第958話 試験。3(本気になったかな?)
「7番!前へ!」
アンダーセンがそう言うと7番が出て来る。
その顔からは武雄を侮ってはいない。
木剣を中段に両手で構える。
「・・・」
武雄は左手を前に軽く出すのは先ほどと同じ、だが右手にある木剣を下に向けたままの状態で対峙する。
「・・・」
「・・・」
武雄も7番も動かない。
「はあ!」
先に動いたのは7番。
中段から上段に振り上げてから武雄に切りかかる。
だが、武雄は左足を軽く一歩前に出し、左手を上げ、振り下ろされる木剣に触れているかのように軌道を左横にズラしていく。
そして右下に構えていた木剣を右足を踏む込むと同時に7番のがら空きの脇・・・正確にはろっ骨目がけて横殴りに打ち込む。
「ぐっ・・・」
そのまま7番は倒れ込むがすぐに起きようとする。
「7番終了。」
アンダーセンが終了を告げると、7番が力を抜き、左脇を抑え前のめりにうずくまる。
バートとフォレットが7番を引きずり元居た場所に戻す。
パナが待っておりケアをかける。
「はぁ・・・次。」
武雄は元居た場所に戻っていくのだった。
「12番!前へ!」
アンダーセンがそう言うと12番が出て来る。
もう既に何やら覚悟を決めた顔をしている。
そして木剣を右手で持っているが、手は太腿の所に持っていており明らかに「突きをします」という体勢だ。
「・・・」
武雄は木剣を逆手で右手に持ち。左手を前に軽く出し左足を前に出しての少し半身に構える。
「せい!」
12番が刺突してくるが・・・やはり武雄は左手で木剣を左に反らす。
更に開いた12番の左脇から右からに向かって切り上げる。
「ガァ!」
「12番終了。」
アンダーセンが終了を告げると、12番が前のめりにうずくまる。
バートとフォレットが12番を引きずり元居た場所に戻す。
パナが待っておりケアをかける。
「・・・マイヤーさん。ショートソード。」
「はい。」
マイヤーがショートソードを武雄から少し離れた場所に置く。
「「「え!?」」」
3人が驚愕の顔をさせる。
一応に「これで終わりじゃないの?」という顔をさせている。
「・・・真剣じゃなかったから・・・真剣だったら負けなかったなんて言い訳されたくもないですしね。
アンダーセンさん。次です。」
「はい。4番前へ!」
アンダーセンがそう言うと4番がよろよろと立ち上がり前に出て来る。
顔はもう敗戦濃厚を覚悟している。
「さて・・・やりましょう。」
武雄が小太刀を鞘かから抜き右手に逆手で持ちながら言うのだった。
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観戦者達の視点。
「・・・圧倒的とはこういうのなんだな・・・」
ドナートが難しい顔をさせている。
「フローラ。フォレットさんが言ったのって・・・控えめだよね?」
「うん・・・人間種では強い方ではなくて、他種族も含めて強い方なんじゃないのかな?」
「・・・どちらにしても・・・あ。腕が斬り付けられた・・・
キタミザト様に襲いかかろうとするならこうなるのね。
料理をされている時は温和なのにね。
あの姿からはこの圧倒的な戦闘は想像はつかないわ。」
ボーナがため息をつく。
「ニルデ。」
「うん。ジルダ。キタミザト様に逆らわないようにしないとね。」
ニルデとジルダが頷きあっている。
「あ~?」
ビエラがマイヤーに顔を向け聞いている。
「マイヤー様。ビエラが参戦したいと言っていますが。」
「・・・最低でも室内と街中では止めてください。
物を壊しては補償が大変です。」
マイヤーがため息をつく。
「あ。」
ビエラが頷く。
「いや。ビエラ。街外なら良いというものではないですし・・・
それに主がビエラに勝てるわけないでしょう?」
「あ?」
「ん~・・・どうなんでしょうか・・・確かに尻尾は防ぎましたが・・・」
ビエラの言葉にミアが悩む。
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3周目に突入中。
「はぁ・・・はぁ・・・」
7番が肩で息をしている。
武雄は息も乱れず半身で構えている。
打ち合ってはいない。ただただ7番がその場の雰囲気に飲まれているだけだった。
上段から斬りに行けば剣を流され隙を作られて斬られる。
打ち合おうとすると間合いを離される。
当たらない少し手前をワザと振り抜いてから斬り上げようとしたら振り抜いた瞬間に懐に入られて斬られた。
フェイントを入れる?・・・入れた所で隙を作るだけのようにも思える。
これでは打つ手がない・・・
これでもファロン家の騎士団長としてやってきた。人間種の兵士に後れを取っているとは思っていない。
相手は人間・・・本当に人間種なのか?・・・突然変異とか?確か隣のエルヴィス家の娘が突然変異で強くなったという話だった。
ならこの人間も・・・だからどうしたというのか・・・突然変異だろうがなかろうが俺より強いというのは確かな事・・・
最初は穏和なだけかと思ったが、素直に目の前の人間が強いと心から認めてしまっている。
奴隷になった事より純粋な武力で俺達を抑えにかかっているのも好感が持てる。
更には先手を俺達に持たせて反撃をしてくる戦闘方法・・・否が応でも実力の差がわかってしまう。
これは参った・・・奴隷になったことは驚きと憤怒と絶望といろいろな感情があったんだが・・・
この主は真っ当なのだろう。この下で働くのだと諦めとやる気が出てきている自分に驚く。
とりあえず・・・一矢を報いたい。
今出せる上段からの最高の一振りをこの人間・・・いや主に叩き込む!
「うおおお!」
俺はこれまでの人生でも上位に入る速さと正確な上段からの振り下ろしを放つのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




