第659話 夕食後の報告会。
夕飯後、客間にエルヴィス家の面々が移動する。
フレデリックが食後のお茶を入れ、皆の前に置き、皆から少し後ろに下がる。
ミア達には今日はリンゴの搾りたてジュースが出されていた。
ちなみにヴィクターとジーナの報告は毎日されていて今日も夕飯前に終わって帰って行った。
「ふぅ・・・今日は何事もなかったの。
タケオもアリスものんびりじゃったの。」
「「はい。」」
タケオとアリスが頷く。
「スミスは何をしておったかの?
今日も勉強かの?」
「そうですね。」
スミスも頷く。
「ふむ・・・本当に何もなかったの。
フレデリック、領内はどうじゃ?」
「そうですね。
タケオ様の3案件は現状の変化はないですね。
各町の特産品祭りについては年明けの各局長会議での発表があるのでそれまでに会場の具体的な構想をあげる様にしていますし。
養鶏場については具体的に実施可能な各村への割り振りを試算しています。
融資案件についてはタケオ様の方からの貸付のおかげで、ライ麦のウォルトウィスキーとウスターソースでほぼ来年の融資案件として実施に向けての最終試算中です。
ウスターソースと文房具一式については総監部での取りまとめが終わりそうです。
明日辺りからヴィクター達の契約書のまとめ方の実習に移れそうです。
試験小隊の訓練場の建物建設は汎用品の小屋等ですのですぐに出来るでしょう。」
「ふむ。順調じゃな。
タケオの方はどうじゃ?」
「特にこれと言って・・・
あ、明日は作業服の試験ですね。」
「そうじゃったの。
昼過ぎ頃に実施かの?」
「わかりました、それで打ち合わせをしておきます。」
「うむ。
頼むの。
それとじゃが・・・ジェシーから手紙が来ておる。」
「「ジェシーお姉様が?」」
アリスとスミスが不思議そうな顔をする。
「うむ。
なんでも年明けの殿下方の挙式にはフレッドの代理でジェシーが出るとのことじゃの。」
「・・・あぁ。お姉様の所は次期当主はお姉様ですものね。」
アリスがため息をつく。
「うむ。
どうも向こうの魔王国側の関の状況が通常に戻っていないとの事じゃ。
ついでに新兵の合同訓練もあるしの。監督ついでに残っているとの事じゃ。」
「・・・それだけですか?」
アリスが訝しがりながら聞いてくる。
「うむ。
日時を合わせてアリスとタケオと一緒に王都に行くとの宣言が来ておるの。」
「確定なんですね。」
タケオが普通に返す。
「らしいの。
タケオ、年明けの移動はどう考えておるのかの?」
「そうですね。
今の所、私とアリスお嬢様とスミス坊ちゃん、護衛に試験小隊4名、御者兼執事にヴィクターとジーナを予定しています。
騎士団か兵士から護衛に何名か付けますか?
あ、エルヴィス家の馬車をお借りして良いでしょうか。」
「ふむ・・・タケオとアリスと試験小隊・・・王都守備隊2名が付くのじゃろ?他に護衛が必要とは思えんの。
それにうちの馬車で行くのが良いじゃろう。どうせ使わんしの。
フレデリック、ヴィクターとジーナは馬車を操れそうかの?」
「・・・確認しておりませんでした。
明日にでも確認して出立までに出来るようにしておきましょう。
馬車の操縦なら2名1組で良いと思いますので、タケオ様の仰る通りヴィクターとジーナでよろしいかと思います。」
「うむ。
それとタケオ。」
「はい、何でしょうか。」
「今回の招集では全貴族が集まる。そうすると全国の馬車製造工房が見本市をするはずじゃから見て来てくれるかの。」
「エルヴィス家のは買い替え時期なのですか?」
「タケオ様、エルヴィス家のは買い替え時期はまだ先になります。
どちらかというとタケオ様用の馬車の新調が必要かと思われます。」
「そうでしたね。
タケオ様は貴族ですから自身の馬車を作らないといけませんね。」
アリスが頷く。
「・・・馬車っていくらぐらいするのですか?」
「そうですね・・・
物によりますが・・・大体金貨100枚は見ておいた方が良いでしょうか。」
「・・・高いですね。」
フレデリックの提示した金額に武雄が疲れた顔をさせる。
「うむ。
だが貴族だからの。一応、馬車は必要じゃぞ。
華美にする必要はないが、それなりの物は必要になるからの。」
「前に言っていた貴族としての最低基準ですか・・・
馬車を見に行く際に誰かの意見は聞いておきます。
ちなみにエルヴィス領内には馬車業者はいるのでしょうか?」
「うむ・・・幌馬車の工房はあったの。
確か馬車も扱ってはいたと思うが・・・フレデリック、あくまで幌馬車じゃったの?」
「はい。
うちの領内にいる工房で人用の馬車を作っているのはいませんね。
あくまで荷物運搬用馬車の工房だったと思います。
ですが、他領の工房から仕入れてメンテナンスはしていますね。
ですので、見本市でその辺のメンテナンス内容をうちの工房に教えられる所を探して概要表を頂いてきてください。」
「わかりました。」
タケオが頷く。
「さてと。
今日はこのぐらいじゃの。
タケオ、今日も勝負じゃ!」
「・・・良いですが・・・リバーシの方はどうするのですか?」
「私が今日はアリスお嬢様とスミス様の相手をいたします。」
フレデリックが答える。
「・・・ではしますか。」
エルヴィス家の寝る前の一勝負が始まるのだった。
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