第968話 112日目 芸術を買いに行こう。(楽器店と雑貨屋と。)
武雄達は弦楽器問屋に来ていた。
用件を言うと奥の応接室に通され、そこで待っていたら数人の店員が箱を抱えてやってきた。
「こちらが注文されていたヴァイオリン10挺になります。
あと予備品のみが20セットになります。」
タケオの目の前に長方形のケースが10挺と予備品が治められた箱が2個並べられる。
店員が長方形のケースを1つ開ける。
「中は本体セットと予備品が1セット入っています。
合計金貨11枚になります。」
「はい。わかりました。」
武雄が頷き革袋から金貨を取り出す。
「・・・丁度頂きました。
今、領収書を出しますのでおまちください。」
店員が金貨を数えてから席を立ち退出して行く。
すると。間を置かずに扉がノックされ店長が入って来る。
「キタミザト様。いらっしゃいませ。
ドローレス国はいかがでしたか?」
店長がやって来て武雄達の前に座る。
「いえ・・・普通に買い物をしました。
良い人材にも会えましたので問題はありません。」
「そうですか。よろしかったです。
10挺の納品も終えたようですね。」
「はい。
店員の方が領収書を作りに行っています。」
「そうですか。
さて。先の来店の際に話しをいたしましたが、出店について社内で検討をいたしました。」
「はい。」
「キタミザト様が仰っていた。
標準的な弦楽器は私共ウィリプ連合国側で製作し、アズパール王国では特注品の製作と売られた後の調整、整備と部品売りをする店をまずは出店いたします。」
「はい。
どちらに出店されますか?」
「アズパール王国第2皇子の屋敷がある街にしようかと思っています。」
「はい。」
「・・・キタミザト様。驚かないのですか?」
店長が不思議そうな顔を武雄に向ける。
「いえ特に驚くところはありません。
私が王家に持って行くのは前回言っています。
なのでここから一番近いのはニール殿下領ですからその街で様子を見たいというのもわかります。」
「・・・そうですか。
ですので、現在向こうの不動産に問い合わせをして店探しをしております。
早くても2か月程度かかると思っています。」
「・・・どこの不動産屋に頼みましたか?」
「いえ・・・向こうの状況はわからないので商隊にお願いしていますが。」
「そうですか。
なら私が帰りに寄りますのでそこで不動産屋に直接言いますよ。
そっちの方が良いでしょう。」
「よ・・・よろしいのですか?」
「はい。構いません。
確実に出して貰えるならそのぐらいしますよ。
ですが、私が直接店を見には行きません。
あくまである程度信頼がおけるであろう不動産屋にこちらに物件を紹介するように言っておきます。」
「そちらでも十分に価値があると思います。」
「はい。
では、欲しい店の大きさと家賃等の条件を紙に書いてください。
それを不動産屋に渡しますので。」
「はい!
すぐに用意いたします!
少々お待ちになってください!」
店長が勢いよく席を立って礼をして退出していく。
「・・・所長。安請け合いではないですか?」
マイヤーが心配そうな顔をさせながら武雄に言ってくる。
「平気ですよ。
私はニール殿下に頼・・・聞けば良いんですからね。
『良い不動産屋を教えてください』と。」
「・・・気の毒な不動産屋ですね。」
マイヤーが微妙な顔をさせる。
「まぁ。大丈夫ですよ。」
武雄が楽しそうに言うのだった。
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武雄とは別班はというと。
まず雑貨屋にて皆が思い思いの物を物色している。
「・・・んー・・・これで良いんじゃないか?」
「いや。こっちの方が・・・」
「これも良いぞ。」
ベイノンとブレアとオールストンが絵画を見比べていた。
「こっちの門が書かれている方が良いだろう。」
「いやいや。こっちの城壁側面の城壁から書かれた門も良い物だ。」
「こっちの夜の門も良いぞ。」
3人とも門の絵画を探している。
「えーっと・・・
フォレットさん。確か次は関を通るから少し多めで良いんですよね?」
エンマが干物の棚を見ながら言っている。
干物屋や穀物屋に行けばいいのだが、1つの店でとりあえず賄える物は賄おうという作戦のようだ。
「はい。
町には寄りますが、そこまで多く買えないかもしれないので、なるべく買っておいてください。
足らないなら次は干物屋に行きますよ。
あとパスタやマカロニ・・・ショートパスタも買っておいてください。」
「マカロニですね。わかりました。」
ボーナが答える。
「・・・どっちが通じるのかわからないよ・・・」
フォレットが苦笑する。
「えーっと・・・地図・・・地図・・・」
「あ。アンダーセン。あった。こっちだ。」
アンダーセンとブレアが地図を探していた。
「はいはい。」
アンダーセンとブレアが地図を開いて覗く。
「「・・・」」
2人して黙り込む、そして地図をそっと閉じる。
「さてと・・・外交局に任せるかな。」
「そうだな。」
「良く考えたらこっち方面はうちらの担当じゃないしな。」
「とりあえず買っとくけど。
あとで所長経由で外交局にちゃんとした地図の購入を依頼しような。」
2人とも欲しい地図の購入を諦めるのだった。
「♪」
テーアが本を読んでいた。
「テーア殿何を見つけたのですか?」
エットレが声をかける。
「い・・・いえ!?」
テーアが読みかけの本を本棚に戻そうとする。
「本も1冊くらいなら良いのではないですか?
何の本を?」
ファビオも聞いて来る。
「あ・・・これを。」
「「ん?」」
テーアが2人の前に出したのが、「鮮紅の冒険」と書かれていた。
「・・・いや。この本凄く良くて・・・好きなんです。」
「良いのではないですか?」
「あぁ。問題はないでしょうな。」
2人して真顔でテーアに答える。
「アズパール王国の生きる伝説ですよ!
キタミザト様はエルヴィス領に赴任するんです!
もしかしたら何かの拍子に連れて来てくれるかもしれないし!会えるかもしれないんですよ!
その時本がないとサインが貰えないじゃないですか!」
「・・・うん。わかったから。」
「平気だから。他人の趣味にまで何も言わないから。」
エットレとファビオが温かい目をさせるのだった。
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