第662話 試験だ!2(かくれんぼ。)
「・・・」
ブルックは慎重に周囲を見ながら進んでいた。
おかしい・・・発見が出来ない。
事前の説明で小道の両脇7m程度に区画を設けていると言われているが・・・どこだ・・・
緑色の服ならば目立たないように茂みの中にいるはず。
先に行ったアーキンは見つけたのだろうか・・・
ブルックは若干不安になりながら慎重に歩いていく。
ミアが周囲を警戒しているブルックから5m後ろをふよふよ漂いながら付いていく。
ミアはボーっとブルックを見ているが「・・・なんで主が見つからないんでしょう?あんなにわかりやすそうな所に座っているのに・・・」と思っている。
と、訓練場にブルックが着いてしまう。
「タケオはどこに居たのかわかったのかの?」
エルヴィス爺さんがブルックに問いかける。
「・・・伯爵様、キタミザト殿はちゃんと区画内にいたのでしょうか?」
「うむ。ちゃんと所定の位置に居たし移動もしておらんの。」
「そうですか・・・
すみませんが私ではみつけられませんでした。」
実は武雄は小道から2mくらい横の地面が割りと生い茂っている場所の木に登って上から幹に隠れながら観察をしていたのだが、あっさりと目の前を通過されていた。
武雄的に言わせれば「全体が見渡せそうだし、広場からもわかるでしょう?」という考えからだった。
実際、広場で見ている面々はアーキンとブルックが見つけられない事に驚いていた。
「うむ。
アーキンも見つけられなかったの。
では2人とも答え合わせと行こうかの。」
「はい。では私と一緒にタケオ様の所まで行きましょう。」
フレデリックに先導されアーキンとブルックが武雄の元へ向かう。
気になる面々も試しに見たいと後ろを付いていく。
・・
・
「「・・・」」
「どうも~♪」
武雄が木の枝に腰掛けながら手を振っているのを見てアーキンとブルックは言葉を発せられずにガックリとする。
「・・・なんで木の上に?」
ブルックがジト目で抗議してくる。
「下にいると広場から見えなそうでしょう?
それに茂みに居ないといけないとは言われなかった気がします。」
「それはそうですが・・・」
「あ、フレデリックさん、縄か何かありますか?」
「はい、どうぞ。」
フレデリックが縄を投げ寄越してくる。
「すみません。」
武雄は幹に縄を巻き、枝から降りてくる。
「いや~、登ったら降りれなくなりました。」
「子供のような行動ですね。」
「ん~・・・降りる方法を何個かは考えたんですが、どれも痛そうだったので。」
武雄が「あはは」と明後日の方を見ながら言う。
「さてと、次はアーキンさんとブルックさんを順次襲うのですね。」
「「反撃して良いでしょうか?」」
アーキンとブルックが真面目な顔つきで要望を出してくる。
「ダメに決まってい」
「木剣なら良いでしょう。」
武雄が断ろうとしたらフレデリックが許可を出してくる。
「ええぇぇぇ・・・
フレデリックさん、何故ですか?
この2人は王都守備隊です。戦闘の最高峰に位置しています。
素人の私では殺されかねません。」
「最高峰に居るからこそ身体が勝手に反応すると思います。
なら木剣くらいは許可をしないといけないでしょう。
それに次の試験は『接近に気付かれずに攻撃する』ですからこの2人の反撃の有無は関係ありません。
それにタケオ様なら対処出来るでしょうから。」
「過分な期待ですが・・・
まぁ良いです。
あくまで反撃だけです。
攻撃を仕掛けて来ない事が条件です。」
「ついでに2人同時で良いでしょうか?」
ブルックが言ってくる。
「それは絶対ダメ!
こっちに勝機がなさ過ぎます。」
武雄が即刻否定する。
「えぇぇぇ?だってさっきは見つけられなかったんですよ?
2人でも良いじゃないですか。」
「何を言っているのです?
さっきは隠れるだけ今度は接近するんですよ?
それに襲われる事がわかっているんですから2人がかりで見つけるのは卑怯です。」
「キタミザト殿が卑怯と言いますか?」
「兵士でない者の挑戦を王都守備隊が2名がかりで来るのはどうなのですか?
この国最高の兵士さん?」
「うぐ・・・」
ブルックが難しい顔をさせる。
「はぁ・・・ではキタミザト殿。
反撃はさせて貰います。
覚悟しておいてください。」
アーキンが言ってくる。
「・・・怪我をしたらケアをよろしく。」
「わかりました。」
「じゃあフレデリックさんが言ったようにこの試験は『接近に気付かれずに攻撃する』事ですからその目的が達成できれば良いです・・・
本当に反撃ありで良いのですね?」
「「はい!」」
アーキンとブルックがやる気の顔をさせる。
「・・・何でそこまでやる気を見せますかね・・・」
武雄がため息をつく。
「「王都守備隊の名誉挽回をします!」」
「・・・そうですか。
じゃあ2人は小道の入り口まで行ってください。
私は準備しますので。
木剣はどこかで手に入りますか?」
「確か小隊長が持っていましたね。
入口まで届けさせましょう。
開始はまたミア様のホイッスルで開始します。」
「「わかりました。」」
ミアとアーキンとブルックが去って行く。
・・
・
「で、タケオ様、勝機はあるのですか?」
「襲うだけですから・・・まぁ何とか。
反撃されるのは怖いですから慎重に動かないといけないでしょうね。」
「ふむ、何やら策があるのですね?」
「ええ。私はこの試験で作業服を採用させたいのですから。
昨日の深夜に夕霧達にお願いして少し小道脇を弄っています。」
「あぁ、だからですか。区画を作っている時に気が付きましたが、あの変な窪みはその為なのですね。」
「ええ、事前準備はばっちりです。」
武雄がニヤリと笑うのだった。
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