第938話 夕飯後の話し合い。2(診断結果。)
皆が席に付き、武雄の横に座ったパナが再び立つ。
「まずは、エンマ以外は全員1か月前の綺麗な状態に戻しました。」
「そうですか。
診察でわかったことはありますか?」
「治す前の状態としてドナートは両膝の靭帯が危うかったですね。
あの状態でまた戦ったら断裂していたでしょう。
ボーナは外傷よりも内臓が問題でボロボロでした。
あの状態だと血尿とかあったはずです。
ジッロは左上腕の骨にヒビと軽い肉離れで腕の不随。
エンマは腰椎損傷による下半身の不随と無痛覚、左肩の神経の損傷による腕の不随です。
内臓系や消化管の出口周りの筋肉は大丈夫なので排泄の問題はないです。
フローラが左太腿の軽い肉離れと左手首の骨にヒビです。
ニルデは獣人と人間種の混血児と思われます。
ジルダに付いては獣人か混血児かは判断できません。
そして全員栄養が足りていません。」
「ニルデが混血児であるとする理由を言いなさい。」
武雄が質問する。
「はい。
ニルデは基本的に変身が出来ないと言っています。
そして外見は人間種ですが、瞳孔が人間種の物ではありません。
少なくとも私が実体化して今まで一度も人間種で同様な瞳孔を見てはいません。
また犬歯が若干ですが、他の人間種より発達しています。」
「そうですか。わかりました。」
武雄が少し考える。
確かヴィクターから異種族間の子供は能力は両親より劣るが人間種よりかは高いという事を言われましたが、さてどうしたものか。
「・・・マイヤーさん。」
「はい。」
「問題ないですね。」
「ないです。」
武雄とマイヤーが頷く。
「「ないんですか!?」」
小隊の面々が驚く。
「ええ。
出生がどうので私は雇用をしていません。
求める能力があるから雇うんです。
そもそも出生がどうのというなら私が平民で今貴族なんですけどね?」
「それはそうですけども・・・良いのですか?」
ベイノンが聞いて来る。
「平気平気。
ヴィクターの時も問題なかったですし、今回も問題ないですよ。
それにこの子達は私が求める新しいお茶を作れるんです。
私は美味しい物を作れる方に来て貰ったのです。
そこに種族とか年齢は関係はありませんよ。」
「所長が良いと言うなら・・・誰か何か言って来た際には説得してくださいね。」
「説得ね・・・私が雇うと言えば誰も何も言わないと思いますけど。
まぁわかりました。
パナ。健康状態に問題は?」
「先ほども言いましたが栄養が少し足りていません。
ですが、今後の食生活の改善で治ると思います。」
「はい。こちらも問題ない。
ニルデ。ジルダ。美味しい物を食べさせますから一生懸命お仕事しましょうね。」
武雄が優しく言う。
「「はい!頑張ります!」」
ニルデとジルダがやる気を見せる。
「はぁ。可愛い。」
ボーナがため息を漏らす。
「じゃあ。
えーっと・・・ニルデとジルダはベルテ一家に任せます。」
「え?うちですか?」
ドナートが聞いて来る。
「はい。
この2人はタンポポ茶の農業化をします。
どういった作付けをすれば良いのか。どのくらいの収穫を見込めるのか。
タンポポの根を茶にするまでの行程等々しっかりとまとめて事業化をさせないといけません。
たぶん・・・この子達は農業という物はした事ないでしょう。
なら手助けをする者が必要です。
米作りもそうですが、ノウハウの蓄積をしていかないといけません。」
「確かに新しい土地なので畑作りから試行錯誤でしょうが・・・」
「それにいきなり人間種の農家に入れるのもお互いに抵抗があるでしょう。
・・・なら皆が初めて尽くしの方がワイワイ出来そうですからね。
わかりましたか?」
「はい。了解しました。」
ドナートが頷く。
「ボーナお母さん。よろしく。」
「畏まりました。キタミザト様。
ジッロ。エンマ。フローラ。大丈夫ね?」
「「「はい。」」」
「あ・・・そうだ。
ジッロさん。」
「はい。何でしょうか。」
「貴方。アズパール王国の王都で兵士に成る気はありませんか?」
「は!?」
ジッロが驚き顔をさせる。
「キタミザト様。どういった意図でしょうか?」
ドナートが恐々聞いて来る。
「意図としてはですね。
25年後に奴隷契約を解除しますけど、その時にエルフの国に帰還したいと言った場合、私達の方から護衛は付けられません。
なので一家を守る手段が必要です。」
武雄が腕を組みながら言う。
「所長。本音は?」
マイヤーが目線を送りながら聞いてくる。
「3名くらいと思っていました!一気に7名も養えません!
王都の王都守備隊に肩代わりして欲しいです!」
武雄が顔を両手で隠しながら言う。
皆が「まぁそうですよねー」と苦笑している。
「はぁ・・・さっき言った事も強ち嘘ではないですけどね。
何分資金に限りがありまして・・・
米、タンポポ、他の野菜や穀物・・・いろいろ試験的に作付けはして貰う事になるでしょうが、軌道に乗るまで米は数年はかかるでしょうし、タンポポは1、2年でしょうか。他の作物は見当も付きません。
土地や住み家の費用と皆の生活費・・・ん~・・・他の事業が上手く行っても中々皆に行き届くかはね・・・
なので、資金と後々の事を考えて当分はジッロさんは別行動が良いかなぁと。
まぁ。農家がしたいならそれもそれでやり方を考えますけど・・・一家に渡せる費用は変わらないから、1人頭の取り分は下がるかも知れないですね。」
「ジッロ。いってらっしゃい。」
「ジッロが居なくてもなんとかするから。
気兼ねなく出ていって良いよ。」
エンマとフローラが兄を追い出し始める。
「おいおい・・・」
ジッロが妹達の言いぐさに呆れる。
「キタミザト様。それはすぐに決めないといけないのでしょうか?」
ドナートが聞いてくる。
「王都に着くまでですね。
無理にとは言わないので家族で考えてください。」
「わかりました。」
ドナートの始めベルテ一家が頷く。
「さて。じゃあ。今日は寝なさい。
今日は疲れたでしょう。
明日は自分達が使うかもしれない農具や種を見に行って貰いますからね。
英気を養いなさい。」
「はい。おやすみなさい。」
ベルテ一家とニルデとジルダが元気に挨拶をするのだった。
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