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第858話 そう言えばあの人達なにしてるの?1(魔王国も平穏そのもの)

ここは魔王国ヴァレーリの書斎。


「・・・奴ら我を殺す気だな。」

ヴァレーリが書類に囲まれた机に突っ伏しながら言う。

「陛下、手を休めない。

 まだまだサインしないといけない書類が溜っていますよ?」

タローマティが机の横に立って催促している。

「・・・そんなの勝手に封蝋を押しといてくれ。」

「そんなの出来るわけないでしょう?」

タローマティが悪神の癖に真面目に仕事をしている。

「・・・なんでお前は真面目なんだ・・・」

「人が嫌がる事をするのが好きなんですよ。」

「おう!おう!言ったな!

 我はサインが好きだ!好きで好きでしょうがないんだ!」

「はい、ではこれも中身を確認してからサインしてくださいね。」

「・・・うぅ・・・国王なんてなるもんじゃないな・・・」

ヴァレーリが半泣きになりながら書類を見始めるのだった。

・・

・

2時間が経過。

「もう嫌だ・・・」

「やっと半分ですね。」

「タローマティ・・・」

「逃げます?」

「に・・・逃げるわけないだろう!?

 ・・・休憩を所望するぞ。」

「ではお茶をお持ちします。」

タローマティが退出していくのをヴァレーリがニヤリとしながら見送るのだった。

・・

・

「ふんふん♪

 米はいつ来るのかなぁ♪ウォルトウィスキーはいつ来るのかなぁ♪大樽にウィスキーを入れて溺れちゃおう♪」

執事服を着た白いトカゲのレバントがシモーナから送られてきた手紙とブリアーニ王国への発注書控えを見ながら機嫌良くしている。

「おば様!通させてください!」

ヴァレーリが店に走り込んでくる。

「良いわよ。裏口は開け」

「流石!お邪魔します!しました!」

ヴァレーリが店奥に消えていく。

「てあるから好きにしていいわよ。」

白トカゲは誰もいない店の入り口を見ながら呟く。

「し・・・失礼します!」

今度はタローマティが息を切らせながらやってくる。

「あ、相方さんは裏口から出」

「ご協力感謝します!」

「て行ったわ。

 ・・・王城大丈夫なのかしら?

 ま、メイド達が遊ぶ暇があるなら平和な証拠か。

 あと2回は来る感じよね。次来たら米のお礼を言わないといけないし、シモーナさんからの手紙も渡さないとね。」

レバントはシモーナからの手紙を用意しはじめる。

「おば様!もう1回通ります!」

ヴァレーリが走りすぎて行くのだった。

・・・

・・

・

「はい、これ。」

レバントがヴァレーリの前にシモーナの手紙を出す。

「・・・読めない。」

ヴァレーリは簀巻きにされて椅子に座らされている。

隣には涼しげな顔でタローマティがお茶を飲んでいた。

「読めないです!タローマティ!」

「あぁ、読まれる気でしたか。」

タローマティがシモーナの手紙を広げヴァレーリに見せる。

簀巻きは解除して貰えません。

「ふむふむ。

 なるほど客先とは順調に行ったんですね。

 あとはカー・・・ブリアーニ王国から米を入手すればとりあえずの作業は終わると。

 おば様手続きは?」

「発注はしたわよ。

 あとは結果を待つだけね。」

「順調ですね。

 王城に酒が入るのはいつになりそうですか?」

「ちょっとダニエラちゃん、もう買う気?」

「新しい物は独占するからこそ価値があるのです。

 というより陛下がお気に召しましたので予備も含めて全数買います!」

「城に何本いれようかなぁ・・・それはもう少し考えさせてね。」

「全数!全数!」

「・・・それにしてもシモーナさん、良くやったわよ。

 当初が120本だったのを国内に220本、ブリアーニ王国向けに30本。計250本のこちらの要求どおりに調達を実現させるんだもの。

 これは何かしてあげないといけないかしら。」

「シモーナさんは確か輸入業でしたか。

 アズパール王国に多くの品物を卸せたら実入りは増えて喜ぶのでしょうね。」

タローマティが考える。

「ん~・・・そうとも言えるけどそうでないとも言えるわ。

 基本は卸し卸されが商売だからね。

 その品の1つが米であり、向こうからはウォルトウィスキーね。

 まぁタローマティさんが言うようにうちから向こうに多くを卸せたら国としては儲かっているんだろうけど。

 私達程度だと実際は物品が売れ残らないのが一番だわ。」

「そうですか。

 物があるだけではいけないのですね。」

タローマティが頷く。

「自分が売り切れる量を見定めるのも良い商売人には必要だし、卸し先の要望を実現させるために仕入れ先とちゃんと折衝が出来るのも良い商売人ね。」

「なら倍の量を仕入れたシモーナさんは良い商売人ですか?」

ヴァレーリが聞いてくる。

「普通はいきなり想定量の倍を用意するのは出来ないわ。

 なら、この量はアズパール王国側が違う用途に使う方から振り分けを替えたのは確かだけど、頑張らせたのはシモーナさんの成果ね。

 だからシモーナさんは良い客先であり、良く動いてくれる仕入れ先を持っている良い商売人となるわ。

 こういった人脈を持っている人とは細々でも良いから繋がり続けないといけないかな。」

「人脈・・・ふむ。」

タローマティが顎に手を当てながら頷く。

「さてと、シモーナさんはこっちの要望を叶えたなら私は何で恩返しをするかな。」

レバントがちょっと短い手を頭の後ろに添え仰け反りながら考える。

「ダニエラちゃん、タローマティさん・・・アズパール王国って・・・違うか、エルヴィス伯爵領って良い土地なのよね?」

「・・・まぁ報告からすれば穀物の生産高はそれほどでもないが、住民は穏和で領主も穏和。

 さらに魔物達異種族も普通に領内にいて、異種族の集落に対しても何もないと言われています。

 攻め入るなら隣のゴドウィン伯爵領にしろと言われていますね。」

「?・・・なぜ隣に?穏和ならそっちを攻めるべきでしょう。」

「民に不平不満が無く、その領主を敬愛している領地に攻め入ると殲滅戦をする羽目になる。

 それに穏和とは裏を返せば感情に任せて命令をせず、熟慮と相談をするという事。

 なら過激な思想やからかいやすい人物を相手に戦争した方がし易いという物です。」

「ふーん・・・そのゴドウィン伯爵はからかいやすいと?」

「こちらも熟慮する方ではありますが、まだ40代と若く熟慮をするにしても焦らせば乗って来る確率は高いと言え、さらに受け持つ兵数も多い為、部下の将兵をまとめるのにも時間がかかると想定されています。

 戦端を開くなら前線の兵をからかい不測の事態を起こすのが良いとされているだけです。

 これが兵数が少ない方のエルヴィス伯爵側だと割と早く対処される恐れがあるのです。」

「ふーん・・・戦争はわからないわ。

 でも穏和かぁ・・・」

「おば様?何かあるの?」

「ブリアーニ王国から品物が届いたらシモーナさんの所に行ってみてエルヴィス伯爵領を見てみようかと思ってね。」

「なんで?」

「ん~・・・これは言っても意味ないけど。

 ほらダニエラちゃん達は陛下が退任されたら居なくなるかもしれないし、次の陛下がうちを商いの相手に選んでくれるかわからないでしょう?

 だからエルヴィス領に行って相手の事を見聞きして向こうの好みを知っておこうかとね。

 前にシモーナさんと話したのよ。これからはこれが生命線になるかもって。

 向こうからはウォルトウィスキーがあるから良いんだけど・・・こっちから何を向こうに売るか考えないといけないとね。」

「ふーん・・・」

ヴァレーリが何も考えていないような顔つきで答える。

「ダニエラちゃんとタローマティさんは陛下が退任したら城に残るの?」

レバントが聞いて来る。

「私達も陛下の退任と同時にお役御免です。」

「へぇ~?その後は?」

「旅に出ます!

 固っ苦しい城内とはさっさと別れて流浪の旅をする計画です!」

ヴァレーリが楽しそうに言う。

「折角陛下の侍女なのに・・・まぁそれも良いかもね。」

レバントが苦笑するのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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