第689話 66日目 エルヴィス家の夕方。(ジーナへの教育方針。)
この段階でエルヴィス家の姉弟が起き始める。
「・・・ん?・・・あれ?フレデリック達が来ていましたか。」
「んん~??・・・あれ~?ジーナも居ますね。」
スミスとアリスが室内をキョロキョロしながら現状を確かめる。
「うむ。おはよう、2人とも。」
「アリスお嬢様、スミス坊ちゃん、おはようございます。」
エルヴィス爺さんと武雄が朗らかに話しかける。
「「おはようございます。」」
「それでじゃがの。
スミス、寄宿舎へのお付はジーナに決まったからの。」
「そうですか・・・ん?・・・ジーナ?」
「はい。スミス様、よろしくお願いします。」
スミスがジーナに顔を向けジーナがお辞儀をする。
「・・・はぁ、わかりました。
ジーナは一緒に3年間寄宿舎ですか?」
「違うの。とりあえず1年間はジーナにも行って貰うが2年目3年目については選考中じゃ。」
「?・・・タケオ様、何を考えていますか?」
アリスが武雄に質問をする。
「いえ特には。
とりあえずジーナが1年間行って見聞を広める良い機会としか思っていません。
来年以降はまた私とエルヴィスさんとで考えます。」
「うむ。まぁスミスはどんなお付が来ても動じないようにの。
今は今年の春の入学の事を考えれば良いからの。」
「わかりました。」
スミスが頷く。
だがアリスは何やら思案している。
「さて、そんなわけでジーナがとりあえず1年間行ってくれるが・・・初期の執事の教育は終わったの。だが護衛者としての教育が残っておるのぉ。」
「護衛者ですか。
んー・・・ヴィクターとジーナの戦闘は見てはいますが・・・
寄宿舎内のお付に剣を持たせると面倒そうですよね。」
武雄が腕を組みながら言ってくる。
「そうじゃの。ただでさえ異種族だからの。
なるべく難癖つけられる物は持たせられないの。」
「なら剣以外なら常備しても問題ないでしょうか。」
「そうじゃのぉ。
あくまで自身の身を守る為の武器で敵の攻撃を防げて刃傷沙汰にならない程度に相手を倒せる力であれば問題ないと思うがの。」
「なるほど。ではジーナ用に護身用の携帯に便利な物を作ってみましょうか。」
「ふむ、何かあるかの?」
「警棒とか良さそうですよね。
4段式ならジーナの移動にも差し支えなさそうですし。」
「「「警棒?」」」
エルヴィス家の面々が首を傾げる。
フレデリックが「警棒ですか」と頷いている。
「ええ。伸縮させる鉄製の棒です。
4段式で格納している時は20㎝程度で伸ばせば70㎝程度になる物を考えていますけど。」
「タケオ様。第1から第3小隊が持っている警邏用の警棒は木で作られていますが、それとは違いますか?」
フレデリックが聞いてくる。
「はい。私の感覚としては木は剣に対して壊れやすそうですし、持ち運びに不便そうですから、短く収納できる物を用意すれば寄宿舎内でも持ち運びが楽なのではないかと思ったのですけども。
さてどこで試作するか・・・テイラー店長に頼みますかね。」
「ふむ、まぁ殺傷能力が高い物でなければ良いがの。」
「どんな武器でも殺傷能力は拳よりかは高いとは思いますけどね。
刃がない分だけ剣より下という感じです。鉄の棒で叩かれるのは痛いですしね。
ジーナの武器は私が用意しますが・・・剣術は誰が教えれられそうですか?」
「ふむ・・・フレデリック、ハロルドが良いかの?」
「ええ、騎士団なら問題ないでしょう。
ですが、ジーナは魔眼が使えるそうですから騎士団だけでは少し心許ないですね。」
「ではそこは私がしましょうか。
私も身を守るだけの剣術は必要ですし。」
「いやいや、アリス、お主は前に剣術をしていたではないか。」
「最初の所だけです。
打ち合いとかはしていませんし。」
「・・・まぁ、お互いに怪我の無いようにの。」
「はい。」
「あとは当面の基礎知識ですが・・・エルヴィスさん、誰が適任でしょうか?」
「うむ、そこはスミスじゃの。」
「そうですね。」
「僕ですか!?」
エルヴィス爺さんとフレデリックの決定にスミスが驚く。
「うむ。今まで学んだことを復習も兼ねてジーナに教えれば良い。」
「んん~・・・わ・・・わかりました。」
スミスが頷く。
「あとは日程的に始めるのは王都から戻ってからでしょうか。」
「うむ、それが良いじゃろ。
あと数日で出立だから今から替える必要はないの。」
「詳しい1日の行動予定は皆様が王都に行っている間に考えます。」
「はい、よろしくお願いします。」
武雄がエルヴィス爺さんとフレデリックに頭を下げる。
「ヴィクターとジーナは王都に行く準備は終わっていますか?」
「はい、大体はですが・・・あとは細々とした物を買い足すだけです。
明後日の開店している時に買いに行こうかと考えています。」
「ふむ・・・
フレデリックさん、執事は移動中はどんな武器を携帯するのが、一般的ですか?」
「ショートソードでしょうね。
あくまで執事として行くのであれば意匠が凝っている物は避けた方がよろしいかと。」
「ヴィクター、明後日にテイラー店長の所に行ってショートソードを買って来なさい。」
「はい、わかりました。」
「あの・・・ご主人様、私はどうすれば良いでしょうか?」
「ジーナは護衛用の警棒を作ってはあげます。
ですが、今回の旅では間に合いませんから長さが近い私の小太刀を貸しま・・・小太刀・・・かぁ・・・」
武雄が顎に手を当て悩む。
「あの・・・ご主人様?」
「ジーナ、当初の考えと少し違ってしまいますが、ジーナの警棒は長さ50cmの3段式にしましょうか。
そして小太刀と同じ長さで同じ重さにしましょう。」
「なるほど。タケオ様、考えましたね。」
フレデリックが武雄の意図に気が付く。
「閃きですけどね。
警護でも実践でも同じ仕様なら扱いやすいと思ったのと同じ仕様の武器を使うなら訓練が1回で済みますので楽かと思ったのです。
まぁ後々ジーナが武器を変えるのを押し留める物ではありません。
今は警棒を使っての打ち合いを習うなら実践でも使えるようにしておく方が理に適っていそうな感じですからね。
明後日ヴィクターがショートソードを買いに行く時に私も行きます。
注文してきましょうか。」
「あ、タケオ様、その伸縮式の鉄製の警棒が上手い具合に出来たら第1から第4小隊までの標準装備推奨品にしたいのでその旨も言ってきてください。」
フレデリックが何気に警棒に興味を引かれている。
「わかりました。」
武雄が頷く。
そんな武雄を見ながら「ご主人様と同じ装備だぁ」と少し嬉しく思うジーナなのであった。
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