第811話 武雄は散策へ。2(部下の様子を見に行こう。)
武雄は第八兵舎に来ていた。
正確には着いたのだが1階の玄関で悩んでいた
「えーっと・・・第3会議室と言われたんだよね・・・
でも案内板に第3会議室ってないよね?」
建物内の簡易案内図に目指す場所がなかった。
「んー・・・」
武雄は出だしで迷子になっていた。
「あれ?・・・所長?」
通りすがりのブルックに見つかる。
「あ、美しく頼りになる女性が居た。」
「所長!何飲みます!?すぐに用意しますよ!
お酒でも果物でも何でも!新兵走らせますよ!」
武雄の呟きがお気に召したのかブルックが満面の笑顔を向けながら聞いて来る。
武雄は「他部署の新兵を使うなんて結構なパワハラ炸裂ですが?」と思うがブルックも本気ではなさそうなのでスルーすることにする。
「いえいえ、ミア用の果物は用意していますよ。
それで第3会議室ってどこですか?」
武雄が苦笑しながら答える。
「第3会議室は案内板にはないですよ。
ちょうど皆が居るので見に来てください。」
「そうですか?じゃあちょっとお邪魔しますかね。」
「こちらです。」
武雄はブルックに付いていくのだった。
・・
・
「今日は皆さんは何をしているんですか?」
「部屋の抽選会です。」
「抽選会?」
「ええ。隊員達が入りたい部屋が被りまして・・・
あ、ここです。」
とブルックが部屋の後側の扉を開ける。
「・・・では、締め切ります・・・
希望部屋抽選会2周目、5番目部屋の当選者は・・・10番。」
アンダーセンが皆の前に立ち、抽選箱から紙を引き、当選者を発表する。
「「「だぁーーーーーー」」」
幾人かがガックリとする中。
「おっしゃーーーー!」
男性隊員が立ち上がりガッツポーズを取る。
武雄は部屋に入るなり近くにあった椅子に座り眺め始める。
アンダーセンが気が付き武雄と目線が合うが、武雄が首を振っているのを見て何も言わずに次の抽選を始める。
「希望部屋抽選会2周目、8番目部屋の当選者は・・・」
武雄は皆楽しそうにしているのを微笑ましく見ている。
「ふむ・・・どんな物でも多数から一つを選ぶ時は被る物なんですね。」
「まぁそういう事です。」
ブルックが頷く。
「紹介された物件の差異はそこまでないのですよね?」
「ないですね。
全て街北でステノ技研付近です。
間取りはまぁ多少はありますが、湯浴み場はありますし、部屋は3部屋以上、備え付けの家具は新品同様、そして何より王都より家賃が安い!
皆の給料は今までより銀貨5枚くらい低いですが、家賃が銀貨7~9枚程度低いので実質給料が上がりました!
私とアーキンなんか金貨1枚分です♪」
ブルックが若干興奮ぎみに言う。
「うん・・・給料の事は言ってはいけませんね。」
「あ・・・すみません。」
武雄の指摘にブルックがシュンとする。
「そうですか・・・もっと引けば良かった。」
武雄が笑顔でブルックに言う。
「いやいやいや、所長。
今の水準でお願いします。」
「銀貨5枚引いているのは騎士の爵位持ちだけですけどね。
その分を爵位なしの者に分けてあげないといけないと思っていますよ。」
「そうですか・・・まぁそうでしょうね。
所長は今後も騎士持ちを取るのですか?」
「陛下から第1騎士団と王都守備隊のベテランの再就職先としての意味も持ってほしいと言われました。
ベテランは騎士持ちですかね?」
「さて・・・何とも言えません。
ちなみに王都守備隊は全員騎士持ちですけど。」
「予算的にそっち優先ですね。」
「なんとも世知辛い世の中ですね。」
「ええ、予算ありきですからね。
ですが・・・まぁその辺は私ではなくマイヤーさん達に任せます。
そもそも来たい人が来て仲違いをしない人達なら文句はないですよ。」
武雄がそう言いながら抽選会を見る。ブルックはそんな武雄の横顔を見ているのだった。
「で、所長は今日はどうしたのですか?」
「ええ。王家との話し合いも終わりましたので、第二研究所の2回目の会議でも企画出来たらと思ってですね。
いつなら出来るかを聞きに来たんです。」
「ん?王家との話合いですか?
相変わらず所長は王家と仲が良いですね。」
「ですね、否定はしませんよ。
まぁエイミー殿下やアン殿下そして私やアリスお嬢様に精霊が付いたのでそのお披露目と各皇子一家の妃が懐妊しましてね。
その話でした。」
武雄が重大な事をさらっと言う。
「・・・」
「・・・」
武雄はボーっと抽選会を見ているし、ブルックが何も言わないで武雄を見ている。
「・・・」
「・・・はぃ?」
ブルックがフリーズ状態から解凍される。
「・・・ん?どうしました?」
「所長!今物凄い事言いましたよね!?」
ブルックが武雄を揺さぶりながら言ってくる。
「あ、所長、お疲れ様です。」
他の面々が武雄の存在に気が付き、起立して挨拶をしてくる。
「えええい!皆一旦中断!抽選会中断!
所長!今の話皆にも言ってください!早く!」
「面倒だから抽選会終わらせてから話しましょうよ・・・
アンダーセン隊長、続きをして。ほらほら。」
「所長!さっきの事の方が重要です!」
武雄が手を振りながらアンダーセンに続きを促すのをブルックが揺さぶりながら阻止するのだった。
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