第534話 第二研究所の初顔合わせ。(武雄達が来るまでの雑談。)
王城内の小会議室の一室にて王立研究所 第二研究所の試験小隊の面々が武雄達一行を除き揃っていた。
「「・・・」」
ケイとパメラが自分に割り当てられた席に着いて極度に緊張していた。
現在集まっているのは王都守備隊員が8名・・・右を見ても左を見ても王都守備隊員。
「ケ・・・ケイちゃん、私達ってとんでもない組織に入っちゃったのかな?」
「そ・・・それは最初からわかっていたけど・・・来てみると・・・格が違い過ぎるね・・・」
2人はボソボソと話している。
そんな様子をトレーシーは自分に割り当てられた席に着きながら見ている。
「んー・・・あの緊張はマズいのかなぁ?
でもなぁ、この組織では僕の部下ではないしなぁ~・・・」と思っていると。
「お、来ていたんだな?」
アンダーセンが声をかけてくる。
「時間より前なのに皆揃っているとはね。」
「んー・・・全員じゃないけどな。
あとはキタミザト殿が連れてくるだろう。」
「ふーん・・・・事前説明は守備隊の人達にはしているの?」
「あぁ、特殊な事情の4名もな。」
「そっか、なら平気かな?」
「あの子達にはしたのか?」
「全くしてないね。
僕の転属についても4名の事にも。」
「おいおい、平気か?」
「いや~なんて言って良いかわからなくて。」
トレーシーは「たはは」と笑い飛ばす。
「まぁ、もう説明の時間はないだろう。
ならキタミザト殿の説明時に衝撃の事実がわかっても動揺しない・・・いやするか・・・」
アンダーセンがガックリする。
「一応、うちの2名と特異な2名の指導官は付けるのだろう?」
「あぁ、付けるさ。
まぁ・・・数か月は地獄だろうがな。」
「何をさせるんだい?」
「普通に毎日体力を付けるために走らせて、空っぽになるまで魔法を使わせるだけさ。」
「それはうちでもしないよ・・・」
「まぁ、それでしか魔力量を増やせないんだから仕方ない。
器の体を鍛え、1日の回復量を増やす。そして許容量以上に魔力量が一瞬戻るからそれに合わせてまた器を作る。
これの繰り返しだな。」
「はぁ・・・耐えられるのかな?」
「んー・・・本来は騎士団レベルでやるんだが・・・まぁ若いうちにすればそれだけ伸びるだろう。
そう考える事にする!」
アンダーセンが自身に納得をさせる。
と。
「とうとう俺らもあのアンダーセン殿の部下になったなぁ。」
「ほぉ、諸先輩方、何か私の噂でも?」
アンダーセンが野次を言ってきた男性に目を細めて聞き返す。
「新人を1年未満で寿退社させた手の早いアンダーセン。
通称『新人買いのアンダーセン』」
「はい。それをキタミザト殿に言ったら怒りますからね?」
「すまんアンダーセン、キタミザト殿にはその話はしている。
あだ名は言ってないがな。」
マイヤーが苦笑しながら言う。
「えぇ!?」
アンダーセンがマイヤーを見る。
「キタミザト殿は全く気にしてなかったがな。」
「・・・まぁ今は夫婦円満ですから問題ないです!」
「そう言えば皆の子供達はどうするんだ?」
マイヤーが何気に聞いてくる。
「一度、エルヴィス領に行かせますね。
うちの息子は再来年ですし・・・マイヤー殿の所は来年でしたね。」
「あぁ、出来れば魔法師専門学院に入れたいが・・・適性があるかどうかだなぁ。
アンダーセンの所はどうだ?」
「うちはまだまだ幼いですからね。
随分先の事ですよ。」
「王立学院に入れる事も考えて金は貯めないといけないしなぁ。」
誰かがそんな呟きを言って他の年配人たちが頷く。
「ねぇパメラ、王都守備隊の人達ってこんなに世間話をする人達なの?」
「そうだねぇ、もっと厳格に規律に縛られている固い人達の集団だと思っていたね。」
2人はボソボソと話している。
「はぁ・・・皆さんの家族は問題ないのですか?」
アンダーセンがため息交じりに聞く。
「「「「大丈夫!」」」」
ベテラン勢4名が声を揃えて言ってくる。
「うちの娘なんかアリス殿の名前を出した瞬間に了承したぞ。」
「あぁ、それはうちもだ。
『王都守備隊よりも友達に自慢できる』だってよ・・・俺その晩は泣いたぞ・・・」
「はは、大変だなぁ。
うちは王都守備隊よりも危険性がないと言ったら了承したぞ。」
「うちは『栄転だぁ』と気楽なもんだ。」
「ちょっと待ってくださいね?
王都守備隊よりも危険性がないと言ったのですか?」
「言った!
というよりも王都守備隊は体力が基本だろう?
任務によっては24時間体制が連日だし、潜入だってあり得る。家に数週間は帰らないなんてザラだろ?
その点、試験小隊は平時は戦術考察と試験、有事の際は強行偵察で1か月程度か?
有事がそんな頻度で来るわけではないし、戦争については慣例だけなら数年に1度。さらにはキタミザト卿は前線に立つ気が無い。それだけでも相当危険性が少なくなっているという認識だ。
それに平時は家にもちゃんと帰れるようだし、王都守備隊の激務に比べたらなぁ。」
「んー・・・・危うい認識のようにも感じますね。」
「アンダーセンは違うと思うか?」
「いや、前線で戦わないという所は確かです。
ですが、強行偵察は少人数での支援がない状態での任務です。
王都守備隊でも選抜で3、4名選ばれ・・・あぁ、この面子はしていましたね。
ですが、それだけ危険という所は見落としてはダメでしょう。
まぁ諸先輩方は知っているでしょうが。」
「そこを気を抜く者は王都守備隊にはおらんぞ。
仕事はキッチリとするのが当たり前だからな。」
「まぁ少しでも緩みが見れたら特訓させます。」
「はぁ・・・あの特訓は伝統に近いからなぁ。
大丈夫だ。今は問題ないし、緩んでいるように見れたら心置きなく特訓してくれ。」
ベテランの言葉に他のベテラン達が頷く。
「わかりました。
では、この会議のすぐ後にしますか。」
「「「「おい!?」」」」
ベテラン勢がアンダーセンに総ツッコミをする。
「はは。皆、そのぐらいにしろ。そろそろ時間だな。」
マイヤーが懐中時計を見ながら言う。
と、小会議室の扉がノックされ武雄達が入って来るのだった。
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