第821話 86日目 歓喜の謝礼
少し遅れて3皇子がバーに入って来て早々。
「「「本当にありがとうございます!!」」」
他人の目がない(王都守備隊は居るが)のでクリフもニールもウィリアムも机に頭を付けるぐらい深々と武雄に頭を下げていた。
「あぁ・・・これを見るとあの会議室は相当控えめだったのですね。」
武雄が半ば呆れながら言う。
・・
・
今は少し落ち着き・・・席に座って歓談をしている。
「はぁ・・・本当に良かった・・・
タケオさん、感謝します。」
ウィリアムはもう半泣きだった。
「あ~・・・ウィリアム、大の男が・・・泣くな。
まぁ長かったから仕方ないか。」
ニールも若干涙目でウィリアムを諭す。
「・・・」
アズパール王とクリフはそんな弟(息子)達を朗らかに見ている。
「流石はクリフ殿下ですね。
落ち着いています。」
武雄がクリフに声をかける。
「まぁ男子は2人目だからな。
だが、ホッとしたのは事実だ。タケオ、妃達が楽しそうだ。ありがとう。」
「いえいえ。」
「はぁ・・・これから子育てというのがあるが・・・王都でだからなぁ。
どうやって育てるかは周りを見ながらになるだろうな。」
クリフが思案している。
「どんな子に育つのでしょうね。」
「パットと正反対が良いな。」
クリフが即答する。
「それ・・・パット殿下が聞くと泣きますよ?」
「・・・良くも悪くもパットの正反対の方が良いだろう。
出来ればエルヴィス家のスミスが理想だな。
ゆくゆくは今の私の領地を治めるだろう。
なら性格的には控えめで領地運営が上手いとありがたいのだがな。
だが、こればっかりは親の理想という物。どう育つかは育ってみないとわからないだろう。」
クリフがため息を漏らす。
「・・・将来の寄宿舎は楽しそうですね。」
武雄が若干遠い目をしながら言う。
「・・・タケオ、アリスと挙式を上げたらすぐに子を成してくれないかな?」
「いや、こればっかりは・・・努力しますとしか言えませんね。
それにクリフ殿下ももう1人産ませないといけないと思いますが?」
「それなぁ・・・本当、どうした物か。
私も努力しますと答えるしかないな。」
クリフが「他人の事言えないな」と苦笑する。
「あ!タケオさん、これは僕達3人で決めたんですが、どうぞ・・・」
ウィリアムが懐から革袋を取り出し武雄の前に置く。
「・・・ふむ・・・音から察すると金貨ですか?」
「ええ!
子と精霊の個人的なお礼です!
クリフ兄上、ニール兄上と話をして金額を決めました。」
「・・・重い・・・」
武雄が軽く革袋を持ちあげると結構な金額が入っているのがわかる。
「・・・いや、本当にこんなには要りませんよ?
良いのですか?」
「どうぞどうぞ。
子供4名、精霊4名1人頭金貨10枚の金貨80枚は少ないかもしれませんが、僕たちの小遣いだとそれぐらいが精一杯で。」
ウィリアムが「すみません」と笑顔で言ってくる。
「いや・・・本当にこちらこそ貰い過ぎなような気がしてすみません。
ありがたく頂戴します。」
武雄が頭を下げる。
「「「保健よろしく!」」」
3皇子が楽しそうに武雄に言うのだった。
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こっちは武雄達の部屋。
アリスとコノハとパナはスミスとマリ、ジェシーとパンニューキスと別れ部屋に戻って来ていた。
もちろんミアとスー、彩雲も一緒に戻って来てミアとスーは寝ている。
今はコノハがお茶を入れて皆に振る舞っていた。
「・・・精霊なのにお茶が美味しい。」
アリスがお茶を口にして失言をしていた。
「?・・・アリス、それは偏見です。
普通お茶ぐらい淹れられるでしょう。パナも出来るよね?」
「・・・お茶は元々薬として使われてましたからね。
薬なら作れますよ。淹れるだけなら簡単です。」
「うん、聞く相手が悪かったわ。
アリス、一般的にお茶を淹れるのは普通の事です。
パンニューキス達みたいに最上級の味は出せないでしょうが、茶葉の量とお湯の量を間違えなければ普通に淹れられるのです。」
「そうなのですか・・・私が淹れていたのと味が違うのでやはり私もお茶ぐらいは淹れられるようにしたいですね。」
「・・・アリスがお茶を淹れるの??貴族なのに?」
「コノハ、それこそ偏見です。
・・・エルヴィス家では誰でも淹れていました。
まぁ客間とかでは執事かメイドが用意はしてくれるのですが、自室とかなら自分で淹れていましたよ。」
「ふ~ん・・・パナは研究所に行くのでしょう?
飲み物はどうするの?」
「コノハ、ここには珈琲はないのですよね?」
「パナも知っているでしょう?この周辺にはないわよ。
それに飲まれていないわ。
豆というか果実をタケオが見つけてくれるとありがたいんだけど、無理じゃない?」
「ならお茶ですね。」
コノハの説明にパナが頷く。
「・・・コノハ、パナ、こぉひぃとは何ですか?」
アリスが聞いて来る。
「「・・・」」
2人が悩む。
「?・・・説明出来ないのですか?」
「・・・苦い?」
「・・・黒い?」
パナもコノハも首を傾げながらアリスに答える。
「わからないですよ・・・それじゃあ。」
「とある木の実の種を焙煎して粉状に挽いた物を濾して飲むのだけど・・・わからないでしょう?」
「全くわかりませんね。」
アリスが難しい顔をさせる。
「パナ、どちらにしても入手は困難だから飲めないわね。
お茶で我慢しなさいよ。」
「そうですね。ならお茶のレパートリーを増やしてみますかね。」
「ハーブティーは人を選ぶわよ?」
「趣向は誰にも文句は言われないでしょう。」
「はぁ・・・タケオにちゃんと許可はとりなさいよ?」
「ええ、わかっています。
アリス、お茶の種類は何があるのですか?」
「え?・・・2、3種類だと思うけど・・・詳しくは知りません。
うちの家で出されるのは1種類ですし。」
アリスは「興味ない」と言いのける。
「ふむ・・・それもタケオに聞いてみましょうか。」
パナが思案する横でコノハが「何を考えているの?」とパナを見るのだった。
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