第810話 武雄は散策へ。1(材木問屋に行こう。)
先のアズパール王の宣言でお開きになり各自自由になっていた。
皇子一家とスミスとジェシーはとりあえずのんびりしたいと部屋に戻っていった。
アリスは少しのんびりしてからスミスと一緒にジェシーの所に行くとの事で武雄とは別行動。
ヴィクターとジーナはアリスとスミスに付いて貰うのでこちらも別行動。
なので今の武雄は一人(ミアとパナは武雄のポケットで寝ている)でのんびりと街中に居た。
まぁ正確にはとある材木店の近くまで来たのだが。
「おい!そっちの木材が先の搬入だろう!」
「こっち、こっち・・・そう・・・丁寧に置け!」
「新しい木材の納入が早まるだと!?
在庫の入れ替えだ!皆!集合!」
店が慌ただしかった。
「ん~・・・」
武雄は「これは違う所に寄ってから来るか?」と思いながらボーっと見ている。
「おや?キタミザトさん。
王都に来られていたのか。」
後ろから声をかけられる。
振り返ると木材店兼武器輸入業者の親父さんが居た。
「こんにちは。
盛況のようですね。」
「あぁ。降って湧いたように魔法師専門学院の増築工事用に注文が来たんだ。
お、今日はお嬢ちゃん達は来ないのか?」
「はい。部屋で寝ていますよ。」
「そうかそうか。
・・・お茶ぐらい出すぞ?」
「そうですか?・・・わかりました。」
武雄と材木問屋の親父が店に歩いて行くのだった。
・・
・
相も変わらず通されたのはいろいろな防具が置かれている所だった。
「相変わらず綺麗な武具ですね。
少し入っている物が変わりましたか?」
「あぁ、それなりに売れてな。4割ほど入れ替えてある。」
親父さんはそう言いながら少しソワソワしている。
「親父さん、何かあるのですか?」
「うむ・・・いや。
キタミザトさん、つかぬ事を聞きたいんだが。」
「ええ。」
「新貴族の中にキタミザトという名があったのだが?」
「私ですね。」
武雄が即答する。
「・・・そうですか・・・という事はお嬢ちゃんは・・・」
「アリス・ヘンリー・エルヴィスですね。」
「鮮紅ですか・・・前に姉君と来られたのだが・・・」
「レイラさんですかね?
第3皇子ウィリアム・アラン・アズパールの側室レイラ・ヘンリー・エルヴィスですね。」
「・・・うぅ・・・」
親父さんが泣きだす。
「どうしましたか?」
「何で言ってくれなかったのですか?」
「どこを?」
「全部・・・私は不敬罪ですか?」
「?・・・誰に対して?」
「レイラ殿下に対して・・・いやキタミザト様にも。」
「私の事はどうでも良いですけど。殿下からそんな話は聞いていません。何かしたのですか?」
「いえ・・・お茶も出さずに対応してしまいました・・・」
「その程度で怒る王家ではないですよ。
というよりもですが。」
「はい・・・」
親父さんが神妙に聞いている。
「最初に来た時に小さい女の子が居ましたよね?」
「・・・あぁ綺麗な女の子。将来は美人になること請け合いの子がいました。
・・・まさか。」
「第2皇子ニール・アラン・アズパールの長女エイミー・ニール・アズパールでしたけど?」
「・・・」
親父が何も言わずにガックリし涙を流す。
武雄は「一緒に来ている兵士がどれも王都守備隊の隊長だとは言えないかなぁ?」と苦笑するのだった。
・・
・
「言ってくれていれば相応の対応をしましたのに・・・」
「はは、別段問題はないですよ。
ちなみに王家と知っていたらどうしていましたか?」
「別室をご用意して」
「それは面白くない。あの人たちは普段そういった場所に通され慣れています。
ここのように倉庫の一角というのがあの人達には楽しいのですよ。
店の倉庫での打ち合わせはあの人達にとっては楽しい事、それは私も一緒です。
なのでこれからも来る時はここが良いですね。」
武雄が親父さんの言葉をさえぎって言ってくる。
「はぁ・・・畏まりました。
改めまして、サイラス・アスカム(55歳)と言います。
で、キタミザト殿、本日はどのような話を?」
「ふむ・・・盾の件は発注して頂いているのですね?」
「はい、アリス殿達が来られた日に注文は上げましたので・・・もうすぐ着くと思います。
確か納付先が第八兵舎となっていたかと。」
「それで構いません。
宛名に第二研究所宛と書いてくれれば問題ないでしょう。」
「研究所・・・ですか?」
「ええ。
・・・それと親父さん、私が貴族になったからと言って口調を変える必要はないですよ?」
「そういうわけには・・・行きませんよ。」
「はぁ・・・肩書で商売なんかしてないのに・・・
まぁ良いです。またちょくちょくくれば語尾も直るでしょう。
で、私はこの度、王立研究所で新構造の盾を開発することが決まりました。」
「盾の開発?・・・だから2か国の標準的な物を?
・・・こちらから売れますか?」
アスカムの目が一気に商売人の物に変わる。
「・・・まずは他国と自国内の標準的な盾の数値化をする予定です。」
「・・・ふむ・・・」
アスカムが考える。
「キタミザト殿、間違っていたら申し訳ないが・・・
国内標準を作るのですか?」
「おや?わかりますか?
まぁ実際に出来るかはわかりませんが最低基準を作る気ではありますけどね。
少なくとも王立研究所が作り出す武具については評価試験制度が導入されます。」
「ますます標準化の勢いです。」
「それはそれです。
反発して各々で開発しても良いですが・・我々がその盾を購入し評価試験をしてしまうという事もありますし、王立研究所の評価試験を通っていない物を王都の騎士団達が買うかというのはわかりませんね。」
「はぁ・・・大丈夫なのですか?」
「してみないと・・・ですが、その評価試験を通った新盾が出来上がるのは1年後か2年後です。
なのですぐにどうこうでは無いでしょう。
もちろんゆくゆくは輸出用も作りますからその時は声をかけます。」
「!
わかりました!その時はお任せください!」
「はは。親父さん、そこまでの物ではないですよ。
それよりテイラー店長からカタログを貰ったのですけど。」
「あ、届きましたか。どうでしょう?
それとテイラーからウィリプ連合国の何でも弦楽器の部品(?)とかいう注文が来ているのですが、これはどういった事でしょうか?」
「その辺の話をしますか。
あ、弦楽器については私もあと数日したらウィリプ連合国に行きますのでついでに見に行ってきます。
向こうの問屋はわかりますか?」
「はい・・・えーっと・・・テイラーの手紙はこれです。」
アスカムが机の引き出しから手紙を取り出し武雄に渡す。
「ふむ・・・ウィリプ連合国 ファルケ国領主邸がある街の問屋・・・」
「この国はウィリプ連合国でも穏健派です。
私どもが商い相手としている国ですね。
さらに西のウィリプ連合国大統領府とファルケ国の間にあるドローレス国が強硬派と言われています。」
「ふーん・・・面倒な国家ですね。」
「まぁ・・・奴隷国家ですからね、あそこは。
強硬派、穏健派共に奴隷ありきの生活なのはどうなのかと思いますけどね。」
アスカムが嫌そうな顔をさせる。
「まぁ他国の政治についてはどうでも良いです。
で、カタログの話をしましょう。」
「お気に召す物がありましたか?」
武雄とアスカムが談笑するのだった。
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