第970話 114日目 関まで1日の町。(行きに来たね。)
関まで1日のファルケ国領主邸がある街の東町に到着。
宿に着いた時はもう日が沈みかけの夕方になっていた。
「ん~・・・何もない。」
武雄が馬を降りて伸びをしながら言う。
「何もない事が一番ですよ。」
マイヤーが苦笑している。
「そうなんですけどね。
明日は関に着いてしまいます。
そろそろ何かあると考えていたんですけどね。」
「そうですね。
何かするなら気が緩みそうなこの時を狙いそうですよね。」
アンダーセンが近寄りながら言って来る。
「所長。宿が取れました。」
ベイノンが報告してくる。
「はい。ご苦労様です。
まぁ。今後も気を抜かずに行動しましょうか。
今日買えるだけの食材の確保と足らない備品を買いに行きましょう。」
「「はい。」」
皆が頷くのだった。
・・
・
武雄とビエラとマイヤーはビエラの服等を買った雑貨屋に来ていた。
「ん?・・・前と店員が変わった?
・・・入れ替えられたのか。」
武雄が軽く店内を見て呟く。
「あ~?」
ビエラが何かを感じたみたいで武雄の腕を引っ張る。
「どうしましたか?」
「あ。あ。」
ビエラが腕を引っ張りながら「こっち。こっち」と先導する。
着いたのはナイフ売り場・・・の片隅にあるアンティークのナイフ置き場。
「あ~!」
ビエラがナイフを指して「タケオ。これ絶対!」というドヤ顔をさせてくる。
武雄は「いや。6歳の外見でナイフを指してその顔はダメでしょう」と素直に思う。
とビエラが指したナイフを見る。
「・・・ナイフは詳しくはないですけど・・・」
武雄はその続きを言えない。
明らかに実用性とは無縁の厳ついと言うか尖っていると言うか・・・そう見た目が痛々しいのだ。
刃渡りは20cm程度の小ぶりなナイフ。
そして片刃のナイフの途中で背中合わせで一回り小さい片刃があり、刃の部分に逆湾曲を3回させ頂点が複数ある。
武雄の感覚では日本刀のように刃の鋭さと長さが切れ味が出すのには必要と考えるのだが・・・刃の長さはないし、薔薇の棘のような物が刃の途中に数か所あるし、中途半端な位置から両刃になってるし・・・
何だろう・・・これを作った製作者に聞いてみたい「何がコンセプトなのですか?」と。
「ビエラ。これが欲しいのですね?」
「あ~?・・・あ!」
ビエラが軽く考えてから頷く。
「なら買いましょうか。」
「はい!ありがとう!」
武雄はビエラがどんどん言葉を覚え始めているのを確認するのだった。
・・
・
ビエラが腰に買ったナイフを装着している。
慣れないのか右半身を見たり左半身を見て確認している。
「うん。問題はなさそうですね。
そういえば前に居た女性は辞めたのですか?」
武雄が何気に聞いてみる。
「いえ・・・契約を終了しまして解放しました。」
「そうなんですね。
では。」
「お買い上げありがとうございます。」
前にも居た男性店員が頭を下げ武雄を見送るのだった。
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武雄とビエラが居ない面々はというと。
武雄抜きで宿で夕飯の準備をしていた。
「所長。遅いですね。
準備も終わっているんですけど。」
「散策ですからね。
また何か面白い物を買ってくるでしょうね。」
「人でなければ良いですね。」
フォレットがボソッと呟く。
「・・・それ言っちゃダメだから。」
「・・・皆考えても言わない事ですけどね。
大丈夫!所長もこれ以上買わないようにさっさとドローレス国を出立したんだし。」
「でも所長。気が向いたら引き取っちゃうし。」
フォレットが目線を下げる。
「キタミザト様に拾われるなら幸運だよね。」
「「「うんうん。」」」
フローラが言うとエンマとニルデとジルダが頷く。
「給金は・・・いくら貰えるんだろうな。」
ジッロが考えながら言う。
「「「・・・」」」
その場の面々が沈黙する。
小隊の面々は言えないし、買われた面々は知らない。
「ぎ・・・銀貨2枚は・・・ほしい。」
エンマが考えながら言う。
「生活費だけなら金貨1枚あれば・・・でも住む場所がわからないし・・・」
ボーナが考えながら言う。
「いくらでも構わないが・・・最低限を我々は貰うし、あとは作物を売って行くしかないだろう。
奴隷身分からの解放だからな。
苦労はあるだろうが何とかするしかないだろう。」
と扉がノックされアンダーセンが答えると武雄達が入って来る。
「戻りましたよ。」
「あ~♪」
「特に何もなかったですね。」
武雄とビエラとマイヤーが食卓を見て空いている席に座る。
「スープは昼間から鍋に入れておいたシイタケ出汁を使ったタマゴスープですね。
あとパンと肉とサラダですか。
うんうん。マヨネーズも作ったのですね。
卵はいくらでしたか。」
「あ。こっちに書きました。」
アンダーセンが紙を渡す。
「買出しの経費ですか・・・卵がドローレス国より少し高いですかね・・・なるほどね。
ん?ワイン?・・・価格的に樽ですか?」
「はい。毎晩の寝酒用のが少なくなったので買い足しておきました。」
「ふむ・・・王都に卸すのはそのままですけど・・・
まだ残りはありませんでしたか?」
「ええ。なので混ぜました。」
「・・・混ぜたのですね。
まぁ飲めるなら良いでしょうか。
試飲は?」
「同じ味のを買いました。
その辺は問題ないです。」
「わかりました。
あとは・・・んー・・・食費以外ないのですか?」
「ええ。消耗品がないんですよね。
まぁ最低値段の物を買った訳ではないので物持ちが良いですね。」
「わかりました。後程お茶でも飲みながら他の事を聞きましょうかね。
では、食べましょう。」
「「頂きます。」」
武雄達が夕飯を食べ始めるのだった。
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