第878話 夕飯。5(第2皇子一家と第3皇子一家の新規事業。)
次はリネットが横に来ていた。
「・・・タケオさん。」
「はい、何でしょうか。」
「大豆事業なんですけど。」
「クリナ殿下がするそうですね。」
「ええ。
クリナがやる気なのでさせるのですけど・・・
どう持って行こうかと思ってですね。
ニールとは相談したんですけど。
ニールは大豆の作付けと大量生産が出来るかの農地問題と料理等での普及を同時にしないと根付かないだろうと言うのです。」
「真っ当ですね。
何を悩んでおいでなのですか?」
「確かに大豆の作付けは1年を通しての計画をするから今から作ってくれる所と交渉するのは大事なのですけど。
私は料理の普及の方が時間がかかるのではないかと思うのです。
教えて貰ったレシピを開放すれば根付くというのはこっちの勝手な都合。
実際は街中でまずは作ってくれる店を探して、少しずつ売らないといけない地道な道のはずです。」
「そうでしょうね。」
リネットの説明に武雄が頷く。
「だけどクリナが目指しているのは早急な普及。
簡単に言えば『こんなに美味しい料理が受け入れられないわけない』という考えから来てるようなのです。」
「あの年ではそういった考えで良いのではないですか?」
「ええ、私もそう思います。
ですが、クリナが現実を見てしまい、住民達から『それは出来ません』と言われてしまった場合にショックを受けるのではないかと思って・・・
タケオさん、何か上手い手はないですかね?」
「・・・参考になるかわかりませんが、私がエルヴィス邸がある街でしたウスターソースの販売経緯を説明します。」
武雄はリネットにベッドフォードとのやり取りや販売方法を説明するのだった。
・・
・
「そうですか・・・店頭で試食をしたのですか。」
「はい。
ウスターソースは主婦層に受けが良さそうでしたからね。
まずは主婦層に狙いをつけてしました
ですが、飲食店からも結果的に引き合いが来たそうです。」
「なるほど。
まずは作って貰う店は探すのは当たり前としてそれをどの客層に売るのかを考えないといけないのですね。
基本なのはわかりますが・・・実際に考えると・・・難しいですね。
主婦層か飲食店か・・・」
リネットが悩む。
「食材を売るならどういった料理が出来るのかも教えないといけないでしょう。
『食材は手に入りました。後はよろしく』と言っても誰も動きません。
『どういった料理が出来るので使ってください』と言っていくしか出来ないでしょう。
クリナ殿下にはゆっくりするしかないと先ほど言っておきました。」
「あ、ありがとうございます。
そうですね。
私達が焦っても仕方ないですね。
着実に根付くように考えて行きます。」
リネットが頷くのだった。
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今度はアルマとレイラとエリカが来ていた。
「タケオさん、さっきはウィリアム達と何の話をしていたの?」
アルマが聞いて来る。
「3都市間の輸送網の話ですよ。」
「ん?あれは将来に持ち越しした案件でしたよね?」
レイラが首を傾げる。
「かかる面倒事が多すぎるという事でしたね。」
エリカも頷く。
「ウィリアム殿下が貴族会議で話して一部の局長が乗り気になったそうですよ。
確か明日の貴族会議の題材になるとか言っていました。
なので少し私がしたい事を話していました。」
「そっか。
まぁその話は後でウィリアムに聞いてみましょうかね。
でね、タケオさん。
今回のレシピなんだけど何とか普及させる・・・第2皇子一家の所との違いを出す方法を教えてくれないかな?」
「ん~・・・違いですか?
各々の料理人が考えるしかないですけど・・・基本的な所は昨日ニール殿下達に教えてしまいましたし食しても貰いました。
基本は鍋や火で炙って食べたりとかでしたね。
それにしても違いですか・・・んー・・・地域的にはニール殿下領は海でウィリアム殿下領は川でしたよね。
テンプル伯爵領から海の食材を入れて同じ物を作れますよね。
レシピはニール殿下領から来るはずだから・・・簡単に考えて味ですかね?」
武雄が考えている。
「ん~・・・早々タケオさんでも品としては出て来ないかぁ・・・
味も教えてくれたら嬉しいかな?」
アルマが苦笑する。
「でね、タケオさん。
私達にその考え付いた調理方法や味を教えてくれないかな?
見返りは卸売市場での割引・・・タケオさんが購入した費用の何割かをうちが持つのでどう?」
レイラが聞いてくる。
「割引ですか・・・うん、良いですね。
じゃあ何か思いついたら・・・あ、2年後でも良いですか?」
「2年後!?具体的な数値が来たわ!?」
レイラが驚く。
「タケオさん、2年後に何があるのですか?」
エリカが聞いてくる。
「ええ、ちょっと考えてはいるのですけど・・・
新しい調味料を」
「「金貨50枚でどうでしょうか!」」
アルマとレイラが即答してくる。
「あ~・・・
これの製造方法はまだ渡しませんよ。それに作ってもいませんから考えないといけない事も多いでしょうし、エルヴィス領の産業にしたいですしね。」
「「あぁぁぁ・・・」」
アルマとレイラがガックリとする。
「ですのでその卸先を卸売市場に限定しても良いですよ。」
「「「!?」」」
アルマとレイラとエリカが驚愕の表情を武雄に向ける。
「私が考えている味なら差別化は出来そうですけど・・・受け入れられるかは一回作らないとわからないですね。
なので将来の担保しか出来ませんけど。
納得のいった物が出来たら領内以外の正規販売は卸売市場を通すというのでどうでしょうか?」
武雄がニッコリと笑う。
「「「ありがとうございます!」」」
卸売市場の展望が明るくなるような話にアルマとレイラが嬉しそうにエリカが幾分ホッとしたような顔で礼を言うのだった。
と武雄がエリカに手紙を渡す。
「・・・まさか・・・」
エリカが手紙と武雄を交互に見る。
「第3弾♪」
「あぁぁぁぁ・・・」
エリカだけは気分が急降下するのだった。
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