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第697話 ジェシーと武雄の相談。1(武雄側の王都との付き合い方。)

玄関を入るとフレデリックが丁度いた。

「タケオ様、ミア様、お帰りなさい。」

「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」

「戻りましたー。」

屋敷に入るなりヴィクターとジーナは武雄の後ろからフレデリックの後ろに移動する。

「店頭販売はどうでしたか?」

「盛況でした。

 事前に用意出来た小樽は完売、あと数件の酒屋等への樽での納入も決定したと言っていました。」

「ふむ、出だしは良さそうですね。」

「はい。

 たぶん平気でしょうが、目先の利益で品質が落ちないようにしないといけないでしょう。

 一応念押しはしておきました。」

「わかりました。

 総監部からも誰か定期的に見に行かせましょう。」

「すみませんが、よろしくお願いします。」

武雄がフレデリックに礼をする。

「それとジェシーお嬢様とゴドウィン伯爵領からの新貴族になったボールド男爵が参られています。」

「そうですか。

 客間ですか?」

「はい。

 皆さまお待ちかねです。

 たぶん夕飯後には今後の話合いになると思っております。」

「ではヴィクターとジーナを紹介しないといけないですかね。」

「そうなりますね。」

「わかりました。」

武雄達は客間に移動するのだった。


------------------------

客間の扉をフレデリックがノックする。

中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。

「主、タケオ様が戻られました。」

中にはエルヴィス爺さんとアリス、スミス、ジェシーとボールドが居た。

「失礼します。エルヴィスさん、アリスお嬢様、スミス坊ちゃん、戻りました。」

「うむ、タケオおかえり。」

「「タケオ様、おかえりなさい。」」

「ジェシーさんもお久しぶりです。」

「はい、タケオさんもお久しぶり。

 で、こっちがうちから王都に送り込むスタンリー・ボールドよ。」

「お久しぶりです、キタミザト子爵様。

 この度、王都勤めになりましたスタンリー・ボールドと言います。」

「貴方でしたか。

 その節はありがとうございました。

 貴方に発見されて今の私が居ます。本当にありがとうございました。」

武雄がボールドに頭を深々と下げる。

「タケオさん、確かボールドとは初めてではなかったのよね。」

「はい。エルヴィスさんと一緒に最初に見つけて貰ったのがこの方でした。」

「うむ、そうじゃったの。

 随分と昔の事のようにも感じるがの。」

「タケオ様は濃密な時間を過ごしていますからね。」

「全くですね。」

エルヴィス家の面々が武雄を評する。

「やりたい事をしているだけなんですけどね。」

武雄は苦笑するしかない。

「タケオさん、帰ってくるまでアリスから一連の王都関係は聞いたわ。

 ご苦労様、そしてありがとう。

 まさかうちから貴族を出せるとは考えていなかったわよ。」

ジェシーが頭を下げる。

「私が何かをしたと言うより王都側が勝手にしたと捉えるべきかと思います。」

「そうね。だけどその切っ掛けはタケオさんだという所は事実でしょう。」

「・・・その通りではありますが。

 貴族はなりたくてなっていませんから・・・・嬉しさはあまりないですね。」

「そう・・・本心としてはそれで良いですけど。

 その言葉を使うのは相手と場所を選んでくださいね。

 特権階級を民の為の施政者(・・・・・・・)と考える者か人間種の上位(・・・・・・)と考える者かは見た目ではわかりませんからね。」

「はい、わかっています。

 少なくとも相手は見ているつもりです。

 ですが、私は表立って地位(・・・・・・)を守りません(・・・・・・)から私の態度からわかっている者はいると思います。」

「タケオさん、見てわかるというのは知識がある者か観察力がある者でしょう。

 そういう輩はタケオさんを警戒するはずです。

 今まで貴族という特権階級を辞退する者は少なかったはずです、少なくとも今の貴族達には居ないでしょう。

 自身と違う考えを持つ者が居るのならまずは敵対も陣営に引き込みもせずに観察をするのが一般的だと思います。」

「はい。

 前回の王都で私に近寄って来た(・・・・・・・・)のは王家と貴族会議議長と宰相、そして専売局長ぐらいですから。」

「んー・・・タケオさん、その人脈はどうやって手に入れたの?

 うちのボールドも出来る?」

「ジェシー様、無理です・・・」

ボールドが苦笑しながら言ってくる。

「主にどこぞの最高権力者経由がほとんどですが・・・

 割と皇子達が私と接点を持とうとしていますね。

 専売局の局長達は自身の局の存在感を高めるのに研究所という使いやすそうな部署(・・・・・・・・・)を見つけられたようでしたし。

 事実、先に王都に行った際にそれなりに相談も受けています。」

「まぁ今までは自分達のみがしていた事を研究所がその一端を担うのなら興味は引きそうね。

 そして面倒な所を(・・・・・)研究所に任せて(・・・・・・・)自分達は楽をするかもね。」

「それはお互い様ですね。向こうにも思惑があり、こちらにも思惑があります。

 私としては専売局から直接購入できるようになる事よりも今までの知識(・・・・・・)と一緒に仕事を依頼してくれる事でしょうか。

 時間と労力を譲ってくれるというのですから多少の面倒な作業はするしかないでしょう。

 それに向こうの依頼を聞くという事は専売局長から直接研究所所長()への正式依頼(・・・・)となります。

 この流れはなかなか手に入らない貴重な物でしょう。」

「研究所は独自に物を仕入れるの?」

「いいえ。向こうの作業を減らす為にエルヴィス家と合同で発注するように依頼されています。

 なので結果的にエルヴィス領に送られる品々は下っ端のみの発注作業(・・・・・・・・・・)ではありません。

 万が一、納入された品の品質が悪ければ私が直接局長に嫌味を言える関係になるという事を向こうは知っています。

 そうなると少なくとも中堅クラスの人が品質のチェックをするでしょう。

 これまでより確かな物が流れて来ると思います。」

「そうかぁ・・・タケオさんは着実に王都とのつながりを作っているのね。

 うちとしてはどう動くと良いと思う?」

「そうですね・・・ゴドウィンさんが何をしたいかに寄るかと思いますが・・・」

「タケオさんの目的は何?」

「エルヴィス領の発展とエルヴィス家の地位確保。」

武雄は即答する。

「なるほどね。

 ゴドウィン家(私達)としてはゴドウィン家の地位確保が優先ね。

 正直に言えば今のエルヴィス領のような急速な発展は(・・・・・・)望んでいないのよ。

 多少は恩恵に預かれればと思っているけどね。」

「競合が隣に居なくて良かったです。

 市場の共食いはしたくありません。」

「うちだってそうよ。

 新進気鋭の研究所を擁するエルヴィス家と対決はしたくないわ。」

ジェシーが苦笑するのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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