第688話 エルヴィス家の夕方。(ジーナをスミスのお付として王都に送り込もう。)
「疲れたのぉ・・・」
エルヴィス爺さんが疲れ切った顔をさせてお茶をすする。
「そうですね。
さっきまで代わる代わる各組合が来ていましたしね・・・」
武雄もお茶の水面を見ながら答える。
「「・・・」」
アリスとスミスはソファにゆったりと腰かけながら夕寝をしている。
チビッ子達は・・・昼間から客間でドーンとお腹を出して大の字で寝ていたりする。
「うむ、年始の恒例行事じゃ。
明日から当分はのんびりじゃの。
タケオは出立の用意は出来ているのかの?」
「はい、馬車ですので衣服等は問題ないですね。
あとは食材を用意すれば問題ないと思っています。」
「ふむ・・・冒険者組合から貰った大袋じゃったかの?
あまり世には出さない物を貰えて良かったの。」
「エルヴィスさんは欲しくないのですか?」
「わしか?わしはいらんの。
総監部の方で2袋持ってはいるがの。
わしが移動する際は総監部と兵士が付くからのぉ。
武具やら資料やらは総監部の袋に入れて持って来てくれておる。」
「生産量が少ないと言われていますが・・・それほどなのですか?」
「うむ。
詳しくは知らんが、何でも編む糸に特定の宝石の粉を入れて縫い上げさらに裏側に特殊な魔法をかけるらしいの。
生産が年数個らしい・・・一般で買おうと思うと金貨2000枚はするらしいが?」
「・・・金貨11枚の代わりに貰ったのですけど・・・」
「冒険者組合からの期待からじゃろう。
なので向こうで買取をしたいと言われた魔物を討伐した際は持って行く事で借りを返せば良いのじゃ。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
と、客間の扉がノックされる。
エルヴィス爺さんが入室の許可を出すとフレデリックと執事とメイド長そしてヴィクターとジーナが扉を開け入って来る。
「失礼します。
本日はお疲れ様でした。」
「うむ、皆もご苦労じゃったの。」
フレデリックの言葉にエルヴィス爺さんも労う。
「これで年始の予定は終わりましたね。
さて主、タケオ様、ヴィクターとジーナの研修ですが・・・ほぼ終わってしまいました。」
フレデリックが真面目な顔をして言ってくる。
「・・・うん?まだかかるのではなかったのかの?
それに何か試験をするような事を言っていなかったか?」
「はい。ですが・・・何だか試験するのも面倒でして・・・」
フレデリックが明後日の方を見ながら報告する。
「ん?どういう事じゃ?
タケオ、わかるかの?」
「いえ・・・実はですね。
フレデリックさんから内々に言われて最近やった物の復習がてら今日の年始の各組合相手の行事で試験をしていたのですけど。
フレデリックさんの言い方からして問題はなかったのですね。」
「ええ。
お前たちはどう思いましたか?」
フレデリックが連れてきた執事とメイド長に顔を向ける。
「はい。
実際今日の各組合の方々に対しての受付、先導、配膳、お見送り・・・全てにおいて及第点と私は見ます。」
「私も初期の研修において全ての項目をクリアしていると思います。」
「といった感じでして。
新たに試験をしても時間の無駄になってしまうのではないかと・・・
なら新しい事をさせてみる方が良いかと思っています。」
フレデリックが苦笑する。
「ふむ、ヴィクターもジーナも優秀じゃ。
では2人とも初期の教育は終わったという事じゃの。」
「はい。
タケオ様、ヴィクターもジーナも執事として問題なく使用できます。」
「そうですか・・・
まずはヴィクター、ジーナ、研修お疲れ様でした。」
「「はい。」」
「年始ではありますが・・・そうですね、良い機会でしょう。
ジーナ、スミス坊ちゃんのお付の話はどうしますか?」
「はい。
ご主人様、伯爵様、私ジーナは1年間に限りスミス様のお付として王立学院に行かせていただきたいと思います。」
「ふむ。」
「そうですか。」
エルヴィス爺さんと武雄が頷く。
「お父さまと話をしまして、私達が自由になる25年後はスミス様達今の王立学院の者が幹部になっているであろう年数です。
ですので、私達の為に顔を知っておくことが重要だと。」
「それと前に私からも言わせていただきましたが、魔王国に無い学院という学び舎の制度は新たな刺激になるかと思います。」
ジーナとヴィクターが言ってくる。
「ふむ。」
「・・・エルヴィスさん、すみませんがスミス坊ちゃんのお付をジーナにさせて貰えますでしょうか。」
「タケオ、そもそもわしもジーナが適任だと思っておる。
なので1年でもスミスの傍に居ってくれるのはありがたいと考えておる。
だが、2年目以降はどうするかの。」
「私が王都に行った際にジーナが望めばそのまま2年目もありかとは・・・
ですが、現状ではないので代わりを派遣しようかと思います。」
「ふむ。タケオ、どうしたいのじゃ?」
「王都の意向は『異種族を入れて様子を見たい』という所です。
なら次に送り込めるのは・・・」
「アニータとミルコですね。」
フレデリックが聞いてくる。
「はい。初年度はいろいろと不慣れなので執事が必要でしょうが、2年目以降はスミス坊ちゃんが慣れてくるでしょうから手伝いは必要ないかと。
ならその段階で必要なのは執事ではなく護衛者なのではないかとも思うのです。
まぁあくまでも私の考えなので実際はどうなるかわかりませんが。」
「いや・・・タケオ、それは上手い手かもしれぬの。
あの2人は先のタケオの作業服の試験での魔法師としての威力はわかったからの。
なら同年代の護衛であの2人に敵う者が居ないくらいに育てられたら・・・ふむ、その考えは良いの。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「アニータとミルコには言っていませんので、もしかしたらエルヴィス家で用意して貰う事になるかもしれません。
ですが、私の予定としては1年後にアニータとミルコを王都に派遣出来るぐらいまでいろいろと教育はしてみようかと思います。」
「うむ。一応、わしらも用意出来るか考えてみるかの。」
「はい、それでよろしいかと。
本来なら私共がしなくてはいけない事をジーナが1年肩代わりしてくれますので、猶予期間と思って準備をいたします。
それにアニータ様とミルコ様に決まったとしてもこちらで準備した者はそのまま執事に移行しますので問題はないと思われます。」
「うむ。
ではタケオ、フレデリック、その様に進めようかの。」
「「はい。」」
タケオとフレデリックが頷くのだった。
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