第666話 試験だ!6(試験終了。)
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
武雄は試験終了線を越えた所で膝をついて肩で息をしていた。
映画とかで楽しく見ていたが想像以上に厳しかった。
ミアに至っては終了と同時に朝霧(黒)の上に腹ばいで乗っかりぐったりとしている。
ほふく前進の試験は優に30分以上続けられていた。
もちろん武雄は随時ケアをかけほふく前進をしていたので進む速度的には落ちはしなかったが、精神的に疲労困憊だった。
「所長、お疲れ様です。」
ブルックが近寄って来てにこやかに言ってくる。
「・・・ブルックさん達もずっと魔法を使っていたのに元気ですね・・・」
「まぁこのぐらいは・・・ね?」
「ああ。
ですが攻撃するこちら側からもキタミザト所長側の方が辛いだろうとは思えるくらいの訓練でしたね。」
アーキンも近寄って来て話しかけてくる。
「ん?アニータとミルコはどうしましたか?」
アーキンとブルックの傍に2名が居ない。
「はは・・・あっちの木陰で休ませています。
頑張ったので休憩です。」
ブルックの差す方向を武雄が見るとアニータとミルコが木を背に寝ている。
「ふぅ・・そうですか。
それにしても・・・ふふふ、今回の訓練・・・全員にさせますからね・・・」
武雄が恨めしそうにアーキンとブルックを見上げる。
「ははは・・・・えーっと・・・本気ですか?」
ブルックが恐々聞いてくる。
「ええ、本気です・・・絶対にさせます。
それこそ着任当日にさせてあげたい気持ちでいっぱいですよ。
なので2人には4月までにほふく前進の訓練の素案をアンダーセンさんに提出してください。
絶対に拒否なんかさせません。所長権限で実施させます。
部下共々皆この恐怖に打ち勝たせましょう!」
武雄が真顔で言ってくるが。
「えぇぇぇ・・・」
ブルックが嫌な顔をする。
「・・・なら選んで結構ですよ?
1つ、クゥとの実践形式訓練。2つ、コラ達魔獣との実践形式訓練。3つ、ほふく前進訓練・・・」
「えーっと・・・アーキン、どれがいいかしら?」
「そうだなぁ・・・」
アーキンとブルックが悩み始めるが。
「・・・面倒だから全部しますかね。」
武雄がボソッと言う。
「「えええええ!?」」
「ふむ、そんなに喜ばれると上司としてもやりがいが出ますね。
良いでしょう、部下の頼みです!
クゥにもコラ達にも報酬を出してやって貰いましょう。」
「3つ目!3つ目でお願いします!
1つ目も2つ目も勘弁してください!」
ブルックが懇願してくる。
「・・・じゃあほふく前進の訓練素案を出してください。」
「はぃ・・・」
「さてと、エルヴィスさんに報告に行きますか。」
武雄はそう言って朝霧(黒)ごとミアを抱える。
「はい。
あ~・・・一応、アニータとミルコを起こしてきます。」
「わかりました。」
アーキンとブルックが武雄から離れるのだった。
その後ろ姿を見ながら「まぁ4月までまだまだ時間はあるしね」と武雄は思うのだった。
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「エルヴィスさん、戻りました。」
武雄達がエルヴィス爺さんの所に戻って来る。
「うむ、ご苦労じゃったの。
それにしてもタケオ、顔が真っ黒じゃの。」
エルヴィス爺さんが苦笑する。
「まぁ・・・地べたを這いずりまわりましたしね。」
タケオも苦笑する。
「ご主人様、替えの制服をお持ちしました。」
ジーナが両手で目新しく、ちゃんと畳まれている制服を持って武雄の前に立つ。
「はい、ご苦労様。
ではエルヴィスさん、私は着替えてきます。」
「うむ。
それが良いじゃろう。
それと料理長達が端っこでジャガイモを蒸かしておったがあれが今日のおやつかの?」
「ええ。
小腹が空いたので食べながら総評をしたいと思います。」
「うむ。
わかった。」
「タケオ様、仮設のテントを用意していますのでそちらで簡単な湯あみと衣服を着替えてください。」
フレデリックが言ってくる。
「はい、わかりました。」
「ご主人様、仮設テントはこっちです。」
武雄はジーナに連れられて着替えに行くのだった。
・・
・
「ふむ、行ったの。」
エルヴィス爺さんが武雄の背中を見ながら呟く。
「総評はこの後ですね。」
スミスが聞いてくる。
「うむ。
タケオが居ないと意味がないからの。
それにしても・・・ずっとタケオは這いずって来たのぉ。
フレデリック、あの距離をあの体勢で移動することなどあるのかの?」
「そうですね・・・
どちらかと言えば冒険者達が狩りを行う際にはするかもしれませんが・・・正規兵ではしないでしょうか。」
「ハロルドはどう思うかの?」
「フレデリックの言う通りかと。
それにあの体勢は確かに見つからなかったり攻撃を受けづらいとは思いますが、移動する際は相当体力が必要なのではないでしょうか。」
「ふむ。
タケオはケアが使えるにも関わらずあの疲れようじゃからの。
一般の兵士では辛いかのぉ?
アーキンだったかの、どう思うかの?」
「伯爵様。
通常の戦争時には横一列での戦闘を想定してる兵士の教練にこれを入れる必要はないのではないでしょうか。
現状では私達、試験小隊の受け持ちである先行偵察時にほふく前進は使うと思います。」
アーキンが意見を言ってくる。
「ふむ、その通りかもしれぬが・・・
これは今決める事ではないの。
うちの兵士達も今回は見に来ておるからの。今回の試験を見て今後何かしらの訓練が起案されるかもしれぬの。」
「アリス殿との訓練の時に創案された回復戦法のようにですか?」
「うむ。
あれは有効であるという事がわかったからの。
今後も訓練を重ねて完璧に動けるようにしないといけないの。」
「あれは王都守備隊の中でも研鑽事項に上がっていました。」
「魔法師がほとんどを占めている王都守備隊であればなおの事有効活用が出来るじゃろうの。
だが、我々は魔法師が少ないからの。
効率の良いやり方を考えねばならぬ。」
「はい。
それも含めて私達試験小隊が戦術考察を行わせて頂きます。」
「ふむ・・・それも4月以降の話じゃの。
本格的に始まって見なければ内容の良し悪しがわからん。
今から『絶対に作れます』と豪語する必要はわし相手にはないの。」
「はい、ありがとうございます。」
「まぁ王都相手にはそうもいかんが・・・今はもう少し気を楽にしてくれて構わんよ。」
「はい」
アーキンが頷くのだった。
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