第930話 冒険者組合で打ち合わせ。2(これからの事。)
武雄は自分達の組織についてそしてミア達にした約束事の話をしていた。
「つ・・・つまり。キタミザト様はその研究所で所長をすると。そしてここに居る皆さんはバート殿とフォレット殿以外は部下で実行部隊という事なのですね。
そして今回は兵士に向いている奴隷を買って、王都の兵士組織に組み込んでみようという仕事中という事なのですね。」
ドナートが考えながら言う。
「ええ。
買えるかは今探し中ですけどね。
で。貴方達一家なのですけど。
国の法律に従い、25年契約で奴隷契約を解除します。」
「本当ですか!?」
「はい。
で。何をして欲しいかというとですね。
エルフの国では米という穀物があるのですよね?」
「はい。細々とですが作付けしています。
まさか。」
「私が住んでいるアズパール王国のエルヴィス領で米作りをして貰います。」
「それは本当に?戦わなくて良いのですか?」
ボーナが驚きながら聞いて来る。
「はい。国の為に率先して戦う必要はないですね。
まぁ畑を荒らす魔物とか害獣は追い払う必要はあるかもしれませんけどね。」
「それは・・・そうですね。
畑を守らないといけないのはわかります。」
ボーナが頷く。
「安心してください。余程の事がない限り戦えとは言いませんよ。」
「余程の事?」
「大量の魔物が現れたりしたら流石にちょっと手伝って欲しいですね。」
「あ。わかりました。その辺は手伝わせて貰います。」
「ええ。お願いします。
いや。ベルテさん達に会えて良かった。
まさか米を作れる人と出会えるとは運が良いですね。」
「25年間農業をすればよろしいのですか?」
「そうですね。
不慣れな土地で一からですから大儲けは出来ないでしょうけど。
米を作り野菜を作り、いろいろ作って頂いて結構です。
少しの補助は出来るようにはしてあげますけど、基本は作物を売って生計を立てて欲しいですね。
25年後にその後の身の振り方を考えましょう。
私的には出来れば25年後の奴隷契約解除後も居続けてくれると嬉しいのですけどね。
故郷に帰りたいというならエルフの国に申し入れをしても良いです。
残りたいというならその後も住んで頂いて構いません。
ですが、とりあえず今は私の為に米を作ってください。」
「わかりました・・・ですが、種が・・・」
「そこも大丈夫です。
魔王国の隣のエルフの国から輸入する事が決まっています。
あとは作付けして頂いて何かしら定着するような料理を作れれば輸入もしながら作付けも出来るようになると思いますよ。」
「なら。」
「ええ。25年後に帰国されたいなら商隊を通じてになるでしょうね。
繋がりを今作っています。
あとは途切れないようにするだけです。」
「その為には私達が米作りを成功させないといけないのですね?
精一杯作りますが、問題はないのでしょうか。」
「ええ。一生懸命作って頂いて結構ですよ。
一見矛盾をしているように思うかもしれませんけどね。
ベルテさん達ではどんなに頑張っても作物の採れ高に限度があります。
周りの農家もそう新しい作物を作ろうとはしないでしょう。
そうすると根付き始めるまでの補助的な供給源という事と領内での不作時の供給源という2重の意味でエルフの国からは継続的に輸入はしなくてはいけないと考えています。
大丈夫ですよ。お互いに無下にはしないでしょうから。
それにいろいろ作る気でいますからね。輸入量で足りるかなぁ?
はぁ。早く作って欲しいですね。」
「も・・・もう作る料理を考えているのですか!?
私達エルフでさえ持て余している穀物なんですが・・・」
「ふふ。何個か考えていますよ。
エルフの方々はどういった料理を作るのですか?」
武雄が何の気なしに聞く。
「パンと肉と野菜です。
たぶん人間種や他の種族と同じかと思うのですが。」
「・・・米は?」
「小麦と同様に挽いて粉にします。
水を加えて団子にするくらいです。」
「炊かないのですか?」
「炊くとはなんですか?」
武雄の質問にボーナが不思議そうな顔で質問をしてくる。
「えーっと・・・煮るが一番近いんでしょうか。
炊くという行為は米を水で煮込むが近いのでしょうかね。」
武雄が考えながら言う。
「キタミザト様。水で煮込んでも米はすぐに原型を壊してしまって・・・ドロドロになりますし、美味しくないんです。」
「ふむ・・・
他の豆と煮ても煮きれず、かといって米単独で煮込んでも美味しいと思わない。
なら小麦みたいに粉にするしかないと。」
「はい。
小麦のようにパンに出来ないかと試行錯誤は昔はしていたのですが、どうしても膨らまないのです。
それに小麦は冬に蒔いて夏に収穫です。収穫が終われば野菜の栽培に回れるので野菜も作れるのが魅力です。
米は春先に蒔いて秋に収穫ですので・・・冬の間は何も作れません。」
「?・・・冬に作物は作らないのですか?」
武雄が不思議そうな顔をさせて聞いて来る。
「え?冬は作物は育ちませんよ。
冬は家の中でのんびりか。狩りに行くのが普通です。」
ドナートが不思議そうに言う。
「・・・」
武雄は考える。
確か秋口に種をまいて冬に収穫する野菜があったはずだと。
「その辺は少し考えますか。」
武雄は考えながら言う。
「はぁ・・・」
ドナートがあいまいな返事をするに留まるのだった。
「さてと。
じゃあ。宿に戻りましょうかね。」
武雄がそう言うと小隊の面々は頷く。
「あ・・・あの!キタミザト様。
契約をする際に耳打ちして頂いたエンマの件なのですが!」
「・・・明後日まで待ちなさい。」
武雄が目を細めながら言う。
「すぐには難しいのでしょうか?」
「いえ。するのは簡単です。
ですが、今日の今日。今日の明日では怪しまれます。
すみませんが、こちらの事情です。
戦力を相手に教える事は避けます。
大丈夫。治りますよ。
エンマ。少し我慢してくださいね。」
「はい!わかりました!
何卒、よろしくお願いします!」
エンマが頭を下げるのだった。
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