第625話 大豆と小豆と小麦。3とアーキン達の午後。
もうすぐ昼食の時間になろうとしていた。
フレデリックは厨房にもう少しの所に来ていた。
「「おおおおお。」」
どよめきが厨房から聞こえてきた。
「今回も間に合った様ですね。」
フレデリックは厨房に入って行く。
「あ、フレデリックさん、お疲れ様です。」
武雄がフレデリックを見つけ声をかける。
「はい、皆さんお疲れ様です。
どうですか?」
「フレデリック・・・物凄い物が出来たかもしれないぞ!」
「ジョージ、目を血走らせながら言ってこないでください。
凄く怖いです。」
フレデリックがため息をつく。
「タケオ様、何が出来上がりましたか?」
「小豆からはつぶ餡を、大豆からはきな粉を、そして団子を作ったので盛りつけました。
大豆については他にも出来そうなので、夕飯用にちょっと料理中です。
あともう1品お菓子を作る予定です。」
「そうですか。
ふむ・・・これが団子ですか。
色が黄色と黒ですね?」
フレデリックが皿に乗っているきな粉団子とつぶ餡団子を興味深そうに見る。
「ええ。美味しそうじゃないでしょう?」
武雄が苦笑してくる。
「黒いお菓子は見たことが・・・ないですね。
いや、黒蜜をかけた物はありますか。」
「これは小豆と砂糖だけですし、大豆と砂糖だけです。
あ、一緒に濃い目のお茶をどうぞ。」
「ふむ・・・では頂きましょうか。」
フレデリックが食べ始めるのだった。
・・
・
「・・・頂きました。」
フレデリックは全部を食べ終わり目を閉じて思案している。
ちなみに一口食べては「ほぉ」と感嘆を口にしていた。
「・・・どうですか?」
武雄は恐る恐る聞く。
「大変美味しいですね。
きな粉とつぶ餡でしたか、それぞれに砂糖の甘さだけでなく豆なんだという独自の味もちゃんと主張しています。
ただ・・・つぶ餡の中にある豆の皮でしょうか。この食感が苦手な方もいるかもしれません。」
「その場合は最後に砂糖と煮豆を混ぜる前の行程で布等で何度も濾す事も出来ますから対応は出来ます。」
「そうですか。
ん?ジョージ、どうしましたか?」
「・・・タケオ、あの熱い餡を濾すのか?
それも何度も?」
「ええ。だから今回やらなかったのですが。」
「そ・・・そうか。
フレデリック、出来るだけ2つ作るように考えるが、濾すのは少し待ってくれ。やり方を考える。」
「・・・わかりました。
ジョージ、昼はこの団子なのですか?」
「違うぞ。昼は普通のサンドイッチを用意している。
団子は午後のティータイムだな。」
「わかりました。
客間にはそう伝えましょう。」
「客間から催促が?」
「はい・・・この団子ならすぐに出しても平気そうですが・・・
まぁ、ジョージ達が後ほどと言うならそうするべきですね。」
フレデリックが頷く。
「タケオはここで昼食か?」
「ですね。」
武雄達は軽めの昼食の用意を始めるのだった。
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アーキン達一行は裏通りのカフェでお昼を取っていた。
「「はぁ~・・・」」
アニータとミルコが深いため息をついていた。
「ん?2人はまだ2日だから疲れたかな?」
ブルックが苦笑しながら2人を気遣う。
「い・・・いえ!?平気です!」
「僕も平気です!」
アニータとミルコはブルックの訓練の時の鬼のような顔と今のほんわかした顔とが違い過ぎて「どっちが本物なの??」と訝しがっていたりするのだが、ブルックは気が付いていない。
「そぉ?
当分は行軍訓練と訓練場の森との境界・・・
とりあえず朝の時点でキタミザト殿から貰った図面の・・・どのくらいまでいった?」
ブルックがアーキンに聞く。
「えーっと・・・昨日始めた小道は・・・片側は終わったな。
明日はもう片方をして行こうか。」
アーキンはメガネを取り出して中身を確認する。
「ん~・・・訓練場は大きかったわよね。
これは私達も境界作りをして行って早く終わらせた方が良いかなぁ?」
「そうだな。訓練場としては裏城門の小道と奥にある広場、そして射撃場か・・・これらの森との境界を作らないとな。
あと広場にコラ殿達の住み家としての厩と休憩所を作りたいみたいだな。
やる事が多そうだな。
だが、昨日言っていた的については何も書かれていないな。
という事はまだしなくても良いということか。」
「的かぁ・・・キタミザト殿は本当に私達に小銃を与えようとしているのね。」
「なんだ?不服か?」
「い~え、特に不服とかはないわ。
小銃を400mから150mの遠距離の攻撃に特化させて魔力量を温存し、150m以内になったら魔法を使う。
結果として相対的な魔力量の節約をして魔法師の価値向上を推し進めるみたいだから文句をつける気にもならないわよ。
でも・・・小銃かぁ。」
「ふむ・・・まぁ魔法師としては微妙か?」
「まぁねぇ。
私達は他の兵士や領民には出来ない事が出来るという自尊心が強いからさぁ・・・」
「キタミザト殿の出現で今までの特権意識を持つ魔法師は使えない時代になるのだろう。
それは新たな時代の魔法師が必要になるというだけだ。」
「それはどんな物なのかしらね?」
「さてな・・・ただ魔法を撃つだけで特別だと考える時代は終わりだろうな。
より高度な組織体制を作らないといけないという事なのかもしれない。そしてより仕事量が増えるという事になるかもな。」
「・・・仕事量が増えるのは面倒ね。」
「まったくだ。
と、今日は3物件を見るんだったな。」
「文官2人との待ち合わせは・・・リストの3つ目だったわよね。」
「そうだな。
昨日は2つとも良かったな。」
「あそこはマイヤー殿一家とアンダーセン殿一家でしょうね。
今日見るのも家族向けの方か・・・事前資料だと同じような間取りだったわよね。」
「だな。とりあえず紹介して貰っている部屋を全部見ないとな。」
「ええ。
じゃあアニータ、ミルコ、もう少ししたら部屋を見に行くからね?」
「「はい!」」
2人は返事をするのだった。
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