第855話 さぁ。豆腐料理だ!
ここは王城内の小厨房。
武雄達が戻ると第2皇子一家にエイミーも加わってお茶をしていた。
エイミーは「おかえりなさい。」とにこやかに出迎えていた。
で、ニール達にもさっきの話をしており、「どうなるかは後でだな」と結論付けていた。
今は豆乳と苦汁が出来上がり、豆腐を作る段階になっていた。
「おぉ!エイミーお姉様!固まっていきます!」
「本当だ!スミス!見て!」
「ええ!本当です!凄いですね!」
クリナとエイミーとスミスは武雄が用意した別の鍋に入れられた豆乳の凝固を目のあたりにして目を煌かせている。
「キタミザト殿、この後はどうしましょうか?」
「簡易的に作った、上が無い長方形の箱に粗目の布を敷いて固まって来た豆乳を入れてください。
そして軽く包み込んだら、隙間がある木の蓋を乗せ、重しを乗せて水を抜いて行きましょう。」
「どのくらいの重しでしょうか?」
「グラスに水を入れて・・・1個か2個で様子を見ましょう。
水が抜けると固さが増して料理に使えます。
ここが勝負所です!大胆にそして繊細にやりましょう!」
「「はい!」」
料理人達が武雄の指示でテキパキと作業をして行くのとノートに走り書きをして行く。
「ほぉ、これは凄いな。
苦汁・・・確かタケオの言葉では大量摂取は禁物だったな。
なるほど・・・汁が凝固するという事は体内でも何か胃の中の物とか臓物も固くなりそうだな。」
「はい。取り扱い注意というのは考えられていますね。
でも・・・何だかプルプルしていますね。
まさか大豆がこんな事になるとは思いも寄りませんでした。」
ニールとリネットの前にも凝固を見せようと武雄が用意した鍋が置かれ2人とも不思議そうに見ている。
「お~、豆腐だぁ。良いわ~。
冷ややっこかな?湯豆腐かな?あ、厚揚げも良いかも。甘辛く煮込むと酒に合うんだよね♪」
コノハがアリスの肩に乗りながら楽しそうに料理を待っている。
「えーっと・・・コノハ、これ知っているの?」
アリスが聞いて来る。
アリスはスミス達の様子を見るだけに留めていた。
「ええ、知っているわよ。
そもそも大豆は畑の肉というぐらい素晴らしい食材なのよ!
はぁ、アリスと契約して良かったぁ♪
これに米が出来ればおいなりさんも出来るかぁ。」
コノハは満面の笑みを浮かべながら「だーちゃんかうーちゃんを呼べたら良いのになぁ」と思っていたりする。
「はぁ・・・これがうちでも出るのかぁ。
どんなことになるんだろう。」
「和洋折衷よ♪」
「わよう・・・なに?」
「ふふん♪なんでもよ♪
アリスが今まで食べた事ない料理がわんさか出来るわ!
あと必要なのは私の方ね。
何としても米を上手くしないといけないわ!」
コノハがやる気になる。
「わんさ・・・まぁなんだかすごい事になるのはわかりました。」
アリスが頷くのだった。
・・
・
「あぁ・・・疲れた。」
「最後の追い込み凄かったです。
こんな数の料理がこの一時で・・・」
「この後清書だよぉ・・・」
料理人が厨房の隅で机に突っ伏していた。
武雄が作り出したのは明らかに渡したレシピ以上の数に上っていた。
ちくわ、つみれ、さつま揚げ、湯葉、豆腐、厚揚げ、がんも(シイタケとニンジンとネギを入れてみました)。
さらには練った魚肉を使って蒸し、「かまぼこ」を研究するように言っていた。
「さて・・・各調理器具は洗ったから・・・
小鍋はどうなりましたかね。」
武雄はこの食材と小さい蟹と紅魚の切り身を入れたお二人様用小鍋を作っていた。
そして豆腐と厚揚げは鍋にも入れたが、皿に盛りつけをし、単品での味を楽しんで貰うようにしていた。
もちろん料理人達も含めこの場の全員分が用意されている。
「タケオさん!豆腐はスプーンで掬えば良いのですか!?」
「味は魚醤をかけるのか?」
「ウスターソースをかけるのはどうですかね?」
「クリナ、スプーンが豆腐に刺さっているわよ?まだ早いって。」
「タケオ様、鍋はこのおたまでしたか?これで取れば良いのですよね?
ん?ジーナちゃん?」
「ご主人様、皆さんに取り分けて良いのですよね?」
「タケオ様、なんでパスタを今から茹でているのですか?
これが夕飯じゃないのですか?」
「タケオ、魚醤にレモン汁を入れて良い?
ポン酢っぽいのが出来るはずよ。」
「・・・タケオ、取り皿はこれで良いのですか?」
クリナ、ニール、リネット、エイミー、アリス、ジーナ、スミス、コノハ、マリが同時に話していて聞き取りづらい。
「あ・・・あぁ・・・もう好きにしてください。
というより注意点は1つだけ。
鍋のスープは残しておいてくださいね。
具を全部食べた後に〆でパスタを入れますから。」
武雄が「パスタ麺で良いかはやってみないとわからないけど麺は食べたいよね」と思っていた。
「「「「??」」」」
コノハとマリ以外が不思議そうな顔をさせる。
「まぁ良いです。
と、コノハでしたか?さっきポン酢を作るとか言っていましたが。
魚醤で出来るのですか?」
「出来るわよ~。臭みと甘味が和らぐのよ。」
「へぇ。ではスミス坊ちゃん用にも作ってくれますか?
魚醤の臭みがダメだったと前に言われているので和らぐなら試して貰いましょう。」
「はいは~い。」
コノハが楽しそうにレモンを片手で潰す。
「・・・うん。
では冷めないうちに頂きましょう。」
武雄が席に着く。
「「「「頂きます!」」」」
全員が唱和をして豆腐試食会が始まるのだった。
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