第780話 アニータ達の練習風景。5(ではお好み焼きと回答を。)
厨房で作ったお好み焼き(仮)は鉄のトレイで湯煎されて温かい物が皆に提供されていた。
王家、王都守備隊、武雄達に分け隔てなく出されていた。
王都守備隊員は「おぉぉ、酒が欲しい!」と早くこの会が終わるのを心待ちにしていたりする。
ここは武雄達の席。
「美味しいですぅ♪」
ジーナは立ちながら食べているが満面の笑みを武雄に向けていた。
「流石は主ですね。」
ヴィクターもジーナの横で頷きながら食べていた。
「良かったです。でも本来の味からすると足らないですね~。」
「ご主人様!?まだ美味しくなるのですか?!」
ジーナが目を煌かしながら聞いて来る。
「もう少し甘味というか旨味というか・・・味が濃くなりますよ。」
「おぉぉ!ご主人様、いつか作ってください!」
「そうですね。食材が見つかったら作りますからね。」
「はい!」
ジーナが楽しそうに頷く。
「お姉ちゃん、美味しいね。」
「ええ、ほんとね♪」
アニータとミルコが昼食を楽しんでいる。
「あああ!もう所長に付いて来てほんと良かった♪」
ブルックが満面の笑みをさせている。
「うんうん。これは良いなぁ。
聞いた感じでは作るのも楽そうだし、材料もお手軽だ。
これは戦時食になるかもしれないな。」
アーキンも食べながら言ってくるのだった。
こちらはアズパール王と皇子達の席。
「おおおお♪これは良いな!」
「これは、ウスターソースの使い方を教えてくれて感謝するしかない。」
「クリフ兄上の所が繁盛しそうだなぁ。
うちには何かないか?」
「うんうん♪これは良いです♪」
王家の男性陣は先ほどから頬張りながら食べている。
こっちは子供達の席。
「ん~♪流石タケオさんです♪
マヨネーズいっぱいかけようっと♪」
アンが母達が居ない事を良い事にマヨネーズを多めにかける。
「似たような物はあるけど・・・これほど美味しくはないです。
タケオさんは凄いです♪」
「はぁぁ・・・やっぱり美味しいなぁ・・・」
エイミーがうっとりしながらボーっとする。
「エイミー殿下、タケオ様の料理は美味しいですね。」
スミスがエイミーに話しかけて来る。
「あ!・・・ええ、そうね。
スミスが羨ましいわ。こんな料理を堪能しているのですから。」
エイミーはついつい王家の食事の時のように気を抜いてしまっていたが、スミスに声をかけられてそそくさと姿勢を直しながら受け答えをする。
「タケオ様が来たのはつい最近ですから。
僕もあまり食べてはいないのです。タケオ様は簡単に作ってしまうので皆感動しているのですよ。」
「そうなの?
ん~・・・確かにこれも調理は簡単なようだし・・・」
「エイミー殿下、寄宿舎で料理は出来るのですか?」
「え!?・・・それはたぶん・・・出来るわよ?
スミスはするの?」
「いえ。したことはないのですが、タケオ様がこうも簡単に作っているので僕も作ってみようかと。」
「な・・・なるほどね・・・・そう作ってみるのね・・・」
エイミーが若干汗をかきながら受け答えをしている。
「エイミー殿下は料理はされるのですか?」
「え?・・・私は・・・その・・・」
スミスとエイミーは会話を楽しむ(?)のだった。
再び武雄達の席。
「・・・タケオさん、これうちでも作って良い?」
ジェシーが食べ終わって腕を組みながら武雄に聞いて来る。
「別に秘匿するような調理方法ではないですけど・・・
キャベツと干し海老とネギを食べやすい大きさにして小麦粉で練って焼いただけです。」
「・・・凄く簡単に聞こえるんだけど。」
「簡単ですからね。」
「・・・本当にそれだけ?」
「ええ。あとはウスターソースの粘りを高めたかったのでちょっと手を加えただけですけど。
・・・このソースも作って貰おうかなぁ。」
武雄が思案する。
「絶対に買うから!」
ジェシーが出来る前に予約をしてくる。
「はい、わかりました。
で、アリスお嬢様、何も言いませんがお口に合いませんでしたか?」
「いえ、大変美味しいのですけど・・・やはりさっきの事が気になってしまって。」
とアリスは言っているが、既に皿は空っぽで完食済みだったりする。
ちなみに食べている時はジーナと同様に満面の笑みだった。
で食べ終わりふとさっきの事が頭を過ったようだ。
「タケオ様、結局の所、どうやったのですか?」
「?・・・アリスお嬢様は私がシールドを使ったと気が付いたのではないですか。」
「いえ、タケオ様が使いそうな魔法の中で私の剣を逸らせられるのは強化かシールドです。
でも朝の時点で剣同士が当たらなかったので私の中ではシールドしかなかったのです。
でもいつもの受けられた感覚ではなくて、何て言うのでしょうか・・・上手く逸らせられたような誘導されたような・・・
とりあえず抵抗がほとんどなかったのです。」
アリスが考えながら言う。
「アリスお嬢様、私がしたのは今アリスお嬢様が言った通りなのですよ。」
「どういう事でしょうか?」
「シールドで剣の通り道を作りました。」
「どんな風にですか?」
「先ず、アリスお嬢様が両手で上段に構えました。
更には右手が上でしたね。」
「・・・タケオ様、そこからなんですか?」
「ええ、そうですよ。私の中ではそこが重要なんですけど・・・
まぁ良いでしょう。どうやったかは簡単です。
シールドを私の左肩からアリスお嬢様の剣先までの間に滑らかな曲線を描くように順次配置して軌道を逸らせただけです。」
「やっぱり・・・でも滑らかってなんですか?
シールドを曲げたのですか?」
「違いますよ。
私は50cm四方で展開していますけど、これを重ねて使いました。
今回はアリスお嬢様の木剣に対して通る場所を見極めて、最初は3度で10枚、次は7度で5枚、その次は12度で3枚といった具合に斜めに配置していったのです。」
「・・・タケオ様、なんですかそれ?」
アリスがジト目で言ってくる。
「いえ・・・何と言われても・・・」
武雄が苦笑する。
「所長・・・変な戦い方をしないでくださいよぉ。」
ブルックが会話に入って来る。
「えぇぇぇ・・・だってそうしないと私はまともに戦えないんですけど。」
「それはそうですけど・・・アニータ達にちゃんと教えないといけないんです。
今変な事を見せられるとそれを真似しそうで・・・」
「そこはちゃんと教育すれば良いでしょう?
それに今回はわざわざ上段に構えて貰ってさらには正対するという条件でしたからね。
これは戦闘時にはあり得ませんよ。
試合とか訓練とかでしか出来ないでしょう。」
「そうですか?」
「ええ、そうですよ。
戦闘中に止まって構えて真正面から打ち込む馬鹿がどこに居るのですか?」
「・・・確かに。」
ブルックが頷く。
「所長は剣技をどう考えておいでですか?」
アーキンが聞いて来る。
「私の考え?・・・私は素人なのですけど。」
「だからこそお聞きしたいのですけど。」
「まぁ・・・良いでしょう。
とりあえず素人知識を聞いて貰ってアーキンさん達に判断して貰えれば良いでしょうか。
わかりました。
じゃあアーキンさん、立ちなさい。
木剣はありますか?」
「はい、こちらに。」
武雄とアーキンが席を立って武雄の話を聞くのだった。
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