第880話 90日目 ウィリプ連合国に向け出立。(王城内の警護も大変だ。)
3時課の鐘(9時)が鳴り終えていた。
王城の城門に武雄達とジェシーとスミスと武官と文官の関係者が集合していた。
「所長、準備終わりました。」
マイヤーが武雄に報告をしてくる。
「はい、ご苦労様です。」
武雄はマイヤー、アンダーセン、ブレア、アーリス、ベイノン、オールストンを順次見る。
「・・・キタミザト殿、よろしくお願いします。」
総長が一歩前に出て武雄に言ってくる。
「はい。
ご指示頂いた条件に見合った人物を探してまいります。」
「はい。
ですが、全ての条件に合っている者は確かに良いですが、キタミザト殿が良いと思う人材なら我々は何も言いません。
条件はあくまで目安としてください。」
「そこまで信用されてしまうと困りますが・・・最善は尽くします。」
武雄と総長が握手する。
「タケオ様、行ってらっしゃい。」
「はい。挙式の準備や家の事等々はお願いします。」
「おまかせを。」
アリスが礼をする。
「タケオ、美味しい物を期待しています。」
「魚の干物で良いのがあれば買ってきますよ。」
アリスの肩に乗るコノハが物欲を発動していた。
「ヴィクター、ジーナ。
これ以降はアリスお嬢様の指示に従いなさい。
研究所の件が一番大きいでしょうが、何を選定しておくのかはアリスお嬢様に伝えてあります。
考えてわからないならエルヴィス家の人を頼りなさい。
意固地にならずにちゃんと頭を下げなさい。
日々勉強です。わかりましたか?」
「「畏まりました。」」
ヴィクターとジーナが恭しく頭を下げる。
「タケオ様、行ってらっしゃいませ。」
「はい。スミス坊ちゃん、すみませんね。
最後まで一緒ではなかったですね。」
「いえ。問題はないですしわかっていた事です。
お気を付けて。」
「はい、ありがとうございます。
スミス坊ちゃんも気を付けて帰ってくださいね。」
「はい。」
武雄とスミスが握手をする。
「タケオさん、ありがとうございました。」
「うん、ジェシーさん、今生の別れではないので過去形は止めてください。
それにこれからいろいろゴドウィン家とは行動しそうな気がします。」
「あら?そう?
まぁその時はこっちに寄ってね。
小さい宴は用意するわよ。」
「その際はポクポク肉をお願いします。」
「ええ、任せてね。
じゃあ気を付けて。」
「はい。」
ジェシーが礼をする。
次はパンニューキス、さらには外交局長等々話をして行くのだった。
・・
・
「出立!」
マイヤーの号令で武雄達7名が出立していくのだった。
その後ろを皆が見守るのだった。
・・・
・・
・
王都の門を出た辺りで。
「さて・・・視察と言う名の慰安旅行でも満喫しに行きますか。」
武雄が呟く。
「・・・所長、初めての仕事が慰安旅行ですか。」
ブレアが苦笑しながら言ってくる。
「ええ・・・だって・・・買い付けだけですからね。
それに『息抜き』の件をニール殿下や陛下に聞いたら『好きにしろ』の了解も貰えましたからね。
結局は道中は走って休んで狩りをして・・・これ研究所の仕事じゃないでしょう?」
「まぁ・・・そうですね。」
アーリスも苦笑しているというより皆が苦笑している。
「さっき総長に『最善は尽くします』と言っていましたけど?」
「あれはその通りですよ。
『買いつけしてこい』という仕事はしっかりとはします。
陛下の命令ですからね。
ですけど・・・表立っては『王都守備隊用の兵士購入』が仕事内容ですけど、個人的には『農業従事者の確保』のついでの仕事ですから条件が合う者を探すだけです。
割と楽な仕事ですよ。」
「うわぁ、それ言って平気なのですか?」
「ふふふ
・・・おっと、違いますね。
王都守備隊の為、国家の将来の為、何としても優秀な人材の確保をしないといけません。
その過程で農業従事者を探せれば良いですね。」
武雄がにこやかに言う。
「うん、所長、弁解しても遅いですね。」
オールストンが呆れて言ってくる。
だが皆は武雄の軽口を聞いて苦笑はしているが「人探しが始まれば守備隊用だろうが農業用だろうが本気でこの人は探し始めるんだろう」と思うのだった。
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王城の一室から。
「・・・行ったか。
全く・・・我に何も言わないで行ったな。」
「しょうがないですよ。
今回は命令での出立というのもありますけど、見送りが前より多くなるとの理由と警備上の問題で王家が立ち会う事は出来ないんですから。
父上が出れる訳もないでしょう。」
アズパール王の呟きにウィリアムが苦笑する。
「あと数日すればクリフ達も領地に移動か。
その後にジェシー達も・・・はぁ・・・また仕事ばかりの日々だな。」
「またと言うか毎日と言うか・・・
で、父上、例の件ですけど。」
「あぁ、何か朗報はあったか?」
「今の所は何も。
情報分隊も警戒して皇子妃達を見ていますが・・・視線はわかっても姿は確認できません。」
「不可思議な事だな。
視線はあっても姿が見えないとは・・・報告を見た限りでは危害は無いのだろう?」
「はい。
それに精霊達も警戒をしています。」
「ん~・・・近くに居るコノハ殿やアル殿でもわからんとは・・・
王家専属魔法師部隊も屋根に上がったりしては見ているのだが、そっちも良い報告はないな。」
「引き続き警戒を続けます。」
「ああ。両方の騎士団が明日には到着する。
今日が皇子妃達が居る中で一番の手薄になるな。
あとは移動中か・・・難しいな。」
「はい。その辺は王都守備隊や第1騎士団も覚悟しているようです。」
「そうか。」
アズパール王とウィリアムがため息を付くのだった。
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