クエストを受けることにしたことを伝える。
「いいんじゃないでしょうか。最初のクエストにしては不自然な程にポイントが高いですが……」
何やらマイが渋い表情をした。何かを考え込んでいるようだが、クエストを受けること自体は賛成のようなのでなんの問題もないようだ。
「私もいいと思う」
「うん、私も」
「お兄ちゃんが決めたなら私も依存はないよ」
こうして俺たちはバスタガ王国最初のクエストを受けることになった。




