第781話 アニータ達の練習風景。6(武雄の剣技の考え。)
武雄とアーキンが何やら面白そうな事をする雰囲気なので皆が注目しているが、武雄は気が付いていない。
「さてと、アーキンさん、普通に立ってください。」
「はい。」
アーキンが武雄に言われて立っている。
「さて、私は剣で攻撃をする場合は9通りあると思っています。」
「「9通り?」」
アリスとブルックが聞いて来る。
「上、左右上、左右、左右下、下、そして突き。」
武雄が手を平手でアーキンに向かって腕を動かす。
「基本ですね。」
ブルックが頷く。
「そうですね。
それを踏まえて言うのですが・・・人間は剣を構える時にバランスが偏っていると考えています。」
「偏る・・・ですか?」
アーキンが聞いて来る。
「ええ。
腕、肩、背筋・・・剣を振るうのに必要な筋力というのはわかっているでしょう。
ですが・・・握り方に寄って筋力の付き方が左右で偏ると思っています。
アーキンさん、普通に構えてください。」
「はい。」
アーキンが木剣を両手で持ち中段に構える。
「・・・アーキンさんは右手が上ですね。」
武雄が確認する。
「タケオ様、私の時もそうですが、握りを気にしてどうしたのですか?」
「握り方に寄って筋力が左右のどちらかに偏るという事は、力をかけられる方向があると思うからです。」
武雄がアリスに言ってくる。
「え?・・・考えたこともなかったです。」
「・・・所長、どういうことですか?」
アリスが驚きブルックが聞いて来る。
「つまりは得意な斬り方があると思っています。
アーキンさん、上段に構えてください。」
「はい。」
アーキンは上段に構え右足を少し後ろに引く。
「上段で振り下ろす時に本当の意味で真っ直ぐに振り下ろすというのは出来ない物と思います。
・・・アーキンさん、振ってください。」
「はい。」
と、アーキンが右足を踏み出しながら上段から剣を振り下ろすが木剣は頭上では真ん中にあったが、若干中心の左側の下で止まる。
「このように私は右手を上にした握りでは左に流れると思います。
つまりは正面で構えていても実際には剣の軌道はズレると考えているのです。
そしてもっと極端に言えば右上から左下への攻撃が無意識下で行われていると考えます。
なら・・・剣術をしている者が最大の威力を出すなら無意識下で体が求めている方向に剣を進め、さらに力を入れる事で威力を増す方がより楽なのです。」
「そう言われればそうですけど・・・
でも所長、そうは言っても左上から右下に振るのが得意な者も居るのではないですか?」
「それはいるでしょう。
私は今は体の動きしか見ていませんから、修練でそっちの方が得意な者も居るかもしれませんね。
なので今は修練に拠る得意方向というのは無視しています。
さて、では右手を上にして持つ者は右上から左下に剣を振るのが得意と考えた時に強引に左上から右下に流れるように流された。
果たしてこの時、右上から降ろされた時と同じ威力でしょうか。」
「・・・そう言われると違うかと思います。」
ブルックが言ってくる。
「私は今回のアリスお嬢様との模擬戦ではあくまで受ける方向で考えていたので、力が割とかからないと思われる方向に剣を逸らしたのです。
とりあえず、問題はなさそうですね。」
「むぅ・・・タケオ様、どうやれば勝てるのですか?」
アリスがジト目で聞いて来る。
「何がですか?」
「剣を逸らせられるのならそもそもタケオ様のみ攻撃が出来るという物です。」
「え?これは戦闘時に使う気はないですよ?
これシールド全部使うんですよ・・・怖くて出来ないですね。あくまで1対1の試合用です。」
「それでもどうやって攻略すれば良いのですか?」
「いや・・・逸らされるのがわかっているなら次の手を考えれば良いじゃないですか。
さっきはアリスお嬢様だって右回りして左から薙ぎ払おうとしたわけですし、あれの応用ではないですか?」
「・・・ですけどそれでもタケオ様に防がれました。」
「・・・あれを防げなかったら直撃して内臓破裂していそうですけどね。
咄嗟の閃きであれだけ動けたのです。
なら研鑽を積んで行くしかないでしょう。
それに周りには王都守備隊がごろごろしていますし、助言を得るには事欠きませんよ。」
「・・・じゃあ、完成したらタケオ様、相手してくれますか?」
「・・・嫌ですよ。なんで実験台になるのですか?」
「むぅ・・・勝ち逃げですか?」
「ふふふ、そうさせて貰いましょう。
それに気が向いたら相手をするかもしれませんし、その時がいつかは教えないでおいた方が良いでしょう。」
「むぅ・・・1年後とかになりそうです。」
「明日かもしれませんね。」
アリスがジト目で「いつ?」と聞いて来ても「さぁ?」と武雄がやり返している。
「私も真面目に剣技を磨くしかないのですかね・・・」
アリスが渋々やる気を見せる。
「ジーナとするのでしょう?」
「ええ、まぁ・・・ジーナちゃん優秀だからなぁ・・・
剣もすぐに上手くなりそう。
よし!ジーナちゃんの練習相手として少し真面目に受けます!」
「どのくらいを目指すのですか?」
「えーっと・・・ジーナちゃんの剣を全て受けきれるくらいまで・・・」
アリスは弱々しく決意表明をする。
「アリス様、私・・・そこまで強くなることもないと思っているのですけど・・・」
ジーナが「今のアリス様ですら私の剣を最後まで余裕で受けれるのではないのですか?」と思いながら言ってくるのだった。
こっちは黙って聞いていたアズパール王達の席。
「総長、どう思う?」
「真っ当な理論でしょう。
あとは剣技をどれだけ磨くかで精度が上がるという所でしょうか。
ですが・・・キタミザト殿も化け物ですね。」
「まぁ・・・そのぐらいでないとオーガ相手に単独先行で30体なんてしないだろうがな。」
クリフがため息をつく。
「それはそうですが・・・それにしてもうちの隊員達は・・・
『鮮紅相手に良くやった』と褒めれば良いのか、『もっと出来ただろう』と叱れば良いのか。」
王都守備隊総長が悩む。
「総長殿、そこは『タケオさんを見習って臨機応変に対応するようにしなさい』というしかないのではないですか?」
ウィリアムが言ってくる。
「んー・・・臨機応変ですか・・・
あの異質な考えを持つキタミザト殿の真似を皆がすると規律が乱れそうで怖いんですけどね。」
「そこは何とかするしかないだろう。
だが、頑なに固執する事でもないのは確かか。」
アズパール王も考えながら言ってくるのだった。
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