第543話 鈴音の部下2
「説明の最中にすまぬが、さっきの精霊の名前は全部知り合いですかな?」
王家専属魔法師がティシュトリヤに聞く。
「一部の例を上げただけです。
実際はこの世界にはもっといるでしょう。
この部屋にもまだまだいますし、誰が適応者と出会えるかはわかりません。」
ティシュトリヤが答える。
「王家専属魔法師殿、さっきの中でアズパール王国に居るのはどれですか?」
「皆さま、何卒、内密にしてください。
ヴァーユ、トール、ムンム、ロキです。
あとニオですね。」
「5神ですか・・・で、残りは誰かと契約しているのですか?」
武雄がティシュトリヤに聞く。
「ええ、契約していますね。
我々は相手がどこに居るのかはわかりませんが、契約した神は報告されますので。」
ティシュトリヤの言い方に武雄は「仁王様の時もそうだけど誰にだろう?」と思う。
「なるほど。
では、次ですね。
貴女を部下にすると何が出来るのですか?」
「部下・・・確かに力を貸すという行為は部下になるのでしょうか・・・
なるほど、こちらの方が使役よりも合っていそうですね。
では、私はそもそも拝火教の一柱です。
星と慈雨の神でこの世界では雨を降らせる事が主に出来ますかね。
あとは水系魔法とかでしょうか。適応者の依頼に応じて発動させます。」
「武雄さん、わかりますか?」
「・・・私はそこまで宗教家ではありませんよ。
ゾロアスター教かぁ・・・知りませんね。」
「ですよね~。私は仏教やキリスト教の大まかのしか知りません。」
「私だってそうですよ。」
武雄と鈴音が苦笑しながら語っているが、他の面々は3人が何を話しているのかさっぱりわかっていないが武雄と鈴音の話に口を挟まないようだ。
「・・・貴方と貴女は宗教はおわかりになるでしょう?」
「まぁ、出身がここではないですからね。
それでも3大宗教があるぐらいしか知りませんし、詳しくもないです。」
「そうですか・・・まぁ予備知識としてこの世界には宗教がないとは知っていましたが・・・
いや、ある意味で貴方達2人に出会えたことが幸いなのでしょう。
これでは先の神たちも説明に苦労したでしょうね。」
ティシュトリヤがため息をつく。
「王家専属魔法師殿、前の方達はどんな説明をされていましたか?」
「精霊は妖精の上位であり、様々な得意な魔法を使うという認識です。精霊達もそう説明していたと記憶しています。」
「・・・概要的には合っている感がありますけど、何かが違いますかね。」
武雄が首を傾げる。
「それにしても慈雨ですか・・・脅威では無さそうですね。」
王家専属魔法師が呟く。
武雄はその呟きに目を細めるに留める。
「じゃあ、私が契約しても王都へ召集は?」
「ありません。今のままで結構です。」
「わかりました。
えーっと、他に聞いておかないといけないことはあるのでしょうか?」
鈴音が武雄に聞いてくる。
「そうですね。
・・・この娘と貴女で契約をしてもこの娘に何も害がないのはわかりました。
こちらから貴女に対し条件を提示しても構わないでしょうか?」
「私達神に条件の提示をする者がいるのですか・・・理由を聞きましょう。」
「理由は簡単なのですが、私達は人間社会にいます。
人間は神々のように善意のみで出来ていません。
妬み、僻み、見下し、渇望する者です。」
「それはわかります。」
「貴女は全ての者に幸福を授ける事を望まれた神なのでしょうが、私はこの娘を神にする気はありません。」
「つまりは?」
「目の前に困っている者が居ても貴女の判断で動かないという条件を付けさせてほしいのです。
貴女が独自の判断で動けるのはこの娘を守る時だけ。
それ以外はこの娘の判断を聞いてからにして貰いたいです。」
「無闇に善意を振りまくなと?」
「はい。救いたいならばこの娘に説明をしてこの娘の判断で実施してください。
全ての人を救うという意義は尊いのですけど・・・ですが、私達は人間です。過ぎたる力は他人から見たら畏怖の対象でしかありません。
火炙りにされるのも暗殺されるのも真っ平ごめんです。
ですので力は考えながら使って欲しいのです。」
「なるほど、適応者が放逐されてしまうのは忍びないですね。
わかりました、その条件を飲みましょう。」
ティシュトリヤが頷く。
「あの・・・私の指示は聞いて貰えるのでしょうか?」
「はい。適応者の命令には出来る限り従いましょう。」
「出来る限りなのですね・・・」
「ええ、私は使役される者ではありません。
私達はあくまで適応者に力を貸す事です。
なので、出来る事と出来ない事の判断は私にもさせて貰います。
ですが、概ねの指示には従う事を約束しましょう。」
「・・・わかりました。
私は滝野 鈴音と言います。」
「スズネですね。
私はティシュトリヤ。通称テトと呼んでください。」
鈴音とティシュトリヤが握手をすると眩い光が再び部屋を覆うのだった。
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