第699話 夕飯までの談話。(夕霧の内職。)
ジェシーとボールドが客間を去って、客間にはエルヴィス家の面々と武雄とフレデリックが残っている。
「さてと。
タケオ、フレデリック、今後のこの領地の話を少ししたがの。
実際問題はどうじゃ?」
「・・・フレデリックさん、私は嘘は言っていないつもりなんですが・・・」
「・・・そうですね。
半分程度しか言っておりませんけどね。」
武雄がフレデリックを見ながら話し、フレデリックはため息を付きながら答える。
「そうですね。
でもあとの半分は局長会議後でしたよね?」
「まぁそうですね。今の段階ではタケオ様の構想ですからね。」
「うむ、人工湖と米じゃからの。
どちらも大規模な発展計画ではあるがの。」
「お爺さま、ジェシーお姉様にはその辺は言わなくて良かったのですか?」
スミスが聞いてくる。
「うむ・・・川に手を入れる関係上、下流の貴族であるジェシーには言っても良かったかもしれぬが・・・
今の所人工湖の話はエルヴィス家とゴドウィン家だけの話だけではないからの。
ウィリアム殿下やロバートも交えて話さなければ意味がないのじゃよ。」
「そうですね。
卸売市場の根幹である船の流通網ですしね。」
エルヴィス爺さんの説明にアリスが頷く。
「そして米についてはまだまだ試作の前、入手が出来るかの段階ですから。
他領の人に話すなら最低でもウスターソースやウォルトウィスキーくらい商品が出来てからでないと意味がないでしょう。」
フレデリックも頷く。
「米についても私が王都に向かってからジーナの叔母さんの報告が来るのでしょうね。」
「じゃろうの。
だが、先にタケオと決めた内容内なら上手く対応しておくからの。」
「はい、すみませんがお願いします。」
武雄が頭を下げる。
「あ、そう言えばヴィクターとジーナの紹介が出来ませんでしたね。」
「そう言えばそうじゃの。」
「夕飯後にするしかないでしょう。」
と客間の扉がノックされエルヴィス爺さんが許可を出すとメイドとお盆を持った夕霧が入って来る。
「失礼いたします。
キタミザト様、夕霧様の作業が終わりましたのでご報告と確認をしに参りました。」
「タケオ、言われた事終わったよ。」
メイドと夕霧が挨拶をする。
「はい、ご苦労様です。
すみません、私が付きっきりでやれれば良かったのですが。」
「いえ、こちらも代わる代わる火の番をするぐらいでしたので問題はありません。
それよりも夕霧様。」
「ん、タケオ、見てください。」
メイドに促され夕霧がお盆を武雄の前に持って来る。
「ほぉ。」
武雄は感嘆の声を上げる。
お盆の鉄トレイには一面にピンク色の板状の物が出来上がっていた。
「ふむ、タケオが出かける前に言っていた『消しゴム』じゃの。
タケオ、どうじゃ?」
「ええ、見た目は問題ないと思います。」
武雄はそう言うが「若干さくら色の薄いピンクなのは・・・いや色は関係ないですね。」と思うのだった。
「「これが消しゴム。」」
アリスとスミスが覗き込みながら言う。
「夕霧、ちゃんと言われた分量でしたのですね?」
「ん、言われた通りにしました。
赤2、緑1、青1、白1、黒1の割合で沸騰したお湯に容器を入れて湯煎?とか言っていた方法でかき混ぜたらこうなりました。」
「ちなみに何時間かかりましたか?」
「キタミザト様、実は・・・鐘2つちょっと・・・懐中時計で言うと7時間と少しです。」
武雄に聞かれたメイドが難しい顔をさせながら言う。
他の面々も長時間過ぎて難しい顔をさせる。
「そうですか・・・結構時間がかかりましたね。
夕霧、長時間ご苦労様でした。」
「ん。」
「まずは性能を見ましょうか。
夕霧、トレイを机に置いてくれますか?」
「はい。」
夕霧がトレイを机に置くと武雄は1㎝角に切る。
そして用意していた紙と鉛筆で線を書くと消しゴムで消す。
「本当に線が消えました!」
スミスがその様子を見て驚く。
「「ほぉ。」」
エルヴィス爺さんとフレデリックが感心しアリスは「へぇ~」と興味深そうに見ている。
「性能は申し分ないですね。」
武雄が頷く。
「あ、タケオ様、消した後にゴミが残ってしまっています。
これはそういう物なのですか?」
スミスが気が付く。
「そういう物ですね。
朝霧居ますか?」
武雄が呼ぶと武雄の足元に朝霧が寄って来る。
すると武雄が机から消しカスを床に落とすと朝霧が吸収していく。
「はい、ありがとう。
というわけでエルヴィスさん、フレデリックさん、これが鉛筆と消しゴムになります。」
「うむ。
鉛筆で書いた物を消しゴムで消せるというのはわかったの。
さて・・・消しゴムの生産は出来るようになったがの・・・7時間かぁ・・・長いの。」
「そうですね。
タケオ様、これはハワース商会に作らせるのですか?」
「そのつもりです。
私の中では黒板と鉛筆、そして消しゴム。筆記用具はハワース商会で作って貰おうかと思っています。
まぁ将棋とリバーシの玩具も作らせますけど。」
「ふむ・・・民間人が試験小隊の訓練場内の小屋に近寄るのは難しいでしょうね。」
「ええ。
最初に言った各スライムの体液をエルヴィス家で管理して販売するという方法が今は一番かもしれません。」
「そうですね。
それに緑スライムの体液を利用しての新しい肥料の試験もしますから・・・
スライムの体液の事業は経済局で一括でした方が良いかもしれません。
ハワース商会には数個の小樽での販売をするという所ですね。」
「ふむ。
あとは卵の殻の事業もあるから、環境局と経済局との連携も必要じゃの。
フレデリック、これは夕霧達の居住地区の管理と一緒にその辺を一元管理する部署が必要かもしれぬの。」
「はい。
ではそちらも局長会議行きですね。」
「うむ、滞りなく夕霧達と連携する方法を考えないといけないの。」
「はい。」
フレデリックが頷く。
「よろしくお願いします。」
武雄も頭を下げるのだった。
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