第607話 アニータとミルコの訓練。ウスターソース・・・どうするの?
武雄達は研究所の広場で車座になりながらお茶をしていた。
「アニータとミルコにいろいろさせましたが、ファイアにアクアにストーン・・・どれも普通より発動する際の魔力量が大きいようです。」
アーキンが武雄に言ってくる。
「それは見ていてわかりましたが・・・やはり私とは違いますね。」
アニータとミルコが作り出したストーンと武雄がその辺に撒いたストーン・・・武雄は見比べながら呟く。
武雄は拳大、アニータ達は50cm角の大きさだった。
「ちなみに明日もするのですよね?」
武雄がアーキンとブルックに聞く。
「はい。
行進と初歩の魔法は毎日の日課にしようかと。
何かありますか?」
ブルックが答える。
「いえ。
森と広場の境界に3列でアニータとミルコでストーンを置いていって貰えたら良いなぁと。」
「ふむ・・・狙う際の認識の練習になりそうですね。
ブルック、やってみるか?」
「そうね~・・・
最初は10mから始めて30m、50m、100m、150mと徐々に延ばすものだけど、近距離も遠距離も基本は同じだししてみても良いのかなぁ?
でも同じ大きさの岩を正確に3列に並べるのは今のこの子達には少し難しいかなぁ?」
ブルックが悩む。
「そこまで正確性は求めませんよ。
境界をはっきりさせたいのと境界の間に私が石を撒いて敷き詰めたいだけですから。」
「この広さをですか?」
「ええ、朝の散歩の時にでも撒こうかと。
それとアーキンさんとブルックさんには的を作って欲しいですね。」
「「的ですか?」」
「はい。
森との境界から450mの所と1000mの所に・・・
あー・・・口で説明しても解りづらいでしょうから明日の朝に私が簡単に紙に書いてきますから見てください。」
「わかりました。」
アーキンが頷く。
「さてと、屋敷に戻りますかね。
アーキンさん達はどうしますか?」
武雄はお茶を片付けながら言ってくる。
「私達はもう少ししていきます。」
「わかりました。
では皆さん、行きましょうか。」
「「は~い。」」
「きゅ。」
武雄達が広場を後にするのだった。
・・
・
「アニータ、ミルコ。
キタミザト殿の指示通り、これからはストーンで練習をしていきます。」
「「はい!」」
アーキンがアニータとミルコの前に立って説明を始める。
「この練習は『毎回同じ量の魔力量を使う』訓練と『意識した場所に発動させる』訓練になります。
かなり地味です。
繰り返し繰り返し同じ魔法で同じ発動量ですからね。
ですが、基本になります。
毎回何かの魔法を発動して作り出しても大きさが違うと戦闘では危うくて使えません。
ですから何百、何千と繰り返し発動して体に覚え込ませる必要があります。」
「「はい!」」
「では私とブルックが見本を見せます。
貴方達が作り出しているストーンとほぼ同じ大きさで3列に作るというのをやってみせます。
最初は難しいかも知れませんが、毎日していけば慣れるでしょう。
じゃあ、今日はそこの小道からしてみますか。」
アーキン達も広場を後にするのだった。
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「わからん・・・」
ベッドフォードが机に突っ伏していた。
「あらあら、使っていない頭を使うと疲れるわね。」
ベッドフォードの奥さんが苦笑する。
「お~い、生きてるかぁ?」
「まぁ、息はしていそうですね。ほほほ。」
ラルフとローが「ははは」と笑い飛ばしている。
「んー・・・キタミザト様の銅貨5枚は無理だ・・・」
「あれはあくまでキタミザト様の理想だからなぁ。
逆に値段を変えるならちゃんとした下調べが必要なんだよ。
だからローさんの所に出入りしているワイナリーの人に小樽の原価を教えて貰ったじゃないか。」
「ほほほ、ウォルトさんの所の娘さんが来ていましたからね。
タイミングが良かったですね。」
「だが・・・まぁ小瓶とほぼ同じ原価で300mlの樽が手に入るとは思わなかった。
で・・・野菜とかの原材料がこうだから・・・これを300ml毎に入れて・・・小樽で525個かぁ。
原価に利益を乗せてキタミザト様の契約料を入れて・・・これを525個で割って・・・銅貨12枚が販売価格になりそうだな。
これで本当に売れるのか?」
ベッドフォードが紙にいろいろ書いて行きながらラルフとローに聞く。
「「知らん!」」
2人は堂々と言ってのける。
「なんだよ~・・・もっと親身になってくれよ~・・・」
「私は契約書の内容のアドバイスをするだけですし。」
「ほほほ、私は容器のアドバイスですね。
ベッドフォードも早く経営者にならないとダメですよ。」
「そう簡単に出来るかっての!
はぁ・・・この価格で売れるのか?」
「やっぱり悩んでいますね。」
「「「!?」」」
ベッドフォードとラルフとローが声のした方に顔を向ける。
と、そこにスミスとフレデリックと財政局の担当文官が来ていた。
「スミス様にフレデリックさん!?」
ベッドフォードの奥さんが驚く。
「はぁ・・・タケオ様に絡む商店は大変になると聞いていましたが・・・
フレデリック、これが実情なのですね。」
「はい、そうですね。
と、何やら困っておいでですがどうしましたか?」
「は・・・はい。
実は概算をしてみたのですが。」
ベッドフォードがスミスとフレデリックにさっきの計算を見せる。
「ふむ・・・銅貨12枚・・・エルヴィス家の融資の返済を考えると銅貨14枚は欲しいですね。」
「はい・・・そうなのです。
いくら美味しくてもこの価格で買ってくれるのか・・・」
「確かにそうですね。
一般家庭向けでは少し高い気もします。」
「・・・ねぇ、フレデリック。」
ぼーっと概算の計算結果を見ていたスミスが呟く。
「何でしょうか、スミス様。」
「これっていちいち小樽を買わないといけないのかな?」
「・・・なるほど、その手がありますね。」
「ど・・・どういうことでしょうか?」
ベッドフォードが聞いてくる。
「いえ、最初はしょうがないでしょうが、小樽が壊れるまで小樽を持って来たら店先で入れてあげれば販売価格から小樽の原価が抜けるのではないかと思ったのです。」
スミスが何気なく答える。
「「「あ!なるほど!」」」
と皆が驚き、ベッドフォードが計算をし直す。
「・・・継ぎ足しだけなら銅貨8枚になりますね・・・これは買ってくれるだろうか・・・」
「ここは銅貨9枚にしておいた方が良いでしょう。
なら小樽で買うなら銅貨14枚、その後の継ぎ足しなら銅貨9枚で販売してみるとして試算すれば良いのではないでしょうか。」
「スミス様、フレデリック様。
あとはどういう戦略を取るかでしょうか。」
「皆さんはどう思いますか?」
「ローさんと同じように酒場へまずは売り込めば、売れるのでないかと。」
「ふむ・・・それも1つですね。
スミス様はどう思われますか?」
「ん~・・・
確かに酒場に売るのは売り方として順当でしょうが、でもそれだとタケオ様の意図とは違いますよね?」
スミスが首を傾げる。
「確かにタケオ様は街の皆に売りたがっていますからね。
ベッドフォード様の方針では少し時間がかかってしまいますね。」
「あ~・・・それだったら店先で食べて貰えば良いのですよ。」
と武雄とアリスがやって来ていた。
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