第785話 何しに宝物庫へ?
ここは王城内の宝物庫。
新人貴族とその執事が見学し終わり、武雄達と王家が入っている。
「さて・・・やりますか。
えーっと・・・そこに机が・・・あった。鈴音の時に確認していましたが、ここで良いでしょう。
アリスお嬢様、スミス坊ちゃん、ヴィクター、ジーナ、しますよ?」
「「「「はい!」」」」
4人が机の周りに椅子を持って来て座り、メガネと紙と鉛筆を取り出す。
「ん~・・・???
タケオ、何をする気だ?」
「説明は後です・・・えーっと・・・確か専属魔法師殿に教えて貰ったのはこの棚だったはず・・・
あ、ありました。これですね。」
武雄は時間が惜しいのか。古めかしい本が並んでいる棚から数冊取って中身を確認する。
「これと・・・これ。あ、これもか。」
とりあえず6冊を取って皆が待つ机に引き返す。
「では!お願いします!」
「「「「はい!」」」」
アリス達が1枚1枚見ながら紙に書いていく。
「んんんん?・・・タケオ、何をしているんだ?」
「陛下、前に来た時にレイラさんから普通なら読めない本を渡されました。」
「・・・あぁ!あったな。
それを書き写しているのか?」
「ええ、研究をするのに役立ちそうですので。
書き写してはダメとは言われていないので決行していますけど。
良かったのですか?」
武雄が事後である事を悪びれもせずに満面の笑みを向ける。
「いや・・・書き写すくらい問題ないぞ。まぁ内容は後で見せて貰うが・・・
タケオ、そんなので良かったのか?
その蔵書を報酬で渡しても良いんだが。先の侵入者の件での報酬も兼ねてな。」
アズパール王が「どうせ見ないし」と言ってくる。
「この手の本はここにあるのが良いでしょう。
先の侵入者も目的は精霊よりこっちだったのかもしれませんし。」
「なるほどな。
確かにタケオが必要と思うような内容の本ならその可能性はあるか。
で、実際どんな本なのだ?」
「武器を作る際に必要な数式や理論方程式ですね。
と言っても基礎的な数式ですので必要ならいろいろな数式を使って総合的に考えないといけないです。」
「ふむ・・・簡単に言うとどういう物だ?」
「そうですね・・・
攻城戦で守っている際に上から石を落とすとして、『石を落とすと何秒程度で地面に届くか』とか『石を指定の距離飛ばすのにどのくらいの力でどの角度で飛ばすのが良いのか』と言った数式です。」
「・・・結構重要そうだ・・・だが、それは理論値だろう?
そこに経験やらその場の状況やらが加味されるはずだ。」
「そうですね。
でも何も考えずにするよりかは正確に実施出来ます。
それにこれを使って防具を考察する際に机上理論を事前に出来るようにしたいと考えています。
そうすれば無駄な試作品は作らなくて済みそうですから。」
「ふむ・・・研究所の為の情報か。」
「はい。宝物庫にはそうそう長い事は居れないでしょうが、出来るだけ書き写させて貰います。」
「わかった、好きにするが良い。
足らないなら別日で入っても構わないからな。」
「ありがとうございます。」
アズパール王が武雄の意向を飲むのだった。
武雄とアズパール王が話している後ろで。
「・・・ねぇ・・・クリナ、アン。」
「はい、エイミーお姉様。
なんで光っているんですかね?」
「あ、2人ともやっぱりそう見えるんですね。」
3人は宝物庫の一番奥にある本棚の数冊が淡い光を放っているのに気が付くのだった。
「「「「「・・・」」」」」
武雄達は黙々と書き写している。
「チュン。」
「そうですね、暇ですね。
お菓子持ってくれば良かったです。」
スーとミアが宝物庫内の甲冑の上に座り、武雄達を見ながら言ってくる。
「それにしても・・・また増えるのですか?」
ミアが淡い光を放っている本棚を見ながらため息をつく。
「チュン?」
スーが首を傾げる。
「何が出るかなと言われても・・・何でしょうね。
ニオやテトはまともでしたけど、次がまともとは限りませんよね。」
「チュ~ン・・・」
スーが考えながらも頷く。
「・・・え?悪いのも居るとはなんですか?」
「・・・チュチュン?」
「あくしん?じゃしん?それなんですか?」
「チュン。」
「へぇ~・・・精霊でも良いのと悪いのがいるのですか。
・・・何故ですか?」
「チ・・・チュン!?」
スーが驚く。まさか「何故?」と聞かれるとは思わなかったのだ。
「だって、生き物なら良い方も悪い方もそれぞれだし、自分の立ち位置によって相手から良かったり悪かったりするでしょう?
なんで最初から悪いなんて決まっているのですか?」
ミアが一神教における根底を聞いて来る。
「チュン・・・」
スーがどう説明したら良いのか困り始める。
「スー助やニオ、テトは良い精霊なんですか?」
「チュン。」
スーが頷く。
「なら今は平気なのですね。
さて、何が出るんでしょうね。」
ミアがため息を付くのだった。
「終わりました・・・」
スミスが机に突っ伏しながら終了を宣言する。
「はい、お疲れ様です。」
武雄はスミスから書き写した物を受け取り本との整合を確認し始める。
「こっちも終わりました。」
「ご主人様、終わりました。」
次々と終わりを告げてくる。
「タケオ様、約束の件・・・お願いします!」
「わかっていますよ。」
「えへへ♪」
アリスが目を煌めかせながら言ってくるのを武雄が笑顔で返すのだった。
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