第939話 夕飯後の話し合い。3(注意事項。と特殊な家庭環境。)
ベルテ一家とニルデとジルダが出ていった室内にて。
「・・・フォレット。全員の精神面の補助を頼む。」
マイヤーがフォレットに言う。
「了解しました。
パナ殿に協力を頂いてよろしいでしょうか?」
「構いません。
パナ。上手く導きなさい。」
「タケオ。わかりました。
一家もあの子達も受けてきた仕打ちは違うでしょうから一概には導き方は違うでしょう。
フォレット。フローラとエンマはここ数日の体験がぶり返すでしょうし、ニルデ達は養母から引き離された寂しさから精神的に不安定になると思います。」
「問題は失踪や自傷に走ることでしょうか。」
「昔、同様な事件の報告書に書いてありましたね。
対処方法は、えーっと・・・確か話を根気強く聞くしかないとあったと思いますが。」
ベイノンとブレアが考えながら言う。
「まぁ。真っ当な方法ならな。」
マイヤーがそう言ってから武雄を見る。
「聞く以外の方法はもう1つくらいなら私も考えてはいますが・・・今はその手段は取りません。非常手段ですね。
聞き取りによる方法で何とか出来れば良いのですが・・・」
武雄が難しい顔をさせる。
「そうですね。」
マイヤーが頷く。
「心が弱っている時は人は他人を信用しやすく、特に甘言は救いに聞こえるでしょう。
詐欺や裏稼業の者達の常套手段です。
あの7人は当分は言い含められやすい状態ですから注意して見てください。
あと一人には絶対させない事ですね。
知らない人にも付いて行くかもしれませんからね。」
「対策はありますか?」
「特には・・・ただ、そうですね。
ベルテ一家は首輪がある為、『主が呼んでいる』とか『ご主人が命令した』と言って声をかけて来るかもしれません。
ですが、私を『主』『ご主人様』と呼ぶのは私の直属の補佐してくれる部下のみです。
あの7名は『様』付けのみでいきます。
そして私から皆さんをお呼びするのに知らない人間を差し向ける事は基本ありません。
もし呼ばないといけない場合はアンダーセンさん宛に手紙を持って行って貰い、指示を出します。
なのでサインを確認しなさい。
マイヤーさんが書きますから。」
「所長のサインは?」
「書面作成はマイヤーさんにお願いします。
私は長文を書けませんからね。
サインは・・・んー・・・書くなら連署にします。
私単体ではしないとしておきましょうか。」
「普通はしない手ですね。」
「・・・機関のトップが長文が書けないなんてないでしょうからね。
偽装の見破り方としては特殊なんでしょうけど。
まぁそもそも私とマイヤーさんにパナとビエラが居て皆さんの助力を請うというのがないんですけどね。」
武雄が苦笑する。
「まぁ。武力自体が6個小隊か7個小隊分はありそうですよね。」
アーリスが呆れる。
「さらに所長の無限回復があるからなぁ・・・」
オールストンが「あ。これ最強の組み合わせだ」と苦笑する。
「所長たちの方が戦力が高いのはわかっています。
私達は観光と将来の農業に繋がる物を探しに行く・・・調査をしてきます。」
「ええ。その認識で良いです。
あの7人には過去を振り返らせる必要は今はありません。
前を向かせ未来を想像させ、毎日を忙しくさせて気を紛らわせるしか私には出来ません。
そしてフォレットさんが何気ない時に補助をしてくれれば徐々に良くなっていくでしょう。
皆さんも声掛けと補助をよろしく。」
「わかりました。」
武雄の言葉に皆が頷くのだった。
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ドローレス国 領主邸の領主の執務室にて。
「と言うわけでアズパール王国との戦争での戦利品はこのキタミザト殿の引き渡しが良いと思います。」
「エマ。お前が気になる程か。
お前の旦那も領主としての資質はありそうだがそれを蹴ってでも欲しいとは・・・」
「父様が言う資質とは父様の命令に忠実という事でしょう?
良い男であるのは認めています。」
「そういうわけだけでもないんだがな。
あと娯楽がわかる人間かどうかも重要だな。
そこはどうだ?
まぁ。人間突き詰めれば性欲か命のやり取りを見るぐらいしか娯楽はないがな。」
「私達はそれを上手く使い、国民をひいては裏稼業を従わせてはいるわけですけど。」
「そうだな。
我々は代々奴隷市場を切り盛りし領主達に労働力を売り、闘技場で国民に娯楽を提供してきた。
それが今日の繁栄に繋がるし、これからの繁栄の礎になるだろうな。」
「はい。
ですが、私が欲しい理由は少し違います。
そもそもキタミザト殿は奴隷売買の本質がまずわかっている。
さらには国の法律で奴隷を解放するまでの期限が決められた事を最大限生かし使い物にならない剣闘士を憐れみから買い堂々と自身の配下に宛がう機転。
あの奴隷について感情的に否定だけしていたアズパール王国が明確な基準を設け、奴隷を認めたのです。
もしかしたらキタミザト殿が決めさせたかのような・・・いや。キタミザト殿を抑える為に出来たかのようです。」
「なるほどな。
それほどの人物と見るか。
・・・こちらの考えで言えば私に対して奴隷制度の縮小を進言し、納得させたくらいの事だからな。」
「はい。使節団を任される貴族に相応しいと思います。
それと父様。大統領府の将軍が居たそうですが、内通をしているという事でしょうか。」
「違うな。
4年半後の戦は大統領府からの起案だ。まぁアンヘル殿の意向だろうが・・・
そのキタミザトだったか。その者がアズパール王国での内通者なら我らに何かしら言ってくるだろう。
そしてその大統領府の将軍が内通者というのは考えられんしな。
それにエマ達の会談には立ち会わなかったのだろう?
たぶんだが、大統領府の将軍は身分を隠してそのキタミザトに接触したのだろう。
・・・エマの認識が正しいのかもしれないな。
キタミザトか・・・戦争の戦利品としてかどうかは今後の議論をするにしても情報を入手しないといけないか。」
「はい。
私はキタミザト殿を部下にすればこの国の繁栄をより強固にしてくれる人物と見ます。」
「・・・そうか。まずは情報を取るか・・・
そう言えばカファロも居たのだろう?
どうだった?」
「相手にもなりませんでしたね。
売り金額を奴隷を連れてくる前に決めた時は殴ろうかと思いましたが・・・
まぁ結果的にはキタミザト殿は値下げもせずに買って行かれたので良いのでしょうけども。
カファロは組織運営は出来ても実情は出来ない経営者でしかありませんね。」
「・・・人材が居ないな。」
「どこも手薄です。
カプート家に比べれば屋敷の者も騎士団や兵士にも相応の金で雇っていますから質は良いのですが・・・
父様。4年半後に向けて奴隷部隊の創設をするべきでしょう。」
「ふむ・・・また金がかさむが・・・他の国家も奴隷部隊は作り始めるだろうからな。
そこで儲けを出しながら準備をしよう。」
「はい。それがよろしいと思います。」
「まったく。エマ。お前が男だったら良かったのだがな。」
「父様。娘だからこうなれたのです。
息子だと反発していたかもしれません。」
「そうか。さて。私も寝るかな。
おい。8番を呼んでおけ。」
エスタバンが執事に言うと執事が部屋を出て行く。
「あれ?7番までではありませんでしたか?」
「今日8番目が入った。
初物だ。エマの分も来ていたぞ。」
「なるほど。
なら私も初物を頂きましょうか。」
エマが妖艶な顔つきをさせるのだった。
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