第665話 試験だ!5(武雄への意趣返し。)
武雄は小道の入り口でボーっとミアと森を見ている。
「・・・主、なんで私が一緒なのですか?」
ミアが武雄の肩に座り森を見ながら無表情でぼやいてくる。
「・・・苦楽を共にするのも部下との絆の構築に役立ちそうですからね・・・」
武雄も無表情で森を見ながら呟く。
「私、巻き込まれていると思うのですが?」
「・・・私とミアは一心同体!一緒にこの苦難を乗り越えましょう!」
「嫌です!」
「ほらほら、そんなことを言わずに。
バターサンドでも食べなさい。」
「私は・・・このぐりゃいで・・・篭りゃくなんか・・・されみゃせんにょ?」
武雄からバターサンドを貰いすぐさま口に運びミアがモグモグしながら抗議してくる。
「これが終わればのんびりとお茶ですね。」
「んぐっ・・・主、何か作るのですか?
朝の段階で料理長が何かわたわた動いていました。
・・・主、お湯が飲みたいです。」
「はいはい。
ジャガイモを現地で蒸かそうかと思ってですね。
昨日からお願いしていました。」
武雄は魔法で手のひらから滾々とお湯を出しながら説明する。
ミアが掌の湯を自分ですくい飲みながら聞いている。
「主が作るなら一風変わった物になるのですか?」
「変わっているかはわかりませんが、簡単な料理(?)をしたいだけですよ。
この試験では体力を使いそうですからね。
簡単に美味しく腹を満たせる物を作りたいだけです。」
「主が美味しいというなら絶対美味しいですね!」
ミアがこの試験の後の褒美を期待するのだった。
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「あの木と木の間には石を落としてはダメなんですね?」
「ええ、そうよ。
そこはうちの所長が通るからね。直接の攻撃は出来ないわ。
木の向こう側に確実に落としなさい。
難しいと思うなら少し遠くに落してくれて構わないわよ。」
ミルコの質問にブルックが答える。
「あのアーキン殿。
ストーンで上空に石を作って・・・あそこに落せばいいんですよね?」
「うん、そうだ。
あとは俺とブルックが上手くやる。」
アニータの質問にアーキンが答える。
アーキン達は試験開始場所の小道から武雄がほふく前進をする側を見て試験内容を確認していた。
ちなみにアーキンとブルックが武雄が通る場所の下見をしたのだが、そこには幅2mで20㎝程度の凹まされた道が出来ていた。さらには強襲試験用に身を潜める窪地を転々と用意されていたし、身を隠す為に木々を剪定していた事も発覚した。
それを見たアーキンとブルックは「どんだけ下準備をしたの?」と呆れるのだった。
アーキン達が攻撃して良いのは武雄が通る脇道の森の奥側2m以上向こうと決まっていた。
武雄への直接の魔法攻撃は厳禁。ただし、魔法が地面に付いた際に発生する爆風等の2次攻撃のみ許可されていた。
まぁ要は「怪我をさせない程度に戦場の雰囲気を作って」という要望を形にする為の演出だった。
だが、アーキンとブルックは王都守備隊の威光を見せつける良いチャンスと捉えているし、アニータとミルコの良い訓練とも思っている。
「準備は出来ましたか?」
訓練場側からテトが飛んでくる。
「はい。
テト殿、用意は出来ました。」
アーキンが答える。
「わかりました。
ミアにその旨は伝えます。
あ、誰か訓練場に向けて手を振ってください。」
テトの言葉にブルックが手を上げて振ると、訓練場からホイッスルが鳴るのだった。
・・・
・・
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「はぁ・・・はぁ・・・」
武雄は一心不乱にほふく前進をしていた。
もう周りはどこぞの戦争映画の状況になっている。
アーキンとブルックが武雄が作り出せないクラスのエクスを森の奥側にバンバン打ち込んでいる。
そしてなぜかエクスで木っ端みじんになったであろう石粒が武雄の方に飛んできている。
飛んできた小石で怪我はしないものの爆発とその後の上からの小石や土が舞っている状況はまさに「戦争映画」さながらだった。
「はぁ・・・なんで小石がこんなに・・・昨日の段階では岩なんかもなかったのは確認してるのに・・・
ちくしょう!狙われていないとわかっていても怖いわっ!!」
「主!あと半分です!」
5m先を行く朝霧(黒)+ミア組が声を大にして報告してくる。
ちなみに朝霧(黒)の体液を使って待っている間に武雄がお手製の簡易ヘルメット(麦わら帽子型)を朝霧(黒)とミアに渡していた。
「ミア!朝霧!ヘルメットは作りましたが、安全策を取って左の土手沿いに行きなさい!」
「はい!」
「・・・あと半分かぁ。
やるしかないな!もう!」
武雄は歯を食いしばってほふく前進をするしかないのだった。
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「ミルコ!脇道に寄りすぎている!
奥に50cm以上ずらしなさい!」
「はい!」
「アニータ!奥に行き過ぎだ!
手前に1m寄せろ!落とすタイミングをミルコに合わせるんだ!」
「はい!!」
アーキンとブルックはアニータとミルコに指示を出しながらも2人が作り出した落ちてくる石から注意を外さない。
アーキンとブルックがしている事はまず落ちてくる石を地上2m程度の所で石の上面にのみエクスを当て上半分を吹き飛ばす。
さらに下半分にはエクスでの加速を付け、地上に到達した際に割れないように強化をする。
そして後から落ちてくる石にも同様に強化をし、先に落ちた石に当てさらに爆発させていた。
そうすることで武雄には小石の粉塵と小粒が飛んで行くようにすると共に衝撃がより武雄に伝わるようにもしていた。
そこら辺の魔法師からすれば神業とも呼べる高水準の魔法運用を連続でしているのだった。
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「・・・ハロルド、これはどうなっておるのじゃ?」
エルヴィス爺さんが試験を見ながら隣に立っているハロルドに聞く。
「あ~・・・タケオと試験小隊のどちらの事を聞きたいのでしょうか?」
「どちらもじゃ。」
「タケオは何でしょう、必死に移動していますね。
それにしても近場であんなにバンバン小石が飛んで来たら精神的な負担は大きいでしょう。」
「ふむ。試験小隊の方はどうじゃ?」
「流石に王都守備隊員です。
あの精度で魔法を運用するとは・・・たぶんうちの魔法師達では出来ないでしょう。
タケオの部下はあと6名が王都守備隊ですが、あの2人は幹部ですらないのですよね・・・
はぁ、とんでもない小隊です。」
「ふむ・・・扱いづらそうかの?」
「どうでしょう?
エルヴィス家の小隊ではないので直接の指揮権はありません。
そう言った意味では楽ですが、もし一緒に戦うならどこまで我々に合わせてくれるのかが問題になってくるでしょう。」
「ふむ・・・
タケオの言っていた偵察型小隊というのはそう言った意味でも先見があったのかもしれぬの。」
「はい・・・生半可に上位技量を持つ小隊が戦線に配備されると皆の足並みが揃いませんから。
なら独断で皆と一緒の行動は避けると前々から言っておけば彼らは彼らで動きやすいのでしょう。
うちにとっても向こうに取っても住み分けをしておけばやりやすい事は確かです。」
「ふむ・・・そうか。
で?うちの小隊長連中はどうかの?」
エルヴィス爺さんとハロルドが兵士長達の方を向く。
「ん~・・・固まっていますね。
流石にこの技量を見せられたら自分たちの修練の違いがわかってしまうでしょう。」
「ハロルドはどうじゃ?」
「・・・騎士団も明日から訓練内容を変えます。」
「そうか・・・
より強力な兵士の育成をしないと彼らに笑われそうじゃの。」
「はい。
辺境の守り人が『こんなレベル?』と言わせる訳にはいきません。」
「うむ。
じゃが、あまり無理をさせる訳にはいかん。
我々はやれる範囲で最大限の効果をもたらせれば良い。」
「はっ!」
エルヴィス爺さんの言葉にハロルドが敬礼で答えるのだった。
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