第520話 王家の男性陣。(ウィリアムの一目惚れと今後の日程。)
武雄はアズパール王と殿下3人と一緒に前回飲んだ王城内の簡単なバーに来ていた。
もちろん夕飯前なのでお茶を頼んでいる。
「で・・・どうして私が連行されたのでしょうか?」
目の前の4人に武雄はジト目をしながら聞く。
「うむ・・・それなんだが・・・
タケオ、以前見せて貰った資料があるだろう?」
「ええ。」
「あれを王家に譲ってくれ!」
アズパール王が頭を下げる。
「・・・」
「ダメか?」
「いえ・・・別に秘匿しているつもりもありませんので構いませんが・・・なんでアランさんが頭を下げるのですか?
まさか!本気で第4皇子を作る気ですか!?」
「へ?・・・いや!違うぞ!
我はそんな気はない!」
「・・・」
「本当にないぞ?」
「それこそどうなるかわからないからなぁ・・・」
武雄が腕を組んで悩む。
「「タケオ、頼む!この通りだ。」」
クリフとニールも頭を下げる。
「いやいや、その話は旅路でしたじゃないですか。
ウィリアム殿下に・・・って、ウィリアムさんどうしたのです?」
武雄が今になってウィリアムの変調に気が付く。
ウィリアムはポーっとしたり、ニコニコしたりしているのだ。
「うむ、恋煩いだ。
まぁ、落ち着くまで10日くらいだろう。」
アズパール王が頷く。
「・・・はぁ。
まぁこの状態ではお願いも出来なそうですね。
だからアランさん経由ですか。」
「うむ・・・察しが良くて助かる。
実はな、ウィリアムはレイラの時もこうなっていてな。
アルマや兵士達が居る時は隠しているがそれ以外はこうなっていた。
あの時は落ち着くまで大体20日くらいだったか。」
「相手はエリカさんですか?まぁ綺麗ですからね。」
「あぁ。」
アズパール王がため息を漏らす。
「タケオさん!エリカさんには手を出していないのですよね!?」
ウィリアムが武雄の「エリカ」というキーワードで覚醒する。
「・・・アリスお嬢様の逆鱗に触れる気概は私にはありませんよ。
それに結婚もまだなのに他の女性に手を出すわけないでしょう?」
武雄が明後日の方を見ながら言う。
「本当に手は出していないのですね!?」
「ええ。」
「本当の本当に?」
「手を出したならウィリアムさんの近くに置かせませんけど?
私が囲います。」
「・・・本当でしょうね?」
「はいはい、本当ですよ。」
武雄が適当にあしらい始めるが、ウィリアムは「絶対本当でしょうね!?」と言ってくるので武雄達は無視し始める。
「それよりも多妻をするなら平等に愛するというのは基本だと思うのですけど?」
「うむ、その通りだ。
ニールの所は側室のみだから問題はないだろう。
クリフの所がどうなるか・・・少し心配だな。」
「クラリッサ殿下にはお会いになりましたか?」
「うむ。タケオ達の面談の後に第1皇子一家が来てな、紹介されたぞ。
アリスと同じ年齢だそうだな。利発そうな娘だったな。
くくく、ガチガチに緊張していたな。初々しい限りだ。
それにしてもタケオもアリスも済まなかったな。余計な仕事をさせてしまった。」
「いえいえ、構いません。
あれはあれで面白かったですので。」
「ふむ、そう言ってくれるとありがたいな。
そうだ、タケオ、明日の貴族会議で今後の日程が決まる予定なのだが、クリフとニールの挙式を王都でする手はずになるだろう。
そしてタケオ達新貴族の爵位授与式も同時に行う事になると思う。」
「なるほど。
確かに式典を2つ別々にするのは大変ですからね。」
「うむ。
本当は別々にしても良いのだが・・・そうするとどちらかの日程が大幅にズレ込む事になってな。
それはそれで大変なのだ。
なので今回は連日行う事にする運びだ。」
「いつになりそうですか?」
「今日が12月10日だから・・・年越しと新年行事・・・1月半ばになるだろう。」
「それでも1月半ばですか。」
「うむ。別々にするなら・・・年末に爵位の授与式と新年行事・・・3月半ばか4月くらいに挙式だろう。」
「確かにそれだと挙式が遅れてしまいますね。」
「うむ。再来年はウィリアムとクリフの異動があるからな。
来年は仕込みや本格的な行動の時期になる。
4月までかかってしまっては他の事が滞るというのが文官達からの意見だ。」
「そうですね。
そう言われてしまうとその日程が理想的なように感じます。」
「うむ。
なので多少強引にでも同時進行をさせたい意向だ。」
「わかりました。
では、私とアリスお嬢様は職人達やヴィクター達を連れて一旦エルヴィス領に戻ります。」
「そうだな、それが良いだろう。
一応、研究所の設立要件は明日の会議で最終案が通る運びだ。
その後にタケオとアルダーソンを呼んで事前の研究所の説明会をする運びになるだろう。」
「明日の昼過ぎぐらいにうちの研究所の設立人員を集めようかと思っているのですが。」
「ふむ・・・では、最初の議題で設立概要を通す。手元には昼までに渡るようにしておこう。
夕方から説明会を実施する。」
「わかりました。
アランさん、お手数をかけて貰いすみません。」
「構わぬよ。爵位も研究所も王都の都合でもあるからな。
そうだ、タケオ、小隊に王都守備隊からまた2名を採用したそうだな。
マイヤーから報告を受けたぞ。」
「はい。アーキンさんとブルックさんですね。
王都守備隊からでは問題でしたか?」
「いや、構わぬ。
ただタケオの考えだとベテラン勢を揃える予定だったろう?
結果、ベテラン、中堅、新人の割合が均等になった印象だがタケオ的にはどうなのだ?」
「いろんな考えを示されそうで楽しみですね。
それに最上位の部隊が新人をどう教育するか興味はありますね。」
「確かにな。
王都守備隊に入ってくるのは選抜された精鋭だから新人教育はしないな。
まぁ、ほとんどの隊員は騎士団時代に指導経験はあるだろうがな。」
「魔法師専門学院の上位と下位が1名と人間社会に飛び込んだエルフ2名・・・どう育つと思いますか?」
「さてな・・・だが、魔法師の特性は各騎士団の指針により変わってくるようだな。
試験小隊の兵士はタケオの指針に染まる事になる。」
「得意な適性があってもですか?」
「ふむ・・・
確か、王都守備隊の魔法師は『より早く、より正確に』、第1騎士団が『大規模殲滅』、第2騎士団が『拠点防衛』だったか?
それと各領地の騎士団も独自の指針があるはずだな。
そして指針に沿った装備や訓練になっていると聞いている。」
武雄はアズパール王の説明に「そういう意味では画一的な装備は意味が薄いのかぁ」と思う。
「まぁ、人員も装備も所長が決めて構わん。」
「はい、わかりました。
で、話を戻しますが、これはどうするんですか?」
「ん~・・・」
武雄とアズパール王は3皇子を見る。
「ウィリアム、本当に大丈夫か?」
「クリフ兄上、もうどうしようもないでしょう。」
「え?ニール、この状態を放っておけるのか?」
「こんな状態ならもうダメです。処置のしようがありません。」
「兄上達!僕は大丈夫ですよ!」
「どこが大丈夫なんだ?」
「全くだ。」
「いやいや、クリフ兄上?ニール兄上?僕は凄く真っ当ですよ?・・・へへ。」
「「キモッ!」」
「ダメだな、これでは今後の行動がわかってしまうな。
はぁ・・・このままでは息子3人同時挙式になりそうだ。
何かしら手を打つか・・・レイラの時は勝手に求婚したからな・・・レイラが受けてくれて本当に良かった。」
アズパール王がため息をつく。
「まぁ、ウィリアムさんなら無下にはしなさそうですけど・・・エリカさんの気持ちも大事にしてください。」
「それはわかっている。
ウィリアムの一方的な感情のみで挙式をする気はない。
エリカの気持ちも大事だが、アルマもレイラも我からしたら息子の可愛い嫁だ。ウィリアムのわがままでイザコザを起こして欲しくはないからな。
エリカが望めばという所だか・・・」
「そこは何とも言えないですね。」
「あぁ、そこはアルマ達にも言ってある。」
「では、アルマさんとレイラさんで上手くするでしょう。」
「あの2人なら大丈夫だろう。ウィリアムの勝手にはさせないと思う。
で、資料はくれるのか?
対価はちゃんと出すぞ?」
「そうですね・・・そこは別に構いませんが・・・
あ、そうだ、少し考えをお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」
「うむ、なんだ?」
武雄はアズパール王に自身の考えを聞くのだった。
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