第586話 まずは鈴音の適性を見よう。
「あのタケオ様、テトちゃん達が盛り上がっていますが?」
「そうみたいですね。
まぁあの一角は精霊たちのお茶会でしょうから気にしても意味はないですよ。
それよりもテイラー店長、今日はこのアニータとミルコ、鈴音の適性と系統を見てください。」
「はい、わかりました。
準備しますので少しお待ちください。」
とテイラーもニオ達を気にしないで用意を始める。
・・
・
しばらくして椅子が1つと机を挟んで対面で椅子が2つ用意された。
机の上には、PC用のマウスみたいな突起物がある。
「お座りください。」
とりあえず鈴音が座る。
「スズネさんですね。
えーっと・・・先ほどのキタミザト様の話でカトランダ帝国に居たそうですが、適性等の検査はしましたか?」
「いえ・・・何もしていません。」
「そうですか、わかりました。
机の上の突起に手を置いてください。」
鈴音は、言われた通りに手を置く。
と鈴音は何かを耐えるように難しい顔をさせる。
武雄は「あぁ、手がムズムズしてくすぐったいんだよね」と思っていたりする。
テイラーは桶に入った水を見ている。と
「んー・・・これは何と言うか・・・」
すぐに本を出して調べ始める。
「どうしました?」
テイラーに武雄が聞いてくる。
「スズネさんは魔法の適性はあるのですが、少々特殊ですね。」
「「特殊?」」
武雄と鈴音が同時に聞く。
他の面々も興味があるみたいで前のめりに聞いている。
「スズネさんは自分の意思で発動するのではなく、常時発動しています。」
「「え?」」
アーキンとブルックが驚く。
「ん?どうしましたか?」
「いえ、魔法は自分の意思で発動するものとばかり思っていたので・・・」
「普通はそうですが、極稀に居ます。
スズネさんはたぶん『直感』ですかね。
資料に載っている数も少ないので正確にはわからないですが、常時発動型なのは確かです。
常時発動型は他の魔法が発動出来ない事が特徴みたいですね。」
テイラーがそう伝える。
「直感かぁ・・・」
鈴音が呟く。
「とりあえず現状と変わらないですね。
直感という事は鈴音は勉強をしないといけないかも知れませんね。」
「え?ど・・・どうしてですか?」
鈴音が武雄が「勉強」という単語を出してきたので若干慌てる。
「職人の勘とか女性の勘と言われる『○○の勘』と言うものは経験の蓄積からくる過去の類似体験を思い出すことを指していて、それを瞬間的に思い出す事を直感と言うと私は思います。」
「はぁ・・・」
鈴音は生返事を返す。
「例えば・・・この指輪で言うと。」
武雄はカウンターに置かれた指輪を取り上げる。
「適性のない男性が『これは勘なんだが鉄と銅を半々にした指輪の方が良いと思うんだ!』と言った所で私は取り合いません。
ですが、ベインズさんのような指輪職人が同じことを言ったら私は考慮します。
これは理由はわからないが経験から来る答えだと私は思うからです。
それに何も職人だけでなく、兵士もそうですし、文官もそうでしょう。
同じ仕事を繰り返ししてきた専門職のみ出来る技なのですよ。」
「はぁ・・・」
「で、鈴音には勉強が必要だという考えは経験≒知識だからです。
手っ取り早く知識を手に入れるのは勉強だからですよ。」
「武雄さん、勉強は苦手なのですけど・・・」
鈴音が顔を暗くさせる。
「いや、別に試験がある訳ではないですよ?
多くの本を読みましょうという程度です。」
武雄が苦笑する。
「わかりました・・・」
鈴音は少し落ち込むのだった。
「えーっと・・・
常時発動型で直感は身体に影響はほとんどないと思いますが、魔力量を計りましょう。」
テイラーが丸いフラスコに少し水が入った物を取り出す。
「では、手をかざしてください。」
「はい。」
鈴音が手をかざすと水位が上昇し、丸フラスコの球状の半分くらいまで上昇する。
武雄はその様子を目を細めながら見ているのだった。
「はい、終了です。
スズネさんは大体、魔力量が300程度はありそうですね。」
「魔力量が300とはどうなのですか?」
鈴音が聞いてくる。
「前線には立てないかもしれませんね。
大体、魔法師専門学院の卒業生の平均が600程度だったと思いますし。
フリーで冒険者になっている魔法師は200程度ですかね?」
「冒険者くらいには魔力量があるという事でしょうか?」
「ええ。ですが、スズネさんの意思で発動はできませんので・・・
今の日常とあまり変わらないかもしれません。」
「そうですかぁ。」
鈴音は少し落ち込むのだった。
「テイラー店長、ちなみに自分の意思では発動しないのですよね。」
「はい。」
「と、いう事はです。
アリスお嬢様と同じようにケアを常時かけておくというのは出来ますか?」
「んー・・・可不可で言えば可でしょうが・・・
魔力量が少ないので危険ではありますね。
最低でも魔力量が1500を超える者しか出来ないと思いますよ?」
「なるほど・・・わかりました。」
武雄は頷くのだった。
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