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第663話 試験だ!3(武雄の対ブルックの強襲作戦。)

「・・・」

先ほど奥からホイッスルが吹かれ準備が完了したとの合図が来たのでブルックが試験開始の為に木剣を片手に小道をゆっくりと歩いている。

試験開始は小道と訓練場の広場との中間地点から。

「はぁ・・・さっきはまさか木の上に陣取っていたとは・・・

 普通は茂みに隠れて身を隠すんじゃないの?

 下ばっかり(・・・・・)見ていたわ・・・」

ブルックはさっきの事を思い出しながら愚痴っていた。

「もうすぐ開始線ですから私は後ろから付いて行きます。

 主を発見したら剣を主の方角に向けてください。

 主が居る所を指せたなら私がホイッスルを吹いて終わりです。

 また、主がブルック様を襲った時点で私がホイッスルを吹いて試験を終了となります。」

「ミア殿、わかりました。」

ブルックはミアに頷くとその場に一旦止まり精神を集中する。

ここから訓練場の広場まで約250m・・・絶対に見つける。

ブルックが気合を入れて開始線を越えるのだった。


------------------------

武雄は小道の脇に隠れてブルックを観察していた。

「・・・やる気出し過ぎじゃないの?」

と。あまり見過ぎるのもばれてしまいそうなので目線を逸らし、あくまで飛び掛かる方向のみを見つめその時を待つのだった。


------------------------

ブルックが開始線を通過し、ミアがホイッスルを鳴らす。

ミアが鳴り終わらすのをじっとしながら待っていた。

待ちながらも小道の奥を凝視し、どうやって探すかを考える。

小道を外れての捜索はダメだろう。あくまで小道からの目視(・・・・・・・)のみが許された手段。

距離は250m・・・10mごとに立ち止まり周囲を見回し発見をするしかないだろうと考える。

「よし!これで行こう!」

ブルックが意を決して歩き始める・・・歩き始めて5歩目の時。

「!?」

いきなり小道の脇から何かが走り込み、背後に周り込まれ口に左手を当てられ、右腕の上から左腹に手を当てられ、一緒に(・・・)左回転をしながら小道脇の茂みに倒れ込む・・・いや引きずり込まれる。

「終~了~!」

ミアがホイッスルを吹きながら終了を宣言する。

「ふががんごただて!?」

茂みの中では武雄に後ろから左手で口を押えられ、右手で武器を持っている右腕ごと抑えられ、さらには両足でガッチリと腰を挟まれていてブルックは身動きが取れなくなっていた。

「終了ですね。」

武雄が左手を退けて足も解き抑え込むのを止める。

だが両腕でブルックを後ろから抱きしめる形に変える。

ブルックも諦めているのか抵抗は全くしていない。

「・・・キタミザト殿、開始数歩なんですけど・・・」

「ふふ、まさか開始線上にいるとは思わないでしょう?

 さっきは下ばかり見ていたし、今は中間あたりを凝視していましたね。

 あまり考えを巡らせすぎてもダメですよ?」

武雄はそう言いながら拘束を解いてブルックの頭を撫でる。

「むぅ・・・私は26歳なんですけど・・・子ども扱いですか?」

「誰も見ていませんよ?

 たまにはアーキンさんに頭くらい撫でて貰いなさい。」

「公衆の面前でなくて良かったです・・・

 はぁ・・・敗者の勤めです。甘んじてこの屈辱に耐えますよ。」

ブルックがそう言いながら体の力を抜き、武雄に体を預けて朗らかな顔つきで少し頭を撫でられるのだった。

・・

ブルックがトボトボと訓練場の広場に戻って行く後姿を武雄とミアは見送っていた。

「主、上手くいきましたね。」

「初回くらいは成功させないといけないでしょう。

 問題は次のアーキンさんですよ。」

「主は何か考えているのですか?」

「全くと言って良いほど何も考えていません。

 ブルックさんと同じ方法を試すしかないでしょう。

 ミア、アーキンさんの所に行って待機していなさい。

 私はまたどこかに潜みますので。」

「わかりました。」

ミアが小道の入り口に戻って行くのだった。


------------------------

訓練場に肩を落としたブルックが戻って来る。

「どうであったかの?」

「開始早々の攻撃を想定すら出来ていませんでした。

 それに走り込んだ勢いのまま茂みに連れ込まれましたし・・・

 あれは兵士かどうかは関係なく防げないかと思います。」

エルヴィス爺さんの言葉にブルックが正直に答える。

「ふむ。

 だが、お主達は魔法師じゃ。

 魔法を使えば何とかなったのではないかの?」

「この試験で魔法を使うという事は私もアーキンも考えていません。

 そこまでする必要もないかと・・・いや、この次の索敵では使うかもしれませんが・・・」

「まぁ・・・ここまで3戦3敗だからの。

 次ぐらいは勝たないといけないかもしれないの・・・それにしてもタケオも意表を突く事を考えているのぉ。」

「はい、私達の上司は面倒なのを実感しました。

 まぁちゃんとフォローもしてくれるので安心ではありますが。」

「ふむ。

 そうか・・・でじゃ、アリスが用があるみたいじゃぞ?」

エルヴィス爺さんが明後日の方を見ながら言ってくる。

「アリス殿が?」

「はい、ブルックさん。

 タケオ様と茂みに入ってから出てくるまで時間が少しありましたが、何をしていたのですか?」

アリスが笑顔で聞いてくる。

「・・・」

ブルックは何も疾しい事はしていないはずなのに冷や汗が出てくるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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