第784話 85日目 予定変更。
朝食を終えた武雄達一行は総監局に呼び出され宝物庫扉前に来ていた。
正確には新人貴族達とその執事が集合していた。
武雄達だけはアリスもスミスもジェシーもいるご一行です。
「あれ?・・・今日は皆で馬車見学しようという話でしたよね。」
武雄が隣に居るバビントンとアルダーソンに聞く。
「ええ、最新の馬車を見ようと思っていましたけど。
・・・朝食の食器を下げられる時にここに集合と言われました。」
「私もですね。」
バビントンとアルダーソンが首を傾げる。
他の新貴族達も「研修終わったよね?」と各々で雑談をしている。
すると、オルコット始め総監局の文官や王家専属魔法師隊がやってくる。
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。
さて、研修自体は終わりましたが、今回は7名が新たに貴族になられました。
今後成果を挙げられるともしかしたら陛下から任意の品が頂けるかも知れません。
ですので、今後の奮起を期待して今回は特別に王城内の宝物庫の見学が許可されました。」
オルコットが説明をする。
「「おぉ!」」
武雄とアリス、スミス以外が王都の計らいに驚き「中には何があるのだろう」と楽しそうに話し始める。
「キタミザト殿、馬車は明日になりそうですね。」
バビントンが苦笑しながら言ってくる。
「馬車市は明後日まででしたね。
余裕はありそうです。」
アルダーソンも言ってくる。
「まぁ、馬車は逃げませんから明日にでも見に行きましょう。
それに王都側も早めに新貴族に褒美をちらつかせて私達のやる気に繋げたいという事でしょうね・・・
しっかりと!欲しい物を見繕わなくてはいけませんね!」
「「ええ!」」
武雄は2人に決意を言う傍ら「私達だけが入るのは不自然だからかな?」と思うのだった。
「では2家ずつご案内をいたしますが、現在宝物庫の最終確認をしています。
控え室を用意いたしましたのでそちらに移動をお願いいたします。
準備が出来次第お呼び致しますのでお待ち下さい。」
と文官が説明し、先導の下、皆が移動を開始するのだった。
・・・
・・
・
用意されている控え室にて。
貴族会議の4家はすでに呼ばれて退出していた。
で、呼ばれるのに時間がかかるので武雄が皆に将棋とリバーシを教え体験させていた。
貴族同士のトップ商談ではあるが、同期の仲間が作り出した物だし王家にも渡したと教えられ各新人貴族達は注文する意向を示していた。
武雄は「少しでも売れるようにしなきゃ」とハワース商会の生き残りの為に販売意欲は高かった。
なのだが、実際にはアズパール王がオルコットに教え、オルコットがやり込みのしやすさと先を見通す練習になることを認め、まずは総監局で30個を購入し、各局長に教えようと密かに臨時予算の編成に動いていたり、王都守備隊総長がアーキンとブルックから「戦術を考える訓練になる」と具申され予備費を使って昨日付けで守備隊用に40個の見積もり依頼と先行製作依頼がされていたり、その依頼書を見た財政局が「・・・王都守備隊が買うなら王立学院と魔法師専門学院にも入れてみるように各所に企画案を出すかな?」と考えていたり、クリフとニールが将棋をしているのを第1騎士団団長が見ており「うちも買ってみるかなぁ」と思われていたり・・・ハワース商会の苦難は続きそうだった。
「・・・王手。」
バビントンがアルダーソンの王に王手をかけていた。
「んん・・・逃げ道はないですね・・・負けました。」
アルダーソンは敗北を認める。
「ふぅ・・・キタミザト殿、これは頭を使いますね。
特に相手の先を読むのが・・・数手先が精々ですね。」
バビントンが武雄に言ってくる。
「そうですね。
私は大体2手先を読むのが精一杯ですね。」
「キタミザト殿でもそのぐらいなのですか?」
「頭が疲れますからね。
先を読めば読む程に多くを想定する必要がありますから。
余程時間に余裕があってその日1日やる事がなければ・・・本気では出来ません。
エルヴィス伯爵としていても勝率は3割行くかどうかですし。」
「3割・・・低いですね。
エルヴィス伯爵は上手なのですか?」
「結構、先を見据えている感じですね。
まぁ私は必ず勝たないといけないという訳ではないので楽しんでいる段階ですね。
と、さっきはアルダーソン殿がこういう感じで先んじて逃げましたが・・・
ここに銀を打つと。」
武雄はその場で数手前に場面を戻して銀を空白地帯に置く。
バビントンの角をけん制する形でさらに手ごまを使えばバビントンの優勢が危ういと思わせるような一手だった。
「「あ・・・」」
「もっと場が荒れましたよ。」
「「ん~・・・」」
バビントンとアルダーソンが唸る。
「バビントン殿、アルダーソン殿、こちらにお越しください。」
文官が呼びに来る。
「ではキタミザト殿、お先に。
アルダーソン殿、行きましょう。」
「ええ。ではキタミザト殿、お先に失礼します。」
「ごゆっくり。」
武雄はにこやかに送り出す。
「バビントン殿、何を見ますか?」
「そうですねぇ。
書物や宝石なんかは興味をひかれますね。
アルダーソン殿はどんな物を?」
「私の場合は武具に興味がありますね。
歴代の王家の武具と言えば伝承であるような物もあるでしょう。」
「確かに、それも見る価値はありますね。」
2人は他の貴族同様楽しそうに退出していくのだった。
もちろんお付の執事も楽しそうだ。
武雄達が部屋に残される。
「はぁ・・・さてと。」
「タケオ様、皆さまが行かれましたね。
これがタケオ様がお願いしたお仕事の報酬の一端なんですよね?」
「アリスお嬢様に書いて貰った通り『宝物庫の禁忌本区域への立ち入り権』ですからね。
私達だけが宝物庫に入るのは不自然だからこうなったのかもしれませんが・・・
まぁご本人に経緯を聞きますかね。」
「ご本人?」
アリスが不思議がる。
「どなたかが聞き耳を立てているでしょう?
ねぇ?殿下方?」
武雄が室内にある隣室に繋がる扉に向かってそう言うと扉が開きアズパール王と皇子3人とエイミーとクリナとアンが入って来る。
パットは居ません。
「タケオ、気が付いていたか。」
アズパール王が苦笑しながら言ってくる。
武雄を除く皆が頭を下げて出迎える。
「・・・新貴族が集まる場に誰も監視を置かないとは思いません。
それにこれは私がお願いした事です。
私がどういう行動を取るのか気になる方が控えているのはわかりますよ。
わざわざ私達を最後にするんですから当然です。」
「まぁ、そういう事だ。我らも同行するからな。」
「別に何か持ち出す気ではないですけど。」
「スミスに精霊を付けるのだろう?」
アズパール王が聞いて来る。
「?・・・誰がそんなことを言ったのですか?」
武雄が真面目な顔で聞き返す。
「え?・・・我らはそう考えたのだが・・・違うのか?」
「ええ、そこは考えていませんでしたけど。」
「じゃあ、何を見に行くのだ?」
「それは行ってみればわかります。」
武雄が苦笑しながら言うのだった。
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