第724話 寄宿舎の生活。
「ちなみになのですが、エイミー殿下。
寄宿舎にいる際の月々のお小遣いはいくら必要なのですか?」
武雄がエイミーに聞いてくる。
「え?・・・あぁ、私は金貨4枚ですね。
何だかんだ言ってかかりますから。
男性はわからないですが、寄宿舎に居ればご飯は出ますし、買うのは授業で必要な物ぐらいですから・・・
たぶん銀貨5枚もあれば生活は出来ると思いますね。
まぁ貴族であれば金貨2枚あれば事足りるでしょう。」
「ちなみに制服はあるのですか?」
「一応ありますね。
男女関係なくブレザーにズボンですが。
入学の2週間前までに申し込みを終えておけば、入学式2日前までに出来ていますよ。
ですが、基本的には制服は入学と卒業の時ぐらいしか着ません。
授業は私服で受けて構わない事になっています。」
「そうですか。
逆に普段制服で過ごす方はいますか?」
「いるにはいますが・・・少数ですね。」
エイミーが首を傾げ考えながら言ってくる。
「ふむ・・・」
「タケオ様、どうしましたか?」
「いえ、制服があるのに着ないという感覚があまりわからなくてですね。」
「そうなのですか?」
エイミーが聞いてくる。
「私が居た所は基本的に学び舎に行く者は各学び舎で制服が存在していて基本毎日着ていましたよ。
そこに貧富の格差はなく誰でも同じ制服でした。
まぁ持ち物とかは流石に親の経済格差が出ますけどね。」
「んー・・・結局の所、制服を着ているのは貴族以外の子弟ですかね。
貴族は制服を着るのは最初と最後だけですね。」
「そうですか。
・・・確か、王立学院は全貴族の男子は必須、貴族の女子は任意でしたか。
あとは1貴族と1騎士の推薦状があれば民間からも入学が出来るのですよね。
生徒数は毎年30名程度で全体で100名居るか居ないか程度でしたでしょうか。」
「そうですね。
タケオさん、何かあるのですか?」
「いえ・・・特には。」
武雄はエイミーにそう答えるが目は斜め下を見ている。心の中では「これは女性はいないな」と思う。
「エイミーお姉様、学院は女の子はどのくらいいるのですか?」
「ほとんど居ないわよ。」
アンが考えながらエイミーに聞くが即答される。
「え・・・エイミーお姉様、ほとんど居ないのですか?」
クリナが驚きながら聞いてくる。
アンは固まっている。
「ええ。貴族以外で入って来る生徒は皆男性ばかりで女性は貴族であれば来るかもしれませんが、王都勤めの者しか来ませんから。
現状では私の他に1名しかいませんね。」
「それだと・・・女の子のお友達が全然出来ません。」
「確かに出来ないわね。」
クリナがガッカリしているのでエイミーが苦笑しながら会話をしている。
武雄はその様子を見ながら「やっぱりね」と思うのだった。
「貴族にはお付が許されているのですよね。」
アリスが聞いてくる。
「はい。私はメイドを連れて来ています。
どこか行くのに同伴して貰ったり一緒に授業も受けるので年齢が同い年くらいの者を付けますね。
エルヴィス家のスミスはもう決まりましたか?」
「ジーナをお付に入れます。」
「エイミー殿下、4月からよろしくお願いいたします。」
武雄が言うとジーナが深々とお辞儀をする。
「・・・異種族で異性・・・」
エイミーが固まる。
「ジーナに人間社会を見せたいので入れます。
エルヴィス伯爵からもスミス坊ちゃんからも許可は得ています。」
「・・・だから寄宿舎内が慌ただしいのか・・・」
エイミーが考えながらボソッと呟く。
「「慌ただしい?」」
武雄とアリスが聞き返す。
「いえ・・・何でもありません。」
エイミーがすまし顔をする。
「慌ただしい?」
アンが聞いてくる。
「・・・何でもありま・・・せんよ。」
エイミーがはにかむ。
「慌ただしい・・・?」
クリナも首を傾げながら聞いてくる。
「・・・」
エイミーは「何でアン達が乗っかるかな?」とジト目で武雄を見るが「私は何もしていませんよ。」と苦笑する。
「はぁ・・・なぜかこの時期に貴族以外の部屋替えの連絡がされています。
なので皆が引っ越し準備をしています。」
エイミーがため息混じりに答える。
「それは珍しいのですか?」
アリスが聞いてくる。
「基本的には入学してからの部屋替えはありません。
余程な事がない限り3年間同じ部屋で過ごします。
それに王家と貴族とそのお付きは学院長や職員が居る棟で他の方々は違う棟になりますし、貴族以外は私達の部屋には来れず、1階のフリースペースで会うことになります。」
「エイミーお姉様。今回は余程な事なのですね?」
アンが聞いてくる。
「まぁ、ジーナが入るならかなり厳重な態勢を取るのでしょうね。」
エイミーがため息をつく。
「面倒な子が?」
「ええ、問題児が居ます。
居ますが・・・貴族にちょっかいを出すかというと・・・判断が難しいですね。」
エイミーが難しい顔をさせる。
「エイミーお姉様、問題児ってどんな方なのですか?」
「不真面目、傷害沙汰が数件、教師と対立、ほかいろいろね。」
「・・・ジーナちゃん。」
「はい、アリス様。」
「その者達が何かして来たら腕の1、2本は骨折させて良いですからね。」
アリスが目を細めながら言う。
「はい、わかりました。」
ジーナも普通に頷く。
「えぇぇぇ!?アリス様!タケオさんでなくてアリス様が言うのですか!?」
アンが驚きながら言ってくる。
「そうですよ、アン殿下。
ジーナちゃんに何かしてくるという事は私達エルヴィス家と事を構える気なのでしょう?
ならスミスが舐められる訳にはいきません。
エルヴィス家のお付として全力で排除するしかないでしょう。
ジーナちゃん、私が何とかしますからやってしまいなさい。」
「はい、わかりました。」
アリスの宣言にジーナは頷く。
アンとクリナは「貴族に喧嘩を売ればそうなるのはわかる」のだが、アリスが前面に出て来る事を宣言し威圧出来る事が改めてわかり「鮮紅の弟」は後ろ盾が別格なのだと思うのだった。
「タケオ様、よろしいですか?」
「良いのではないですか?エルヴィス家を貶められるのなら対抗するのは当たり前でしょうから。
まぁジーナは私の部下ですから、被害にあうのだったら私は王都に抗議と謝罪に行かないといけないですよね。
さて、どこに抗議に行きますかね。」
「そうですね、腕を折った後ですものね。」
「確かクラーク議長が学院長代理でしたよね。
まずここに抗議と謝罪をして、次にその問題児の親に挨拶に行かないといけないですかね。」
武雄が思案する。
「あ、タケオさんは実力行使はしないのですね。」
クリナが一瞬ホッとする。
「ええ。ジーナには相手の命を取らない程度で撃退して良いというのは私も命令を出す気でいます。
ですが、襲った事に抗議はしますが、相手は無傷ではないでしょうからその件についての謝罪は必要でしょうね。
あとは話合いで何とかするしかないですけど。」
武雄がため息をついて話す。
「はぁ・・・そうならない為にも今寄宿舎内は改造中です。
私も目を光らせますから穏便にお願いします。
たぶん学院の教師陣も同じ気持ちかと思います。
それにタケオさんに喧嘩を売るという事は研究所に喧嘩を売るという事でもあります。
王立の研究所に喧嘩を売って同格組織が王都守備隊、上司はお爺さまですから。
貴族会議程度では収まらないぐらいの逆鱗が待っている可能性もあります。
もちろん私も異性に手を上げる様な者を庇う気はありません。
ですのでタケオさんが相手の親御さんに謝罪に行くのなら生徒筆頭の私も同行するべきでしょう。
なのでとりあえずはこちらもいろいろな想定をして受け入れ態勢は整えさせて頂きます。」
エイミーがため息をつきながら武雄達に頭を下げる。
「エイミー殿下、すみませんがよろしくお願いします。」
「いえ、こちらとしても初めて異種族を入れますからいろいろと想定はするべきです。
ですが、我が国は法を順守してくれるならば種族は問わずに国民と認めています。
これは王立学院で学ぶ皆が知っている事です。
もしそこに付け入ってジーナを攻撃するならそれはこの国への攻撃です。
そんな輩は居ないと思っていますけどね。
あるのは先の通りの貴族へのちょっかいが怖いだけです。」
「そうですか。
それはそれで安心しました。
来年はまた違う人材を入れるかもしれませんから。」
「はぃ?ジーナがお付なのでしょう?」
エイミーが「何を言っているのですか?」と聞いてくる。
「はい、ジーナは1年間の予定です。その後は・・・エルフにしますかね。」
「・・・どんな種族でも問題ないですから!」
エイミーは「寄宿舎内が動き出そうとしているよ!?」と焦るのだった。
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