第859話 そう言えばあの人達なにしてるの?2(カトランダ帝国は思いのほか何も進まない。)
ここはカトランダ帝国 皇城 大会議室。
カトランダ帝国皇帝と第4皇子チコ、各軍の将軍やその補佐官達、文官等々の幹部が集まって会議を実施中。
「・・・」
「・・・」
会議室には重苦しい空気が蔓延している。
「・・・はぁ・・・で、本当にアズパール王国からのウスターソースの輸入は出来ないのか?」
カトランダ帝国皇帝がため息交じりに第2軍の将軍に言う。
「陛下、先のご訪問で向こうの視察を兼ねており、そこで有益な物を見て来たのだと報告は頂きました。」
「そうだな。
で、ウスターソースはどうだ?あれなら国民の満足度も高くなると思うが?
なぜに拒否をする。」
「・・・陛下。
するにしても見た事もない、リストにも記載がない物をどうやって注文するのですか?
商隊の者には聞きましたが、そういった物を扱った事はないということでした。」
「アズパール王国の王都での話だと最近出来たばかりだという。
確か第1皇子のクリフ領との話だな。
そこまで買いつけに行かせられないのか?」
「陛下・・・これは先代の弊害ではありますが・・・今まで頑なに向こうと商売をしてこなかったのです。
今、やっと少しずつですが交易を始めました。
相手はアシュトン領の商人です。そこの者が扱っていないというのですから、まだそのウスラーソースは手に入らないでしょう。」
「・・・ウスターソースだ。
将軍、あれは画期的なソースだ。我が国で流通が出来れば国民の食生活も改善されよう。
何とか入手出来るように商隊に話をしてくれないか?」
「努力はいたしますが・・・
少し時間を頂けますでしょうか。」
「ふむ・・・早々に決まる事ではないか・・・
だが、出来るだけ早く少量だけでも入手してくれ。我も食べたいのでな。
そしてお前達にも食べさせたい。食が士気に関わるという良い前例になるだろう。」
「はっ!陛下。」
第2軍の将軍が頷く。
「さてと・・・チコの嫁は我が居ない間にどうなった?
候補を絞れと言っておいたのだが。」
「はっ!陛下。
それは私がご説明申し上げます。
視察に行かれている間に6名の候補をチコ殿下も交えて3名まで絞らせて頂いております。」
「ふむ・・・チコは実際に見たか?
我が居ない間に何か催し物をすると言っていたが。」
「はい、父上。
6名とも遠目ではありましたが、人なりを確認させて頂いています。
もちろんその親とも話をしています。」
「そうか。で?どうだ?」
「甲乙つけがたい・・・父上、これからさらに絞るのですか?
どの女性も性格も穏和そうですし、見た目も綺麗でした・・・3名に絞るのも相当苦労しました。
全ての女性たちが魅力的です。どうすれば良いのですか?」
チコが困り顔をする。
「・・・なら、その3人と婚姻するか?」
「「へ・・・陛下!?」」
その場の数人が立ち上がる。
「いや、今回の視察でな。
向こうの第1皇子一家とも話をしたのだが、その時に正室と第1側室の同時挙式の話をしたんだ。」
「ほ・・・ほぉ・・・
それで何と言っておいででしたか?」
「いや『同時挙式だろうと1対1の挙式だろうと挙式の苦労は一緒です。皇子妃内でいざこざが無いよう出来るのならむしろ同時挙式の方が楽なのかも』と言っていてな。
確かに皇子妃達が仲良く過ごせるのなら同時も良いのだと思った。
無理に正室を決め、その後数年で側室をという風にする必要はないのだろう。
チコも含めた家族が仲良く過ごせるのが一番だ。
で、3人同時はどうだ?」
「す・・・少しお時間をください。
私達は正室選びをしておりました・・・同時挙式が可能となると・・・
皇子妃候補達の交友関係ももう一度・・・いや先の6名を含めてもう一度全部確認します。
チコ殿下、すみませんが3名に絞った事は一旦白紙でお願いします。」
説明していた文官が汗をかきながら頭をフル回転させる。
「ええ。
私も心苦しかったのは確かです・・・そうですね。
同時挙式も考えてどなたかを選びましょう。」
「はい!」
「こっちもなかなか進まないか・・・
まぁこちらも出来るだけ早く終わらせないとな。
出来れば来年末までには挙式をしたい。チコが跡目だ。
それを内外に示さないといけない。
皆!よろしく頼むぞ!」
「「はっ!」」
その場の全員が返事をする。
「さてと、東町の方の工場はどうだ?」
「建設に向けての工程に遅れはありません。
量産する予定の武具については今第1軍の備品部門にて精査しております。
こちらも遅延はありません。」
文官が立って返事をする。
「そうか。
自動人形はどうなった?」
「はい、陛下。
当初の企画よりだいぶ違う仕様になってしまうとの連絡があります。
ですが、先に試験運転を実施した際に戦闘に耐えられたという報告書が来ております。
ですので最低限戦闘に耐えうるという仕様は叶えていると考えています。」
「ふむ・・
だが、だいぶ・・・か。」
カトランダ帝国皇帝が顎に手を当てて考える。
「父上、試作品は父上が視察に行かれている間に私が視察をしてきました。」
「どうだった?」
「現状では2名の魔法師を使って起動と操縦をしているようです。
今の課題は魔法師1名による起動と操縦を実現させる事だそうです。」
「ふむ。見た目はどうであった?」
「厳ついですね。装備しているフルプレートと言うか・・・装甲と言っていましたか。
装甲が厚めに出来ているそうで、現状では大規模魔法以外なら倒されないだろうという説明でした。
この装甲を限界まで薄くすれば魔法師を少なく出来るのではないかという事も言っていました。」
「ふむ・・・
試験的な部隊運用もまだ先だな。いつ戦争に投入出来るかは未定か。」
「陛下、そこは我らも注意して見ておきます。
何とか2年後を目途に部隊運用が開始出来るように催促します。」
「そうだな。
だが完璧すぎてもダメだろう。ある程度の妥協をしてでも部隊運用に繋げるようしてくれ。」
「はっ!」
文官が礼をして座る。
「あとは・・・あぁウィリプ連合国との条約締結後の国内動向についてか。
では報告をしてくれ。」
「はっ!」
別の文官が立ち上がり説明を始めるのだった。
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