第899話 100日目 試験小隊での打ち合わせと待ち受ける暇人。
「所長。またあんな事を言って・・・
誰かに目を付けられたらどうするのですか?」
ベイノンが武雄を叱っていた。
「いや・・・だって・・・
疑われるなら堂々としていた方が身の潔白を示すには良いのではないかと。
下手にコソコソするから疑われるのです。」
「それはわかりますけどね。
でも正々堂々と敵国の侵入者と会うと言うのも変ですよ。」
「だって・・・彼とはもう今回で3回目ですよ?
他人行儀しても意味はないですし、それにこちらに行くという事と奴隷を買うというのは伝えてありますから、今回の旅で隠す事は・・・あ。ここに居た。」
武雄が胸ポケットを見て呟く。
「はぁ・・・これはどうした物か・・・」
武雄がちょっと困る。
「まぁミア殿達はなるようにしかなりませんが・・・
所長。偽名でしか彼と話をしていませんよね。
流石にビエラ殿の首輪に所長の名がありますけど、誤魔化しますか?」
「あぁ・・・それも問題ですね。
・・・ふむ。なら偽名の偽名として名前を言いますか。」
「偽名の偽名で本名をですか?」
アンダーセンが聞いて来る。
「ええ。
いつまでもジョン・ドウでは面倒ですし、間違えるかもしれませんからね。
なら先んじて憂いは取っておいた方が良いでしょう。」
「所長。また芝居をするのですか?」
マイヤーがため息をつく。
「ええ。しますよ。
ふふん。やはりこちらから隙を作る事にしましょうか。
彼に面が割れているマイヤーさんは明日は私と行動を。」
「わかりました。」
「アンダーセンさん達は私を尾行でもしますか?」
「んー・・・5名でですか?
まぁ本格的でなくて良いなら問題はないでしょうね。
・・・ならいっその事その侵入者と接触したら私達はバレるように彼を尾行します。
そうすれば面白くなるでしょうね。」
アンダーセンが考えながら言う。
「アンダーセン。無理はするな。
彼らは2名で王城に侵入できる手練れだ。」
マイヤーが注意をする。
「ええ。路地には入りませんよ。
尾行を気付かせたいだけですし、それに向こうが手練れならもう第一情報の尾行にも当然気が付いています。
そこに所長とマイヤー殿が来てそれを尾行している者が居る。
さらには所長を付けていたと思ったら自分達を尾行し始めた。
なかなかに我が国が不安定そうでしょう?」
アンダーセンが悪だくみの顔をさせる。
「・・・アンダーセン小隊長。脱落は許可しません。
今は向こうの庭です。
情報が欲しい輩には罠を仕掛けるのが当たり前。
見るからに甘い情報や欲しそうな情報が目の前に合ったら逃げてください。
正確には私に報告。私も渦中に入ります。
私抜きで勝手に面白・・・危険な事をしてはいけません。」
「・・・うん。所長。楽しんでいますね。
わかりました。見るからに甘い罠があったら所長を呼びに行きます。
どうせ宿はわかっていますから無理をする必要もありません。」
「うん。よろしく。
皆にも言っておきます。
今回は無理はしない。買い物に行くのがお仕事ですからね。
相手の情報を得るのは私達の仕事ではありません。
遊び程度で済ませる事。」
「「了解しました!」」
皆が頷くのだった。
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セイジョウとバロールが宿の部屋でのんびりと夕食をしていた。
「ん~・・・今日も終わりだね。
おっちゃんの気配はしないのかい?」
「まだだな。
もう諦めるか?」
「あと数日はここだね。
報告書で大見え切っちゃったからなぁ・・・」
「慣れない事をするからだ。馬鹿の所業だな。」
「うん。お前いつか折檻してやる。」
「ほほぉ。私を折檻とは笑止千万!
穀潰しが私に適う訳もなし!」
「くぅ・・・むかつく!
はぁ・・・もういい加減飽きたなぁ。」
「ドローレス国の方で待ち受ければ良かったのではないか?」
「・・・良いんだよ!ここで!
・・・明後日には出立しようか?」
提案は小声です。
「それが賢明だな。
ふむ。このワインも悪くないな。」
「ワインが好きな神様かぁ・・・どうなの?」
「逆に酒が嫌いな神は存在しないと思うが・・・いや居たか?
まぁどちらでも良い。
要は酒好きは大いに居るという事だ。
知っている神々は酒乱ばかりで困るわけだがな。」
「うん。わけがわからないね。
はぁ・・・おっちゃん。本当に来るのかなぁ?」
「あの御仁は嘘は言ってはいないようだったがな。
多少は隠し事をしている感はあったが、それは誰しもがそういう物。
そんな事にいちいち気にしている事は意味がない。」
「バロール。お前。本当に悪神なの?
凄く真っ当だよ。」
「・・・一つ訂正なんだがな?」
「うん?」
「悪神。悪神と皆が言っているが、本人達は悪神のつもりはないんだ。
そうあるべきと作られ、人間の欲の体現者達でしかない。」
「欲の塊りか・・・そんな神は人間をどう思う?」
「さて・・・我はどうとも思わん。
皆が好きな事をすれば良い。殺し殺され騙し騙され・・・欲とは無限にある物だ。
領民等に重税をかけて自分の贅沢に使う。自身の為に娘の人生を使う。愛娘が誰かの為に攫われる・・・世の中そんなものだ。」
「神々って・・・悲しいね。」
「特に西欧はな。
善神の為に悪神はいるが・・・我らはお膳立てに過ぎない。
不思議な事だ。
なぜだか屋敷が手薄になる。なぜだか弱点が善神に発覚される。
いかなる欲望を体現しても何故だか敗れるんだ。
この世界は穏和だ。
それにこの地もこの関係も楽で良い。
それにしても盗人をする事になるとは・・・我の人生も不思議な事だ。」
「盗人ではないよ。収集家だよ。」
「金も払わずに他人の家から物を持って来ることは盗人というのが世の習い。
盗人猛々しいわ!」
「おぉう!?良い話で終わりそうだったのを覆したよ!
まぁ良いや。
とりあえずもう少しここに滞在だね。」
セイジョウ達は食事を続けるのだった。
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