第545話 武雄の帰路。チビッ子達の雑談。
武雄は会議と言う名の研修を終えてのんびりと宿への帰路を戻っていた。
「ふぁ・・・欠伸も出ますよね~・・・
はぁ、一気に詰め込み過ぎましたか。」
武雄は首をゆっくりと回してコリを取ろうとする。
その一方で頭の隅でさっきの講義の事を思い出す。
さっきの会議で紛糾したのが、研究所とアルダーソンの住居の立地だった。
バビントンの考えでは、既在の街の中心にバビントンが居を構え、城壁の外にアルダーソンの屋敷と研究所を広大に作るとともに各地の工房を募集・集約し、ある程度大きくなったら城壁で囲むとするいわば産業街区を新設しようと考えている事が判明したのだ。
アルダーソンは安全上の観点から屋敷も研究所も城壁の中で欲しいと言い出し、両者譲らずに議論は平行線を辿った。
オルコットも武雄もどちらにも与せずに中立的に両者の言い分から利点と欠点をあげて妥協点を模索したが、同格で同期の男爵同士では互いに意見を譲らなかった。
武雄は「こういう弊害があるんだなぁ」と思いつつ聞いていた。
最終的にはオルコットから再協議することとして一旦終わらせた。
「・・・城壁内だろうと城壁外だろうとどちらだって良いだろうに・・・」
武雄には城壁の内外の生活に拘りはなかった。
城壁の内か外かは関係なく与えられた環境で成果を出せば良いだけで、今回エルヴィス伯爵が「城壁外に住んでくれないか。」と言ってきていたら武雄は疑問にも思わずに城壁外での生活方法を模索しただろう。
「・・・それにしても。
何か忘れている気がするんだよなぁ。」
武雄は頭の片隅に何かをし忘れている感が拭えず、気持ち悪さを抱きながら宿へ向かう。
・・
・
「ここでもないか・・・」
武雄は帰り道の途中にあった王都の冒険者組合の事務所に立ち寄ったのだが、建物から出てきてそう呟く。
一応、現状の入金状況と手持ちを調整とカトランダ帝国で輸送手続きをした物をエルヴィス領に転送してくれるように依頼もした。だが、武雄の忘れている感は残ったままだ。
ちなみにここの前にシャツを作った仕立て屋によって礼服をラルフ店長の店に送るように手配もしている。
武雄は「何が引っ掛かるのかなぁ」と思いながらまた歩き出すとすぐに目の端に何かを捉える。
武雄が何気に気になる方に顔を向けると雑貨屋があり、窓越しに店内が覗けていた。
武雄は気になるなら入ってみるかと店内に入るのだった。
「・・・いらっしゃい。」
初老の男性が奥のカウンターで本を読んでいたが顔を上げて声をかけてくる。
「失礼します。
こちらは雑貨屋で?」
「あぁ、旅人からも買取りはしてるから雑多な物ばかりだ。
何か売りに来たのかい?」
「いえ、外から見て気になっただけです。」
「そうかい。
欲しい物があったら言ってくれ。」
男性は再び本に目を戻す。
「さて・・・」
武雄は通りから見て何が気になったのか探し始めようとした時。
「あれ?タケオさん?」
見知った人達に出会うのだった。
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「主、遅いですね~。」
ミアは机に座りながら目の前の食材の山を見ながら呟く。
鈴音とアニータ、ミルコは夕飯まで寝ると部屋に帰り、アリスとヴィクターとジーナは何やら机を囲み「あーでもないこーでもない」と話し合っている。
「ミア、タケオとはどんな人間なのですか?」
ミアの隣に座っているテトが聞いてくる。
「きゅ~?」
机の上でゴロンと寝ていたクゥがうつ伏せになりながら鳴いてくる。
「クゥ、それはクゥの主観ですよ?
主は普通より上の人間ですかね?」
ミアがクゥを諭すが。
「いや、この世界の最強種が変と言うならそうなのではないのですか?」
「ん?テトはクゥの言葉がわかるのですか?」
「ええ。
生物なら粗方わかります。」
「・・・まさか、魔物が近くに居るのもわかりますか?」
「150mくらいなら普通に感知出来ます。」
「ほっ・・・安心です。」
「ニャ?」
「タマ達はそのぐらいなんですか。」
ミアはタマに受け答えをしながらテトに自身のスペック全てを凌駕されていない事に安堵する。
「頑張ればさらに」
「頑張らなくて平気です!」
「きゅ?きゅ♪」
「なるほど、ドラゴンの感知範囲は広いですね。」
「クゥが私と張り合ってどうするのですか?」
「きゅ!」
「何が『誰にも負けたくないもん!』ですか。
クゥ達ドラゴンに勝てる者はいま・・・テトは勝てるのですか?」
ミアは話に入って来ないテトが不安になり聞いてみる。
「周りの損害を無視して良いなら・・・街ごと。」
「それは主もアリス様も認めないでしょうね。
つまりはスズネ様の上司が認めないという事になります。」
「なら、私には倒せませんね。」
テトはあっさりと勝てないと言う。
「テトは勝つとか負けるとかは気にしないのですか?」
「きゅ?」
「ニャ?」
「ええ。あるがまま、望まれるままが一番だと思います。
今はスズネの精霊ですからスズネの望むままにするのが私の仕事です。
なので、誰に勝つか負けるかは気にしていません。」
「ふーん。」
「きゅ~。」
「ニャ~。」
テトの言葉に3名が「変なヤツがまた加わった」と思うのだった。
と、扉がノックされ武雄が帰って来る。
「ただいま戻りましたよ。」
「主、おかえりなさい!」
「きゅ!」
「ニャ!」
チビッ子3人が武雄に突進して出迎える。
「おっと、どうしましたか?」
武雄は3名を抱えて言ってくる。
「主!お腹が空きました!」
「きゅ!」
「ニャ!」
「はは、待たせてしまいましたね。
じゃあ、さっさと作りますからね。」
「あれ?エリカ様?
主、エリカ様が居ます。」
武雄の後ろを見るとエリカとカサンドラと女性兵士2名がいる。
「こんばんは、ごめんなさいね。
私達もタケオさんの夕飯を食べようかと。」
「え?エリカさん来たのですか?
タケオ様、おかえりなさい。」
アリスがミアの言葉で武雄が帰って来たのがわかり近寄って来る。
「アリス殿、ごめんなさいね。
夕飯を誘われて・・・ついでに貴女達に相談をさせて欲しいの。」
「え?ええ、それは良いですけど。」
アリスはエリカからの相談が気になるのだった。
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