第725話 情報網の整備案。
エイミーとアンとクリナは「また明日にでも来ます。」と今日は退出して行った。
残されたのは武雄とアリスとヴィクターとジーナ。
「さてと、寄宿舎の大まかな対応はわかりましたね。」
武雄がため息つく。
「相応の準備は始まっているのですね。
ですが、ジーナはまだ寄宿舎には登録していないのですが、平気でしょうか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「スミス坊ちゃんと寄宿舎の部屋を見に行った時にでもその辺の登録の仕方を確認しようと思っていたのです。
なので後日その辺はしないといけないですね。」
「ご主人様。アリス様。先程は殿下方の手前すぐに頷きましたが、本当に何かあった場合には相手と戦ってよろしいのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「ジーナちゃんが戦闘をして良いのは自身の防衛かスミスを守る時だけでしょうから、相手の命を取らなければケアで治せますし問題ないですね。」
アリスの言葉に武雄も頷く。
「ジーナはあくまで防衛行動時のみ戦闘をして構いません。
あとはのらりくらりとしていなさい。その辺の耐性は・・・まぁのちのち鍛錬するしかないでしょう。
そして嫌な事をされたら、その時の状況を詳しく書いてくれればこっちで処理しますからね。」
「そうですね。
生きた情報はすぐにください。その方が先手を取れますからね。」
二人ともジーナの実力行使には何とも言わない。
むしろ嫌なことをされたら「さっさと報告して」と念を押す。
「主、先程は抗議をしに行くと言っておりましたが、本気でしょうか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「ええ、抗議する正当な権利はあると思っていますよ。
まずは管轄する貴族会議には抗議と謝罪を。
寄宿舎に対しては担当の職員に事実確認を。
あとは相手の親御さんには挨拶をしにいかないといけないでしょうね。
まぁ事実確認するにしてもボールド殿達も含めて多数の観点からも聞かないといけないでしょうからその辺の関係維持も大切でしょうね。」
武雄は思案しながら答える。
「そうですか。
主にしては真っ当であり常識的で安心しました。」
「私は常識人ですよ、割と。」
「「割と?」」
「ええ、割と。」
ヴィクター達が首を傾げて聞いてくるが武雄はただ頷くのみだった。
アリスはそんな主従を見ながら朗らかにしている。
「さてと、彩雲、朝ぎ・・・あれ?」
武雄が彩雲達を呼ぼうと桶の方を向くとそこには透き通った鳥とこぶし大のスライムが14体桶に居たりする。
「ん~?・・・スライムが増殖していますね。
待っている間に食べ終わってしまいましたかね?」
アリスが苦笑している。
ヴィクター達も桶を見る。
「主、彩雲殿が来ていたのですね。
動かないので調度品かと思っていました。」
「私もです。
朝霧達と一緒にいたので気配がわかりませんでした。」
ヴィクター親子が抗議してくる。
「ふふ、朝霧達が多くなってしまいましたか。
・・・あ、ついでにちょっとしますか。」
と武雄がリュックをゴソゴソと漁りだす。
・・
・
「さてと、朝霧達、彩雲、お出で。」
武雄がリュックから出してきたのはアズパール王国の全土の地図だった。
それを机の上に広げる。
「はっ!」
彩雲はピョンピョンと飛びながら朝霧達はスススーと机にやって来る。
「さて。彩雲、先ほどエイミー殿下、クリナ殿下、アン殿下に話した内容はそのままエルヴィス伯爵に伝えなさい。
もしエルヴィス伯爵側から何か訂正があるなら伝言を貰ってくること。」
「はっ!」
「ついでに・・・彩雲、手紙は持って行けますか?」
「手紙・・・とは?」
「紙に文字を書くので吸収しないで持って行けるかという事です。」
武雄がその辺にあった紙を持ち上げて言う。
「紙・・・した事がないので判断しかねます。」
「・・・なら今回してみましょう。
飛行に問題があるなら吸収して構いません。
後程書きますから持って行ってください。」
「はっ!」
彩雲が頷く。
「さて。
朝霧(緑)と朝霧(黒)は1体ずつここに置きますが、それ以外の10体については王都の城門横の森からエルヴィス邸までの専用通路作成に加わりなさい。
今はまだ人間が活動しています。
寝静まってから城門外に出て城門横の森に入りなさい。
現状。毎日2体ずつ森に放していますし、街道沿いに試作の通路を作っていますが、それが終われば森の中をほぼ真っ直ぐに通れるようにする工事を始めましょう。」
「ご主人様、それは私への対応ですか?」
ジーナが聞いてくる。
「それもありますね。
表立っては伝令か商隊に頼んで手紙を送って貰いますが、ジーナにはスライムを渡しておきます。
用件を伝えて分裂させ、エルヴィス邸まで行かせてください。
商隊よりも早く、そして正確な事情が伝えられるはずです。
それに4月の寄宿舎に入るまでに通路を作っておかないといけませんからね。
今の内から準備はしなくてはいけないでしょう。」
「わかりました。」
「主、王都の城門横の森から寄宿舎まではどういたしますか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「何とも言えませんね。
王都内の地理が今一つですね。
通して良い場所と悪い場所が存在しているはずです。まずはそこの見極めをしてからでしょう。
その時は新たに彩雲にスライムを作って貰います。」
「はっ!」
彩雲が頷くのだった。
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