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第900話 101日目 鴨釣り。1(本当のような嘘の経歴。)

武雄とマイヤーはセイジョウ達が居る宿の向かいにある喫茶店の半テラスの部分でお茶をしていた。

「マイヤー・・・あ!」

ビエラがマイヤーにフォークが使えると自慢していた。

「ほほぉ。もうフォークとナイフを使えていますね。

 まだ数日です。

 やはり知識があると後は慣れなんですね。」

「物覚えが早くて良いんですけど。」

「タケオ・・・抱っこ・・・」

自分のお菓子を食べ終わったビエラが両手を上げて武雄に膝上に置けと要求してくる。

「ん~・・・何だか・・・ただの甘えっ子にしか見えないですね。」

武雄はビエラを膝上に置きながら「本当に600年生きているんですかね」と思う。

「はは。

 その容姿だからしょうがないでしょう。

 周りの人間達はそのぐらいの容姿だとそうやっていますからね。

 ビエラ殿もやってみたいのでしょう。」

「そういう物ですかね。

 まぁ何事も体験でしょうか。

 ・・・私にとっては子供の世話が新たな経験ですかね。」

「ははは。良い経験になるでしょう。」

マイヤーが笑いながらうんうん頷く。

とミアがチラッと胸ポケットから頭を出してマイヤーを見てすぐに引っ込む。

「今日は問屋さんでしたか。」

マイヤーがおもむろに利き腕でない方(・・・・・・・)でお茶を飲み始める。

「ええ。頼まれているので住所を貰って来たのは良いんですけど。無事たどり着けるか不安です。」

「まぁしょうがありません。仕事ですし。」

武雄が地図を出して悩み始めるとマイヤーが苦笑する。


武雄の後ろの席に誰かが座る。

「おっちゃん。おひさ。」

ルイ・セイジョウが後ろの席から武雄に振り向きながら武雄に挨拶をする。

バロールはセイジョウの対面の席に座っている。

「!?・・・ん?セイジョウ君?

 指名手配されているのに何しているのですか?」

武雄が勢い良く振り向き、驚き顔をさせながら聞いて来る。

「あはは。おっちゃん。俺は何も悪い事はしてないよ。

 ちょっと建物に侵入したというだけだよ。

 指名手配はされてないよ。」

「ん~・・・??」

武雄が眉間に皺を寄せながら首を傾げる。

「ははは。アズパール王国だと俺どんなになっているの?」

セイジョウがけらけら笑っている。

「追手が付いていると報告されたのですけどね。」

武雄が訝しがりながら言ってくると同時に席を少し離し、椅子面を横に向ける。

武雄は右横にセイジョウが居る形を取り。マイヤーも武雄の正面に行き、左横にセイジョウが居る形を取る。

「そんなに警戒しなくても平気だって何もする気ないよ。」

「主。これ胡散臭いです。」

「全くです。」

ミアとパナが胸ポケットから顔を出す。

「おわ!・・・おっちゃん。何それ?」

セイジョウが指を指す。

「私の妖精と精霊ですよ。

 戦力にならないですが、私の精神安定の為に必要な部下ですね。

 良い子達なんですよ。

 そして。この子。」

「あ!」

ビエラがセイジョウを指さす。

「主。『怪しいやつだ』と言っています。」

「うんうん。怪しいやつですね。」

武雄が頷きながらビエラを撫でる。

「おっちゃん。酷いよ。

 てか、その子奴隷だよね?おっちゃん早速そんな幼女を・・・」

「・・・私を性癖に難があるみたいに言わないでください。

 いろいろあったんですよ。

 ほんと・・・いろいろ。あぁそうそう。セイジョウ君。」

「うん?」

「私は改名しましたから・・・タケオ・エルヴィス・キタミザトと言います。

 以後よろしく。」

「改名?・・・あ。他国だからか。」

「いや。そうではなくて・・・何から話せば・・・

 元々はセイジョウ君から貰った遠くを見える物がありましたよね。」

「スコープだね。」

「そうそう。スコープ。あれを王都で最上位の方々に見て貰ったんですよ。

 で。『珍しい物を集めたり研究したりする部門の長を探しているから丁度良いからなってみたら?』と言われてね。

 『今なら貴族にしてあげる』と言われてほいほい付いて行ったんですよ。

 お金も良かったですしね。

 アズパール王国は太っ腹ですね。」

「おっちゃん・・・少しは疑おうよ・・・」

セイジョウがガックリとする。 

「あと・・・選考の時に『ジョン・ドウと言う名は可哀相だ』とか言った方がいるらしいんだけど、その方が新しい名前をくれたんですよ。

 で。貴族にもなるし、赴任地のエルヴィス家からミドルネームを頂いて完成。

 ちなみに妖精の方は前回のセイジョウ君が来た時には私の胸ポケットには居ました。」

「うん。妖精は良いや。

 おっちゃんの名前を『可哀相』といった人がいるんだね?」

「ええ。・・・誰も反対しなかったらしくてですね。

 『改名して貴族になる』か、『平民のまま』かの選択を迫られたんですよね。

 思う所はありましたけど、待遇は良かったんですよね~。」

「・・・で。貴族になったと。」

「ええ。他の新貴族の方々に紛れ込む形なんですよ。

 で。セイジョウ君と別れて3日後ですかね。

 王城の宝物庫に小さい王女様方が遊びに来てですね。

 私も一緒に入ったのですが、ここで精霊と出会うんです。」

「・・・精霊かぁ。」

セイジョウがバロールを見るとバロールが無言で頷く。

「一斉になったの?」

「小さい王女様と一緒に入った・・・2名の方もなっていましたけどね。」

「んんっ・・・話し過ぎですよ。」

「あ・・・あぁ。ちょっと用を足しに行ってきますかね。」

武雄がマイヤーを見て席を立って行ってしまう。


「・・・実際の所はどうなんですかね?」

セイジョウがマイヤーに聞いて来る。

「はぁ・・・実は研究所は新設なのですけど、一研は鳴り物入りでなったんですが、二研は一研のお飾り感もあるんです。更に赴任する場所は魔王国に面している地域ですし、万が一、失敗した場合一研の方から何を言われるか・・・皆が尻込みしたらしいんです。

 で。名ばかりでも入れてしまおうという話で・・・奇抜な物を手に入れる運がある所長が指名されたんです。

 それに出身が・・・良心の呵責は少ないらしいですよ。

 本人は知らないんですけどね・・・」

マイヤーが憐れみに目線を武雄が向かった先に向ける。

「それって・・・失敗が見込まれているの?」

セイジョウが難しい顔をさせる。

「そうは言われてません。ですが少なくともなり手は居なかったそうです。

 それに結果論を言えば、精霊を付けられたので所長は精霊魔法師という肩書を持てますから上に立つには良かったのでしょう。

 ただ、まぁ・・・精霊殿は戦力にはなりませんし、こちらも名ばかりかもしれませんが・・・」

「難しい立場なんだね。」

「今回の使節団としての仕事(・・・・・・・・・)も所長に回って来たんですけどね。

 人が良いのか・・・二つ返事で受けたんです。

 魔王国と正反対な場所にまで来て・・・奴隷からの兵士登用も試験みたいらしいですが・・・これも失敗が許されないんですよ。」

マイヤーが呆れたように言う。

「良い物が買えると良いですね。」

「ええ。着実に結果を出さないといけないんですよ。

 良く言えば所長は結果を出せば評価も上がり、一目置かれる存在になります。

 そこだけが希望です。」

マイヤー達は武雄が戻って来るのを待つのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここで、ルイ君が「タケオ」「キタミザト」という『懐かしい語感』だろうに反応しないのが、ほんと不思議。 そう言えば鈴音も、最初はそうだったけ・・・・・。 何より、そういう意味でルイ君に『日系の…
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